女騎士「最期に言い残す事はあるか?」【オリジナルss】

1 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/19(金) 20:08:43.38
兵士「……ない」

女騎士「…ほう」

兵士「…ひと思いにズバッとやってくれ」

女騎士「………」チャキ…

兵士「…………」




女騎士「本当に無いのか?」

兵士「無いって…早くやれよ」

女騎士「そうか」

2 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/19(金) 20:13:58.33
女騎士「……じゃあ、やるぞ」チャキ

兵士「………」グッ

女騎士「………」

兵士「…………」

女騎士「恨むなら…こうなってしまった自分の運命を恨むんだな」

兵士「フン……」

女騎士「…………」






兵士「どうした」

女騎士「いや別に」
3 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/19(金) 20:17:49.72
兵士「一体どうしたんだ…早くやれよ…ズバッとやれズバッと」

女騎士「言われなくてもやる」チャキ…

兵士「まったく……」

女騎士「…………」







女騎士「…なぁ」

兵士「……なんだ」

女騎士「しりとりやらないか?」

兵士「!!??」
4 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/19(金) 20:22:12.25
兵士「ハァッ!?しりとり?…しりとり!?」

女騎士「そうだ」

兵士「なんでだよ!状況考えろよ!早く殺せよ!!」

女騎士「1回だけだから、終わったらサクッとヤってあげるから」

兵士「…………」

女騎士「…………」






兵士「……じゃあ1回だけな」

女騎士「うん」
5 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/19(金) 20:30:40.82
兵士「…………」

女騎士「じゃあいくぞ…しりとり」

兵士「…リス」

女騎士「スイカ」

兵士「……カンガルー」

女騎士「のばすやつって一個前のでいいか?」

兵士「……おう」

女騎士「じゃあルーマニア」

兵士「…アリ」

女騎士「また『リ』か…リ…リ…リンゴ!!」

兵士「ゴリラ」

女騎士「ライオン!!!」

兵士「………」

女騎士「あっ」
6 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/19(金) 20:37:24.63
兵士「…よし、終わったな」

女騎士「………」

兵士「ほら、約束だ…殺せ」

女騎士「………」

兵士「…今度はなんだ」

女騎士「……好きな食べ物」

兵士「あ?」





女騎士「好きな食べ物…なんですか?」

兵士「」
8 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/19(金) 20:43:42.23
女騎士「ちなみに私はハヤシライスがそれはもう大好きだ」

兵士「…………」

女騎士「お前は?」

兵士「……教えたら…やってくれるか?」

女騎士「うん」

兵士「……………」









兵士「バッテラ」

女騎士「渋いな」
9 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/19(金) 20:50:32.46
兵士「…………」

女騎士「そうかそうか…バッテラか…いいな、うん」ゴソゴソ…

兵士「………」

女騎士「!おおっと…たまたまどうやら私はバッテラを持ち歩いていたようだ!」パッ

兵士(なんでだよ)

女騎士「一緒に食おう」

兵士「………食ったら殺せよ…本当だぞ」

女騎士「うん」
10 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/19(金) 20:54:57.82
兵士「………」モグモグ

女騎士「………」モシャモシャ

兵士「…………」

女騎士「…うん、バッテラもいいな…うん」モシャモシャ










女騎士「ごっつぁん」ゲフッ

兵士「……………」
12 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/19(金) 21:00:23.23
女騎士「……フゥ~」ノンビリ

兵士「…………なぁ」

女騎士「どうした」

兵士「…もういい…自分でやるから剣よこせ」

女騎士「やだ」

兵士「いいから」

女騎士「やだ、これ私のだもん」

兵士「いいから、すぐ返すから」

女騎士「ムリです」

兵士「貸せって!!」

女騎士「うるさい!!殺すぞ!!」

兵士「殺せよ!!!」
13 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/19(金) 21:04:46.66
殺せよワロタ
14 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/19(金) 21:07:07.45
女騎士「なんだと!!!」

兵士「しりとりだのバッテラだのなんなんだよ!!おちょくってんのか!!!」

女騎士「アァ!!??」

兵士「侮辱してんのかって聞いてんだよ!!!!」

女騎士「そうだよ」

兵士「あっ…やっぱり?」

女騎士「うん」

兵士「……………」

女騎士「…………」
15 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/19(金) 21:14:57.07
兵士「……もういいだろ」

女騎士「…………」

兵士「おれのプライドは侮辱するまでもなくズタズタだ…お前たちに負けた時点でな」

女騎士「……………」

兵士「さぁ…殺ってくれ…もう、おれは疲れたんだ…」

女騎士「……………」

兵士「……あばよ…みんな」







女騎士「あ、ごめん聞いて無かった」

兵士「アアアアアアアアアア!!!」
16 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/19(金) 21:22:44.53
兵士「もう許さねぇ!!激おこ!!てめぇも道連れにしてやるっ!!」バッ!

女騎士「あっちょっ」グラッ


チュッ……!



兵士「!!」

女騎士「…///!!!」
17 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/19(金) 21:27:47.21
兵士「………」スッ

女騎士「///」

兵士「…な、なんか…ごめん」

女騎士「……いや、こっちこそ//」ドキドキ





兵士「………」

女騎士「………」ソワソワ
19 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/19(金) 21:30:55.69
女騎士「は、初めてだった……」ボソッ

兵士「えっ?」

女騎士「ファーストキス…」

兵士「!!!」

女騎士「…………」


兵士「…お、おれもだよ」

女騎士「!」

兵士「…………」ドキドキ

女騎士「……そうなんだ」ドキドキ
20 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします :2014/09/19(金) 21:37:11.32
女騎士「おそろいだね…えへへっ」

兵士「お…おう///」


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ーーーーーーー

十年後


母「…こうして私とお父さんは出会ったのよ」

娘「聞かなきゃよかった」












女騎士「最期に言い残す事はあるか?」
元スレ

テーマ : 2ちゃんねる
ジャンル : サブカル

刀剣匠「これが最後の一振りだ」女騎士「 それを頂こうか」【オリジナルss】

1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/12(水) 20:43:50 ID:oyGIznZs

刀剣匠「は?」

女騎士「いや、だからそれを頂こう、と」

刀剣匠「駄目だっつってんだろ!」

女騎士「なんでだよ!」

刀剣匠「顔洗って出直してこい!」

女騎士「ち、ちくしょー!」

ドタドタッ バターン
2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/12(水) 20:45:00 ID:oyGIznZs

刀剣匠「まったく、なんだあいつは」

刀剣匠「ふざけたことを……」

女騎士「頼もう!」バターン

刀剣匠「……」

女騎士「顔を洗ってきた!」

刀剣匠「……一応聞くがどこで洗ってきた」

女騎士「近場に手頃な井戸がなかったのでな」

女騎士「……広場の噴水に飛び込んできた!」

ザワザワ……

「なにあの人……」

「この店から出て噴水に飛び込んだと思ったら、また意気揚々と入って行ったけど……」
3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/12(水) 20:46:31 ID:oyGIznZs

刀剣匠「てんめぇっ!何してやがる!」

刀剣匠「根も葉もない噂が立ったらどうしてくれる!?」

女騎士「ふっ、根も葉も生えたそばから切り落としてくれよう」

女騎士「そのためにも」

女騎士「その剣、頂こうか」

刀剣匠「だから駄目だっつってんだ!」

女騎士「だからなんでだよ!」

女騎士「この店の為にもなるんだぞ!」

刀剣匠「世間ではそれをマッチポンプというんだ!」

女騎士「ち、ちくしょー!」

ドタドタッ バターン

ザワザワ
4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/12(水) 20:48:09 ID:oyGIznZs

刀剣匠「まったく、こっちは忙しいってのに……」

少女「こんにちわー」

刀剣匠「うん?お嬢ちゃん、ここは君が来るようなところじゃないよ」

少女「金ならある」バッサァ

刀剣匠「な、んだと……?」

少女「くくく……驚いているな?」

少女「この店には先代の残したという最後の一振りがあると聞く」

少女「それを頂こうか!」

刀剣匠「ぐっ……!」
5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/12(水) 20:49:00 ID:oyGIznZs

少女「……」

刀剣匠「……」

少女「えーっと、次はなんだっけ」

刀剣匠「……おいちゃん飴あげようねー」



女騎士「お、出てきたな?」

少女「飴もらったー」

女騎士「……」
6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/12(水) 20:49:44 ID:oyGIznZs

女騎士「頼もーう!」バターン

刀剣匠「また来た……」

女騎士「子どもを!」フガフガ

女騎士「買収するとは!」フガフガ

女騎士「何事か!」フガフガ

刀剣匠「お前が言えた立場じゃねえし、とりあえず口の中の飴を消費してからこい!」

女騎士「む、むぐっ!」

刀剣匠「……水か!?」

女騎士「むー!むー!」

刀剣匠「噴水へどうぞ」

女騎士「む、むむーっ!!(ちくしょー!)」

ドタタタッ バターン


刀剣匠「ふう……ようやく静かになった」
7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/12(水) 20:52:33 ID:oyGIznZs

翌日 

刀剣匠「やべえ、期日までもう時間がないぞ……」

刀剣匠「猫の手も借りたいくらいだ」


「頼もーう!」バターン

「なんだ、誰もいないのか?」

刀剣匠「…………いらっしゃーい!」
8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/12(水) 20:53:35 ID:oyGIznZs

女騎士「……はっ!」

女騎士「何かと思った、凄くいい笑顔」

刀剣匠「こっちにも事情があるんでね」

刀剣匠「お前に頼みたいことがある」

女騎士「なに……?だ、駄目だ!私もそれなりに忙しいんだ」

刀剣匠「くくく……いい剣が欲しいのだろう?」

刀剣匠「頼みを聞いてくれれば、考えてやらんこともない」

女騎士「悪どい、実に悪どい笑みだ!」

刀剣匠「返事は?」

女騎士「承知仕ったあ!」
9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/12(水) 20:56:55 ID:oyGIznZs

女騎士「配達?」

刀剣匠「そうさ、あちこち物入りらしくてね、もうてんてこ舞いさ」

刀剣匠「物は仕上がっているんだが、それぞれ届けにゃならない」

女騎士「ワンド、メイス、ハルバードか……」

刀剣匠「大事な商品だ、本当なら俺が持って行って微調整までやるんだが」

刀剣匠「俺はいま、大物にかかりっきりだ」

刀剣匠「……背に腹は変えられない」

刀剣匠「ここは、お前に、託す」

刀剣匠「しか、ないのかなー……自分が憎い」
10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/12(水) 20:58:19 ID:oyGIznZs

女騎士「何やら自問自答しているようだが、これらはどこへ?」

刀剣匠「ワンドは魔法使い、塔で研究をしている」

刀剣匠「ちなみに塔は街外れの山の山頂にある」

刀剣匠「メイスは僧侶さん、教会で祈りを捧げ、孤児たちの面倒を見る優しい人だ」

刀剣匠「ちなみに教会は街道を行った隣町のさらに先の谷にある」

刀剣匠「ハルバードは戦士さん、この国では並ぶもののいない豪傑」

刀剣匠「ちなみに今は修行を兼ねて、海を渡った孤島にいる」

女騎士「ほほう……」
11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/12(水) 20:59:48 ID:oyGIznZs

刀剣匠「以上だ、何か質問は?」

女騎士「……それを何日で?」

刀剣匠「……二日だ!」


バターン!

女騎士「ちくしょーー!!!」

女騎士「もっと計画性を持てえええぇぇぇ………」


刀剣匠「行ったか……」

刀剣匠「さて俺もとっとと取り掛からねば」
12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/12(水) 21:10:25 ID:oyGIznZs

渓谷の町 教会

「井戸の水を汲んできてー……」

子ども「はーい」

子ども「よ、いしょ、うんせ、ほい」

子ども「はっ」

女騎士「や、やあ、こども、こ、こは……谷の、教会、かあい?」

子ども「よ……」

女騎士「よ?」

子ども「妖怪だあぁぁ!」

女騎士「妖怪ではない、立派な騎士だ!」

子ども「ひいっ!」
13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/12(水) 21:11:39 ID:oyGIznZs

女騎士「さあさあ、案内しておくれよお 」ニイィ

子ども「し、しすたあー!!!」

ダダダダダ!ダァン!

女騎士「むっ!?」

??「はぁ!」

女騎士「ぐっはあああ!」

??「あらやだ、はしたない」

女騎士「……や、屋根から奇襲とは……不覚」

??「大丈夫?何か変なことされなかった?」

子ども「こ、この人がいきなり茂みから……」

??「何かしら、大きな包みを3つも持って」

??「……あら、この人は……」
16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/13(木) 12:26:17 ID:3tciGUPg

ちゃんと届けるんだwww
18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/13(木) 22:37:28 ID:tYeg5nR6

…………

女騎士「はっ」

僧侶「目が覚めて?」

女騎士「ここは……」

僧侶「教会の集会室よ、こんなところしか空いてないの、ごめんなさいね」

女騎士「いや………、そ、そうだ!メイス!」

僧侶「この包みのことかしら?」

女騎士「そう!それ!貴女が刀剣匠に依頼していた僧侶か?」

僧侶「確かに依頼はしてるけど……貴女は?」
19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/13(木) 22:38:24 ID:tYeg5nR6

女騎士「配達に来た!刀剣匠に頼まれて!」

僧侶「そうなのね、てっきり新手の変質者かと」

女騎士「誤解だ!私は一応、王宮の元近衛隊長さ!」

僧侶「元、ねえ」

女騎士「い、いろいろと事情があるのだ!やはり怪しむか?」

僧侶「まあいいわ、人には言えないことあるものね」

僧侶「早速メイスを見せてもらえる?」

女騎士「ああ!さあさあ見てやっておくんなまし!」

僧侶「変な口上を覚えてるわね……、よっと」
20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/13(木) 22:40:49 ID:tYeg5nR6

僧侶「……貴女、こんなものを担いで来たの?」

僧侶「えらく重そうなケースだけど」

女騎士「はっは!いやあ軽いもんさ!」

僧侶「隊長ってのも頷けるわ」

僧侶「……綺麗なメイスね、ううん、綺麗なだけじゃない、治具もしっかりしてるし、このさりげない装飾も……教会の教えをちゃんと理解してる」

女騎士「後日、微調整をしたいそうだ」

僧侶「そう、わかったわ、ありがとう」

女騎士「私にも見せてくれるかい?」

僧侶「ええ、いいわよ」
21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/13(木) 22:42:43 ID:tYeg5nR6

女騎士「……ふーむ、確かに確かに」

女騎士「でもなんかあの剣とは違うなあ、あの剣はもう少し無骨というか実用的というか」

僧侶「あの剣?」

女騎士「そう!刀剣匠の店にある先代の親父さんの剣さ、最後の一振りなんだって」

女騎士「どうしてもあと一週間以内にその剣が必要なんだ、是非譲ってもらいたくてさ」

僧侶「そう、だからこんな手伝いをしているのね」

女騎士「大変さー、もう強行軍だよ」

子ども「しすたー、この食材……」

僧侶「ちょ、ちょっと!そんなに積んだら……!」

子ども「え?う、うわわあ!」

僧侶「危ない!」
22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/13(木) 22:43:38 ID:tYeg5nR6

僧侶「…………?」

女騎士「はっは、無茶するのは危ないぞー、気をつけなよ」

子ども「ご、ごめんなさい……」

子ども「そろそろお夕食の時間なんだけど、今日ほかのみんなは街へ買い出しに行ってるんだ……」

女騎士「そっかそっか、君はがんばり屋さんだな」

僧侶「…………」

女騎士「ってあれ?うわああ!?もう夕方じゃないか!」

女騎士「すまないが私は次の所へ行く!」

僧侶「次って今度はどこへ?」

女騎士「街外れの山頂にある魔法使いの塔!」

女騎士「それでは!」

僧侶「山に行くなら途中の分かれ道を右に行ったほうが近道よー!」

女騎士「……りょーかーい!」

僧侶「ふふ、元気な人ね」
23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/13(木) 22:45:00 ID:tYeg5nR6

女騎士「うひゃー!ひとつ届けたから随分身が軽いや!」

女騎士「お、ここが僧侶の言っていた分かれ道か!」

女騎士「馬車道と……獣道ね!」

女騎士「ではでは獣道へ!」


村人「……ありゃ、看板が外れてるべ」

村人「危ねえなあ直しとくべ」

村人「たまーにこの獣道に入り込むのがおるんだよなあ」

村人「……これでいいな、この先入るべからず!道迷い遭難」

村人「さあてもう少し行った先の辻で待ち合わせだったか」
29: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/16(日) 17:18:53 ID:NIXV8NxQ

深い森の中

ガサガサ

女騎士「はっは……」

女騎士「こんな道を、近道だなんて、僧侶も随分逞しいなあ」

女騎士「む、少し先が随分開けてそうだ」


女騎士「……お、おお!?」
30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/16(日) 17:19:41 ID:NIXV8NxQ

女騎士「……深い谷だなあ」

女騎士「右にも左にもだいぶ続いてそうだ」

女騎士「幸い、こちらの方がむこう側よりいくらか高いな……」

女騎士「よーし、ここはひとつ……飛ぶか!」

女騎士「おいっちにー、さん、しー……」

女騎士「よし!」

ダダダダダッ

女騎士「おおおおお!りゃああ!」
31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/16(日) 17:20:43 ID:NIXV8NxQ

??「薬草集めも楽じゃないよねー」

??「こいつらが自生してるのはここ位だし」

??「おや?あれは……まさか、群生地!?」

??「い、やー!なんて幸運、ありがたい!」

??「日頃の行いがいいとこういうことがあるよねー……」


…………ぉぉおおおお

??「ん?なんの音だ?叫び声?」

??「あっちの方から……って!いいい!?」
32: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/16(日) 17:21:36 ID:NIXV8NxQ

女騎士「……おおおお、りゃああああ! !!」ズザー

??「あっ……!」

女騎士「ふう!久しぶりだったけどなんとかなった!」

女騎士「無事、とうちゃーく!」

女騎士「あ、地元の方だろうか?どうもこんにちわー」

女騎士「ちょっと聞きたいのだが、魔法使いの塔とはどちらに行けばよいだろうか」

??「…………ふっ」

女騎士「わ!ちょっと!急に倒れてどうした地元の人ー!」
33: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/16(日) 17:22:39 ID:NIXV8NxQ

魔法使いの塔

??「ここは……僕の家?」

女騎士「お、目を覚ましたか?魔法使い」

魔法使い「あれ、僕、君に名乗ったっけ?そもそもなんでここまで……」

女騎士「ああ、そのことなら大した問題ではなかったぞ」

女騎士「貴方を担いで道を歩いていたら、地元のおばさんが色々と親切に教えてくれてな」

魔法使い「……ああそう」

魔法使い「そうだ!君、困るよ!僕は大事な薬草を集めてたのに!」

女騎士「あ、これのことか?」
34: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/16(日) 17:23:59 ID:NIXV8NxQ

女騎士「すまなかったなー、罪ほろぼしと言ってはなんだが、とりあえず集めておいた!」

魔法使い「こんなに、沢山……どうやって」

女騎士「はっは!山中探したらなんとかなった!」

女騎士「気力体力は私の自慢だからな、それとももしかして足りなかったろうか、だったらもう少し集めてくるが」

魔法使い「いや、もう十分すぎるよ、ありがとう」

女騎士「そうか、よかった!」

女騎士「ところで私は貴方に用があるんだ」

魔法使い「え?僕を訪ねてここまで来たの?ならなんであんな山の中に……」

女騎士「近道を行ったんだがなかなか大変でな」

魔法使い「近道って……、普通に道が通じてる筈だけど」

女騎士「まあ貴方に会えたから結果オーライさ!」
35: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/16(日) 17:24:40 ID:NIXV8NxQ

魔法使い「まあいいけどさ、それで用って?」

女騎士「刀剣匠に頼まれて、ワンドを届けに来た」

魔法使い「え?あ、そうなんだ、あいつは来ないのか」

魔法使い「せっかく酒でもと思っていいのを出しといたのに」

女騎士「なんだ、友人であったか」

魔法使い「古い知り合いでね、まあ腕の方も知ってたし」

女騎士「調整は後日したいそうだが、まあなにはともあれ、渡しておこう」

魔法使い「ありがと、……なに、このケース二つ抱えて飛んだの?さらに僕を抱えてここまで?」

女騎士「そうだが?」

魔法使い「ちょっと尊敬するよ……」
36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/16(日) 17:25:38 ID:NIXV8NxQ

魔法使い「……いいワンドだね、流石だ。これは柊の木を芯に入れてるんだな。持ち手のことを考えた造形か、あいつらしいな。」

女騎士「よかった、気に入ったようだな」

魔法使い「そうだね、これからしばらく使うことになるだろうから、なるべく自分に合ったものをと思ってね」

魔法使い「君も刀剣匠に剣でもつくってもらってるのかい?」

女騎士「いやー、私は……なんとか先代の親父さんの剣を譲ってもらえないかと思ってるんだが」

魔法使い「ああ、あの剣は駄目だよ。別の剣を打ってもらった方がいい」

女騎士「何故だろう?やはりとても大事なものなのか?」

魔法使い「親父さんの遺言でね、あの剣を渡す人はもう決まってるらしいんだ」

女騎士「……そう、そうなのか」

魔法使い「まあ刀剣匠も鬼じゃないし、君にここまで配達に来させたんだから何かしら用意してると思うよ」

女騎士「そうか……」
37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/16(日) 17:26:37 ID:NIXV8NxQ

魔法使い「ちょっと、見るからにしょんぼりしないでよ」

魔法使い「そうだ、そのもうひとつの包み、それも届けるんじゃないの?」

女騎士「……そうだったあ!」

女騎士「今の時間は……!」

魔法使い「昼過ぎだね、どこまで届けるの?」

女騎士「孤島!あの南海の!それも今日中に!」

魔法使い「はーっ!?無茶でしょどう考えても!」

女騎士「約束したんだ!騎士としてこれは違えられない!」

魔法使い「いやいや……ここからなら普通に行けば少なくともまるっと一日はかかるよ」

女騎士「全力で走れば間に合うと思っていたが……!」

魔法使い「……しょうがないな、力を貸すよ、薬草のこともあるし」
38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/16(日) 17:27:36 ID:NIXV8NxQ
女騎士「魔法使い、これは……」

魔法使い「飛翔魔法だよ、人に使ったことはないけどね」

魔法使い「これで君を孤島近くまで飛ばす」

魔法使い「着地が難しくてまだ未完成なんだけど、君ならなんとかなるだろう」

女騎士「……はたしてご期待に沿えるだろうか、甚だ不安だ」

魔法使い「いざという時の為に着地を補助する風魔法も組み込んであるから」

女騎士「……い、いいだろう……」

魔法使い「じゃあいくよー!」

女騎士「ま、待て!まだ心の準備が……!」

フワッ

女騎士「い、いいいい!?」

女騎士「うわぁーーーっ!!!」


魔法使い「行った行った」

魔法使い「さあて僕も準備に取り掛からないとね……」
39: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/16(日) 17:31:11 ID:NIXV8NxQ

孤島

ザザーン……

??「…………」

??「…………」

??「……はっ」

??「うたた寝をしてしまった、いや、今日はなんとうららかな陽気だ」

??「魚は……餌だけ食われてしまったか」

??「そろそろ戻って身支度を始めるかな」

ザザ、ン……

??「……む?波が立ってきたな、これは珍しい」

??「いや、なんだあれは」

??「何やら遠くから……飛んでくる!」
40: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/16(日) 17:32:08 ID:NIXV8NxQ

孤島沖 上空

女騎士「ひ、ええええええ!」

女騎士「魔法使いの大馬鹿者ー!」

女騎士「着地とか言うから島の上の方から落ちていく風に思うではないか!」

女騎士「角度が浅すぎだー!」

女騎士「このままでは岩肌に突っ込むぞ!」


女騎士「……あれ、誰か、いる?」

女騎士「と、投網を持った……漁師!?」
43: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/17(月) 10:27:15 ID:x5ktH9Qo

脳筋だなあw
だが、それがいい乙
45: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:11:43 ID:m5PlV.XY

??「にわかには信じ難いが、飛んでくるのは人か」

??「このままでは岩肌に激突必死!」


??「むぅん!!! 」ザッシャア


女騎士「……ぇぇぇぇええええ!!!」

??「ぬぅおおおおおお!!!」

ズガァッッッッッッ

ガガガッガガガガガッ
46: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:12:36 ID:m5PlV.XY

??「むぅぅぅぅん!!!」

ガガガガガッガッ

??「むぅ!押し切られるか!」

??「おおおおおおー!!!」

ブワッ

??「これは、風が起こって!?」

ガガガガガ……ドシャア



??「ふぅ!!!」

??「大丈夫か御仁」

女騎士「あ、ありがと、う」

??「目を回しておるか、仕方ない、許せよ」

女騎士「えっ?わっ、ひゃあ!」

??「すぐそこに私のテントがある、少し辛抱せいよ」

女騎士「は、はあ……」
47: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:13:31 ID:m5PlV.XY

孤島の森の中 テント

??「なんと!魔法で飛んできたと申すか!」

女騎士「ああ……、飛びごこちはよかったんだが」

女騎士「着地は見ての通り酷いもんさー!」

女騎士「でもまあ助かったからよしとしよう!」

??「はっは!随分と切符の良い御仁だ!」

女騎士「……ところで漁師さん」


??「……漁師ではない、一応は戦士だ」
48: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:14:23 ID:m5PlV.XY

女騎士「はっは!なんだあ貴方が戦士だったのかあ!」

女騎士「色黒だし半裸だし、素潜り漁でもやってる人かと!」

戦士「む、そんなに黒いか」

女騎士「いやもう立派な島民だよ!」

戦士「ぬう、少しは身なりを整えておかんとな」

戦士「して、私に何の用向きだ?」

戦士「こんな方法で来たのだ、急を要するのであろう」

女騎士「あ、そうだな!……って……あれ?」
49: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:14:58 ID:m5PlV.XY

女騎士(ない!ど、どこいった!?)

戦士「何かなくしたのか」

女騎士「あ、あははは!いや、な!黒っぽい、これくらいの大きさのケース、なかったかなーと!」

戦士「ケースか……、そういえば、何かそれらしいものが山の方に飛んでいったな……」

女騎士「それだあ!山ってどっちだ!?」

戦士「あちらの方だが……この辺りは獣も多い、一緒にいこう」

女騎士「あ、ああ!助かるよ!」

女騎士「にしてもよくそんなケースまで見てたな」

戦士「なに、日々の鍛錬の賜物よっ」ニカッ

女騎士「今度その鍛錬教えてくれ」
50: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:15:35 ID:m5PlV.XY

刀剣匠の工房

カーンカーンカン

刀剣匠「ふーっ、あちー!」

刀剣匠「少し休憩しよう」

刀剣匠「……大体仕上がってきたかな」

刀剣匠「まだまだ師匠の域ではないか」

刀剣匠「だけどまあ泣き言も言ってらんねえな」

刀剣匠「まずは俺に出来る最高の仕事をしよう!」

刀剣匠「うっし、気合い入れるぞ!」


刀剣匠「……あいつはちゃんと届けられたかな?」
51: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:16:49 ID:m5PlV.XY

女騎士「はくしょっ!」

戦士「どうした?」

女騎士「何か寒気が……いや、大事ない」

戦士「そうか……見えたぞ、あれがこの孤島で最も高い岩山だ」


アギャアアギャアアギャア!

女騎士「戦士……あれは」

戦士「ぬわっはっはっ!ちなみに怪鳥が巣くっておる!」

戦士「その卵は栄養満点!私の大好物となった!」

戦士「奴と私の戦歴は五分と五分なのだ!」

女騎士「あ、貴方で五分の実力とは!」

女騎士「……うぐっ!」

戦士「どうした、探し物があったか」

女騎士「あった……やつの巣の付近だ」

戦士「うぬ、あれは……ハルバードか」
52: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:17:23 ID:m5PlV.XY

女騎士「貴方が注文していたものだ」

戦士「なるほど、お主は配達人だったか」

女騎士「すまない!私が不注意なばかりに!」

戦士「なに、気にするな!これはいい機会だ!」

戦士「私の修行の締めくくりとして、奴とは白黒つけようと思っていた所だ」

戦士「いざ協力して取り返そうぞ」

女騎士「戦士……、ありがとう!」
53: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:18:01 ID:m5PlV.XY

怪鳥の巣の裏手

戦士「……ふっ、ふっ、ふっ……」


女騎士「戦士め、この崖を素手で登るか……!さすがだ!」

アギャアアギャア!ギャアア!!!

女騎士「怪鳥が戦士に気付いて威嚇している」

女騎士「今のうちだな」


女騎士「おお、岩山に深々と突き刺さっている」

女騎士「よく折れなかったな、笑えるほどの強度だ」

女騎士「さて……抜くぞ!」

女騎士「ふん!ぬううう~!」

女騎士「…………っはっはっはぁ!」

女騎士「……ぬ、抜けない!?」
54: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:18:43 ID:m5PlV.XY

怪鳥の巣

戦士「ぬしとの勝負、今日で決着をつけてくれる!」

ギャアアー!!!

戦士「ゆくぞ!」


アギャアアギャアアギャア!

戦士「はっ!まだまだだあ!」

戦士「その尾翼、取ったりい!」


戦士「おおおお!……だあああ!」

ギャアアース!

ズズン……

戦士「はっはっはっ!これで私の勝ち越しだなあ!」

戦士「さて女騎士の方の首尾は……なんだ、手間取っておるのか」
55: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:19:35 ID:m5PlV.XY

戦士「大丈夫か女騎士!」

女騎士「あ、ああ戦士!これ!抜けないんだ!」

戦士「むう、確かに深々と突き刺さっておるな!」

戦士「任せておけ!ぬん!」

戦士「ふ、ううううむ!!!」

……ギャアア、ギャアア、アギャア!!

女騎士「怪鳥が……こっちへ!」

女騎士「戦士!一旦引こう!」

戦士「ぬ、ううううううううう!!!」

アギャアアギャアアギャアアアアア!!

女騎士「戦士!」
56: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:20:35 ID:m5PlV.XY

ギャアアアア!

女騎士「ちっ!こっちだ鳥野郎!」スラン

女騎士「だあああ!」ズガァ!

ギャオオオ!

ギギ、バキィン!

女騎士「くっ、剣が……!」


戦士「……ぬうおりゃあああああ!!!」ズズズッ!

ブオン!

……ゴウウ!!

ギャーア!アアアア……


戦士「なんと、ハルバードから風が……!」

戦士「これは……魔法の武具か!」

女騎士「凄い威力だ……、なんとか助かったようだな」
57: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:21:42 ID:m5PlV.XY

戦士のテント

戦士「うむ、なるほどな」

戦士「ハルバードの刀身に魔石を組み込んでいるのか。そして柄には術式……、どちらかと言えばこれは護身の為の魔法のようだな。」

戦士「はっはっは!これは面白い!」

戦士「あのままでは確実に怪鳥を仕留めていたが……奴もまた子の親」

戦士「これがあれば無駄な殺生も最小限にできるかもしれぬな」

女騎士「そうか、喜んでもらって何よりだよ」

戦士「ああ、感謝するぞ!これでようやく旅に出かける事ができる」

戦士「その前に、腹ごしらえだ!これは旨いぞー!」

女騎士「卵は食べるんだな……、実に美味だが!実に美味だ!」ガツガツ

戦士「それはそれ、これはこれよ!」ニカッ
58: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:23:15 ID:m5PlV.XY

城下町

戦士「それではまた会おう!」

女騎士「ああ、またな!ありがとう!」

女騎士「気持ちのいい男だったな」

女騎士「さあて、と」

女騎士「刀剣匠の店に行くか!」

女騎士「その前に……少し腹ごしらえしてくかな」

女騎士「奴とはこれから大いなる舌戦になりそうだ」
59: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:24:31 ID:m5PlV.XY

宿屋

女騎士「ようし、お腹いっぱい!」

女騎士「さあさあやってやるぞう!」

女騎士「いざ、刀剣匠と合間見えん!」

女将「……あら、貴女、彼の所に行くの?」

女騎士「へっ?ああ、そうだが」

女将「じゃあこれ持っていってくれる?」

女将「きっともう3日は何も食べていないと思うの」

女将「あの子、昔から作業に没頭すると倒れるまでやっちゃうから……」

女将「貴女もよければ一緒に食べていいから」

女将「ね、頼むわ、ちょっと心配してたのよ」

女騎士「そうなのか、よし、引き受けた!」

女将「ふふ、ありがとう」
60: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:25:29 ID:m5PlV.XY

刀剣匠の店

女騎士「ふーっ……、よしっ!よしっ!」

女騎士「頼もう!」

シ……ン……

女騎士「物音ひとつしないな」

女騎士「工房のほうか?」

女騎士「……開けるぞ?」ギギ

女騎士「いない……か、……む?」
61: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:26:38 ID:m5PlV.XY

女騎士「大きな布包み……なんだろう」

女騎士「鎧くらいの大きさ……かな」ソ……



刀剣匠「それに触れるな!!!」

刀剣匠「職人の工房に勝手に入りやがって……」

女騎士「刀剣匠……」

女騎士「す、すまない、悪かった」

刀剣匠「とっとと出ていけ」

女騎士「本当にすまなかった、この通りだ」

刀剣匠「……」

女騎士「……わかったよ」

女騎士「これは置いて行く、良かったら食べてくれ」

バタン
62: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:27:25 ID:m5PlV.XY

スタ、スタ、スタ

スタ、スタ


ピタッ

女騎士「…………」

女騎士「……ぅ」

女騎士「……ぅぐっ」


女騎士「うわああ~~ああ!」

女騎士「うわぁ~!」
63: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:28:06 ID:m5PlV.XY

兵士A「おい!あそこ!」

兵士B「……や、あれは……!」


女騎士「うわぁ~!刀剣匠の、馬鹿野郎~!」


兵士B「どうされましたか、元隊長!」

兵士A「どこかお身体でも悪いのですか、元隊長!」

女騎士「お前ら……!」


女騎士「元は余計だこの野郎!うわぁ~~!」


兵士A「ど、どうされたのか」

兵士B「とりあえず詰所まで引きずって行くか」

兵士A「まったく元隊長が泣きわめくなんて……!」

兵士B「天変地異の前触れか!」
64: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:29:29 ID:m5PlV.XY

……パク

刀剣匠「……旨い」

刀剣匠「あー、くそっ、つい怒鳴っちまった」

刀剣匠「謝らなきゃ……」

「頼もう」

刀剣匠「誰だ?今立て込んでるんだ、悪いが帰ってもらえない……か」
65: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/18(火) 21:30:14 ID:m5PlV.XY

少女「くっくっく……強気だな、それもまた若さゆえか」

少女「泣いて……いたぞ?」

少女「早く追いかけるのだ!」

少女「そして何も言わず、そっと後ろから抱きしめてやるといい」


刀剣匠「……」

少女「……」

少女「えーっと、次はなんだっけ?」

刀剣匠「大衆演劇に毒されるのはやめようねー」

刀剣匠「おいちゃん絵本あげるから」

少女「わーい」
68: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 08:53:52 ID:HMBFLpoM

ノリノリ少女ちゃん可愛いwww
喚いてる女騎士も可愛い
そして刀師匠はいつデレるのかー!
70: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 21:55:38 ID:fJe/ERyw

………

女騎士「ひっく、刀剣匠がなんぼのもんじゃーい!」

女騎士「私はちゃんと期日通りに配達したぞー!」

女騎士「刀剣匠のどあほー!」

兵士A「元隊長……おいたわしや」

女騎士「だから元っていうな!」

兵士B「そんな、無茶言わないでください元隊長」

女騎士「おまえら本当に心配してるのか!?」

兵士B「仕方ないです、王の決定なのですから」
71: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 21:56:18 ID:fJe/ERyw

女騎士「うう……私の何が悪かったのか」

女騎士「城に仕えてかれこれ15年」

女騎士「近衛隊長になってからのこの半年はそりゃあもう頑張ったさ」

女騎士「なのに、なのにだ!」

~~~
少し前

練兵場

大臣「女騎士よ、本日を持って近衛隊長の任を解く」

女騎士「今、なんと……」

大臣「次の行き先は半月後に伝える」

大臣「それまではしばし休暇でも取るとよい」

女騎士「ま、待ってください!」

大臣「ならぬ、これは決定事項だ」

女騎士「私はまだこの国の為に力を……!」

~~~
72: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 21:57:02 ID:fJe/ERyw

女騎士「隊長になった時に頂いた剣も取り上げられちゃうしさ」

女騎士「私では力不足だったのかな」

兵士B「そんなことはありません!」

兵士A「元隊長は我々にとっては今でも隊長です!」

女騎士「お前たち……!」

女騎士「私はいい部下を持ったなああ!」

女騎士「必ず、必ずまた近衛隊長に返り咲くぞ!」
73: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:02:07 ID:fJe/ERyw

女騎士「やはり私には剣が必要だ……」

女騎士「武術大会まであと3日」

女騎士「なんとしてで私の扱える剣を手に入れて、大会で優勝し、力を認め直してもらわなければ!」

兵士B「それで、剣はどうでした?」

女騎士「…………はあ~ああ」

兵士B「な、なんという大きなため息!」

兵士A「らしくないですよ元隊長!」

兵士A「もっといつものように何も考えていない顔で豪快に笑いとばしてください元隊長!」

女騎士「だから本当に心配してるのか!?」
74: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:03:07 ID:fJe/ERyw

ワーワー

バタン

刀剣匠「邪魔するぞ」

兵士A「やや!何奴!」

兵士B「ここは栄誉ある近衛騎士団の詰所だ!」

兵士B「部外者が立ち入る場所ではない!」

刀剣匠「ならそこの元隊長殿も相応しくないな」

女騎士「なっ!」

兵士A「それは確かに」

兵士B「なるほどもっともだ」

刀剣匠「だろ、じゃあちょっと借りてくぞ」

女騎士「な、ちょ、ちょっと待て!」

女騎士「くそ!お前ら~~!」

兵士A・B「「お気を付けて~!」」
75: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:03:57 ID:fJe/ERyw

刀剣匠「話は外で少し聞いた、武術大会に出るための剣が欲しいのか」

女騎士「むっ……、その通りさ」

女騎士「生半可な剣じゃ駄目なんだ、私の剣圧ですぐに駄目にしてしまう」

刀剣匠「だからあの剣が欲しいのか」

女騎士「そうだ、あれならもしくはと思ったんだが」

刀剣匠「すまんがあれは駄目だ、売り物じゃあない」

女騎士「魔法使いから聞いたよ、もう持ち主がいるって」

女騎士「残念だがそうと聞いてわがままを言うほど馬鹿じゃない、諦めて別の剣を探すさ」
76: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:04:45 ID:fJe/ERyw

刀剣匠「……ちょっと手を貸してみろ」

女騎士「えっ?こらっ、ちょ、ちょっと……!」

女騎士「な、何をしてるんだ」

刀剣匠「うるさい、集中させてくれ」サワサワ

女騎士「なんだよ……」

刀剣匠「…………」

刀剣匠「……そうか」

刀剣匠「成る程な、よく剣を振り込んでいるいい手だ」

女騎士「うん?」
77: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:09:02 ID:fJe/ERyw

刀剣匠「用意してやるよ、お前の剣」

刀剣匠「配達もしてもらったしな、約束だ」

女騎士「ほ、本当か!」

刀剣匠「ただし師匠の剣じゃなくて、俺の打った剣だ、それでもいいなら」

女騎士「ああ!ああ!それでいい!」

女騎士「みんなお前の仕事を褒めていた!私もお前の剣が見てみたい!」

刀剣匠「よし、決まりだ」

刀剣匠「調整は大会当日になっちまうが、必ず間に合わせる」

刀剣匠「まあ枕を高くして待ってろ」

女騎士「宜しく頼む!お前が力を貸してくれるなんて、これは百人力だ!」

刀剣匠「はははっ、任せとけ」
78: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:09:40 ID:fJe/ERyw

武術大会当日 準決勝

女騎士「はっ、はっ、はっ」

兵士B「元隊長、かなり力を抑えて戦ってる」

兵士A「そりゃその辺のなまくらじゃあすぐ駄目になるからなあ」

兵士A「それでもここまで来るんだから、凄い人だ」

兵士B「我が国随一の使い手が何故、近衛隊長の任を解かれたのか……」
79: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:10:58 ID:fJe/ERyw

女騎士(……これは実にまずい!)

女騎士(さすがに手加減していては……)

女騎士「ちい!」

バキィ!

「待て、中断だ!」

「どうする、替えの剣はあるか?」
80: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:11:52 ID:fJe/ERyw

女騎士「ああ……」

女騎士「確かに用意はあるが、これでは……」


刀剣匠「……女騎士!」

女騎士「……刀剣匠!」


刀剣匠「これを使え!」

女騎士「この剣は……!」

刀剣匠「遅くなって悪かった!だが、きっとお前の手に馴染む筈だ!」
81: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:14:47 ID:fJe/ERyw

「再開するが、大丈夫か?」

女騎士「ああ!」

女騎士「しなやかな剣だ、あの店に残っていた剣とは対照的に」

女騎士「それになんという軽さだ!」

女騎士「持ち手は手に吸い付くかのごとく」

女騎士「まるで使い込んだ愛用の剣のようだ」

女騎士「これなら!」
82: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:20:25 ID:fJe/ERyw

………

「がっはあああ!」

「勝者!女騎士!」

女騎士「やった……!」

女騎士「これで決勝進出!」

女騎士「相手は……」


戦士「おお!なんだあお前さんが相手か!」

女騎士「せ、戦士か!」

戦士「はっはっ!これも何かの縁だなあ!宜しく頼むぞ!」

女騎士「ああ!受けてたとう!」


『それでは!決勝戦、始め!』
83: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:27:29 ID:fJe/ERyw

戦士「む?その剣は……刀剣匠が打ったものか?」

女騎士「ああ、よくわかったな」

戦士「はっはっ、そりゃあ私もそれを狙っていたからなあ」

女騎士「何?」

戦士「なんだ知らんのか、そいつは刀剣匠の最高の一振りだ」

戦士「そんなもんを託されるとは、随分と奴に好かれとるな!」

女騎士「最高の……一振り」

戦士「はっはっ!ますます楽しくなってきた!」

戦士「いざ!」

女騎士「……参る!
84: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:28:46 ID:fJe/ERyw

…………

王「む、決勝に出ているのは……女騎士ではないか」

王「あやつには休暇でも取れと申した筈だが」

王「ふはは!面白い奴だな」

王「それに相手はあの戦士か」

王「よいよい、実に面白い」
85: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:30:34 ID:fJe/ERyw

…………

女騎士「であああああ!」

戦士「ぬぅあ!」


「……勝者!女騎士!」

女騎士「か、勝った……!」

戦士「はっはっはっ!流石だな!」

女騎士「いや、貴方も……ここまで追い込まれたのは初めてだ」

女騎士「私もまだまだだな!鍛え直さねば!」

戦士「はは、私も精進するとしよう」
86: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:35:23 ID:fJe/ERyw

タッタッタッ

女騎士「はっ、はっ……」

女騎士「刀剣匠は……いないか?」

兵士A「あの方ならつい先ほど帰られましたよ」

兵士A「宜しく言っといてくれ、とのことで」

兵士B「何やらこれから工房に籠って大仕事があるとかないとか」

女騎士「そうか……」

女騎士「訪ねていっても迷惑だろうな、はは、また怒られそうだ」

女騎士「……」
87: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:36:55 ID:fJe/ERyw

謁見当日 城門前

女騎士「結局あれから刀剣匠には会えずじまいだったな」

女騎士「礼を言いたかったが……」

女騎士「……」

女騎士「しかし今日ばかりは気にしてもいられんか」

女騎士「ああ、私はどこへ飛ばされてしまうのか!」

女騎士「北か?南か?もしや南海の孤島か?もしやすると、首!?」

僧侶「あら……」

僧侶「ごきげんよう、元隊長さん」

女騎士「あ、あれ、僧侶じゃあないか!」

僧侶「ふふ、あれ以来ね」
88: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:41:06 ID:fJe/ERyw

女騎士「どうしたんだ?城に用なのか?」

僧侶「そう、少しね」

女騎士「そうかそうか!……と、今日に限ってあいにく私も大事な用があるんだ」

女騎士「城下町を案内したかったんだが、すまん!」

僧侶「ふふ、ありがとう、また今度宜しくね」

女騎士「……?貴女はお城に入らないの?」

女騎士「あ、ああ!まだ少し時間が早くてな!」

女騎士(怖くて入れないなんて言えない!)

僧侶「そう、私はもうすぐだから行くわね?」

女騎士「気をつけてな!」
89: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:41:57 ID:fJe/ERyw

女騎士「早く行かなければ……でも怖い……」

女騎士「おろおろ……」

魔法使い「……いーよっと」

魔法使い「……そこにいるのは女騎士?何してるの?」

女騎士「ま、魔法使い!」

女騎士「やあ奇遇だなあこんな日に!」

女騎士「今飛んできたのは魔法か?なんだ私にもそれかけてくれれば良かったのにー、意地悪か?こーいつー!」

魔法使い「これは自分だけにしか使えないんだよ……ってどうしたのさ、やけに饒舌だけど」
90: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:42:45 ID:fJe/ERyw

魔法使い「なにか……城に入るのを躊躇ってるの?」

女騎士「や、ややや、やだなー!どーして近衛隊長の私が入るのを怖がるなんて!」

魔法使い「元でしょ、抜けてるよ」

魔法使い「よくわかんないけど、先に行ってるね」

女騎士「そ、そーかい!行っておいでー!」

魔法使い「……はあ、ほら水でも飲んで落ち着きなよ、これあげるから」

魔法使い「じゃあね」

女騎士「き、気をつけてなー!」

女騎士「はあ」
91: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:43:35 ID:fJe/ERyw

ゴク!ゴク!ゴク!ゴク!

女騎士「ぶはー!!!」

女騎士「よ、よーし、なんとなく落ち着いてきたぞう!」

女騎士「よーしよーし、やってやるぞう!」


戦士「……そこにいる元気な輩は女騎士か!」

女騎士「お、おお戦士か!」

女騎士「今日は不思議な日だなあ」

女騎士「戦士も城に用事なのか?」

戦士「ああ、王様に呼ばれてな!」

女騎士「王様に?」
92: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:44:17 ID:fJe/ERyw

女騎士(……なんだなんだ?あ、もしかして前の武術大会で準優勝したから?いい役職を用意してやる的な?近衛隊長とかいい具合に空いているぞってか?)

女騎士「ゆるさーん!!!」

戦士「なんだどうした女騎士」

女騎士「へっ?い、いやすまない、声に出ていたか」

女騎士(いやだがしかし、考えてみれば、そうであるなら私が復帰することもあるんじゃなかろうか、だって勝ったし!僅差だけど!)

女騎士「なるほどね!」

戦士「さっきからどうした、お前さんも城に行くんだろう?」

女騎士「ああ、すまなかった戦士、さあ行こうじゃないか!」

戦士「はっはっ!何があったかわからんがそれでこそ女騎士だ!」


「入城か?それならこの名簿に記入を……」

「え?ダメダメ!顔パスじゃないよ!今のあんたは近衛兵ではないんだから!」

戦士「ど、どうした女騎士!信じられんくらい肩が落ちてるぞ!」
93: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:45:02 ID:fJe/ERyw

………

刀剣匠「ひい、はあ、ぜえ、ぜえ」

刀剣匠「お、重かった……」

「なんだ、荷車で押してきたのか?連絡をくれれば手伝いに行ったものを」

刀剣匠「いや、今朝までかかったんだ……連絡する暇なかった」

「そうかそうか、代わろう、少し休むといい」

刀剣匠「ああ助かる、頼むよ」

「一応中身をあらためさせてくれ」

「剣が一振り、防具一式、装飾具が数点、それと工具だな……」

「よし、行こうか、すでに始まっている」
94: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:45:54 ID:fJe/ERyw

王「ほんの二週間ほどだったが、休暇は楽しめたか?」

女騎士「……はい」

女騎士(昨日なんてご飯が喉を通らなかったさ!)

王「ふ、歯切れが悪いな」

王「よい、知っておるぞ、お主が武術大会に参加して優勝したことは」

女騎士「は、はい!」

王「流石だな、その腕前と心意気に恐れ入ったよ」

女騎士(お?おおー?これはもしかして?)
95: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:47:18 ID:fJe/ERyw

王「もはやお主に敵うものはこの国にはおらぬかもしれぬな」

女騎士「は、僭越ながら!」

女騎士(来たぞう!来たぞう!)


王「……やはりお主を近衛隊長の任から解いたのは正解だったようだ」

女騎士「は、ありがとうございます!」


王「……?」

女騎士「……え?」


女騎士(な、なにいー!!?)

女騎士(なんだ今の会話の流れは!?)

女騎士(王様!そこは、間違っていたな、とか仰る所でしょう!?やだなあもう!あああ、きょとんとしてらっしゃる!)
96: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:48:42 ID:fJe/ERyw

王「おほん!今日はそなたに会わせたい者がおる」

女騎士「え……?」

王「入ってまいれ」

戦士「失礼します」

戦士「王のご指名により、不肖私め、参上致しました!」

女騎士「せ、戦士!」

戦士「よう!先ほど振りだな!」

王「なんだ知り合いか?それなら話が早い」
97: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:49:33 ID:fJe/ERyw

王「戦士には頼みがあってな、本日は来てもらった」

女騎士「んな、な、な、それは……まさか」

王「すでに気付いておったか?」

女騎士(気付きたくありません!)


王「……むう、気付いておるならば仕方あるまい、ん?」

王「他の二人はどうした?」

戦士「や、先ほど少し荷運びを手伝いまして」

戦士「すぐ戻ってくるかと……、おお来ましたな」


魔法使い「いやまさか、僕の他にも頼んでいたとはねー……」

僧侶「本当ですね、そうとは知らず、悪いことをしました」
98: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:51:18 ID:fJe/ERyw

王「来たか、待ちわびたぞ」

魔法使い「は、遅くなりました、魔法使いただいま参りました」

僧侶「僧侶です、この度は呼んで頂き光栄です」

女騎士「な、な、ええ?」

王「お前達、もう女騎士は知っておるようだ」

王「先だって話したことに異論はあるか?」

僧侶「いいえ、ありません、とても相応しいと思います」

魔法使い「僕もありません、まあ、賛成です」

戦士「私もありませんな!むしろ光栄に思っておりますわ!」
99: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:52:13 ID:fJe/ERyw

王「そうかそうか、ならば女騎士よ……」

女騎士「は、ははっ!」


女騎士(や、やめてやめて!もう耐えられない!)

女騎士(私はまだ騎士でいたい!)

女騎士(なんだ!?私はもうお払い箱か!?)

女騎士(いやだー!いやだー!いやだー!)


王「……そなたを勇者として、魔王討伐を命ずる」

女騎士「……断固お断りです!」


女騎士(ああっ、王様になんて口の聞き方をー!どっちにしろもう駄目だー!………)


女騎士「…………は?」
100: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:53:01 ID:fJe/ERyw

王「なんだどうした?もう腹が決まっておるのかと思ったが……」

女騎士「え?いえ、え、勇者?」

女騎士「私は、近衛隊長の任を、解かれて、さらに城からも追い出されるのでは?」

王「そんなつもりは毛頭ないが……なんだ、気付いておらなんだか」



王「北の大地に……魔王が現れたのは知っておるな?」

女騎士「はい……」

王「いまはまだ目立った動きはないが、既に魔族の軍勢を整えているとの噂もある」

王「奴はいずれこの国にも攻めて来ることだろう」

王「その前に……我が国からも先手を取り勇者を旅立たせることにした」

王「彼らにはその旅に同行することを命じたのだ」
101: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:53:38 ID:fJe/ERyw

女騎士「勇者……仲間……」

王「そして肝心の勇者として、わしはそなたを選んだのだ」

王「今まで秘密にしておったのは、考える時間を与えて断られん為だ」

王「そなたほどの騎士はおらん、間違いなく我が国きっての使い手だ」

王「騙すようなやり口ですまん、だがどう考えてもそなたしかおらん」

王「どうだ?やってくれるか?」


女騎士「……は」

女騎士「はいっ!身に余る思いです!必ずやご期待に沿い、魔王を討伐しましょう!」

王「そうか!そうか!そなたのような者がいてわしは嬉しいぞ」
102: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:54:20 ID:fJe/ERyw

王「旅に出すにあたって援助は惜しまん」

王「全力で魔王を討伐しようぞ」

王「さしあたって……そなた達には支度金を渡しておいたな?」

戦士「はっ、おかげでいい武具を揃えることが出来ました」

王「ならよい、わしからも餞別として別に用意させた」

王「よければ使ってくれ、……あれを」
103: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:55:07 ID:fJe/ERyw

女騎士「こ、これは……!この、剣は……!」

王「国一番だった職人が残した剣だ」

王「国を救う人物に渡してくれとの遺言だった」

王「そなたに授けよう」

女騎士「有り難き幸せ……」
104: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:57:07 ID:fJe/ERyw

女騎士「この感触はまるであつらえられたかのよう……!」

王「その調整をさせる為に、お主愛用の剣を借りた、すまなかったな」

王「そしてそれは職人の弟子が作った鎧だ」

王「弟子はどうやら防具づくりに才があるらしくてな」

王「そなたらにも装飾具を授けよう、有効に使ってくれ」

魔法使い「は、ありがとうございます」

王「弟子も城に呼んである、後で細かい調整をしてもらうといい」

王「期待しておる」

女騎士「はっ!」
僧侶・魔法使い・戦士「はは!」
105: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:58:38 ID:fJe/ERyw
………………

………



刀剣匠「よう、終わったか」

女騎士「ああ」

刀剣匠「なら調整させてくれ、魔法使い達の分もまだ出来ていないしな」

女騎士「この剣も鎧も、わたしにあつらえたようにぴったりだよ」

女騎士「刀剣匠は私が勇者を拝命することを知っていたのか?」

刀剣匠「いや?俺が聞かされたのは、この剣の持ち主に合う剣を用意してくれってだけだ」

女騎士「なら何故?」

刀剣匠「その腰に提げてる剣、それを作る時にお前の手を見せてもらったからな」

女騎士「大会用にくれた剣か」
106: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 22:59:59 ID:fJe/ERyw

刀剣匠「剣を見れば持ち主のことはなんとなくわかる……」

刀剣匠「すぐわかったよ、勇者はお前だと」

女騎士「凄いなあお前は!」

女騎士「この、お前の師匠がつくった剣も!本当にしっくりくる!」

刀剣匠「そうかそうか」


刀剣匠「さ、ならその剣返してくれ」


女騎士「何故だー!」

刀剣匠「師匠の剣を貰ったんだろ?お望みのものが手に入ったんだからいいじゃねえか」

刀剣匠「それに師匠の剣は両手剣だ、俺のは使えないし邪魔になるだけだろ」
107: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 23:02:22 ID:fJe/ERyw

女騎士「い、いやだ!!!」

刀剣匠「なんでだよ!持腐れされるのは俺だっていやだ!」


女騎士「こうすれば、使えるもんねー!」

刀剣匠「な……!両手剣を片手で……二刀流だと!?」

僧侶「さすがね」

魔法使い「本当だねえ」

戦士「はっは!それでこそ女騎士だ!」

刀剣匠「俺の剣は師匠のに比べて出来が良くないんだよ!そんなもん勇者様に使わせられるか!」

女騎士「それは攻撃力の話だろう?知ってるよ、お前の剣は身を守る為の剣さ」

刀剣匠「だけどよ……!」
108: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 23:04:08 ID:fJe/ERyw

女騎士「それにさ」

女騎士「確かにこの両手剣は、伝説の職人が残した最強の剣かもしれない」

女騎士「でも私にとっては、汗水垂らして手に入れたこの剣」

女騎士「お前が私の事を考えてくれて鍛え直してくれたこの剣」

女騎士「そしてお前の打った最高の一振り」


女騎士「これこそが、私にとっても、最高の一振りなのさ」
109: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 23:05:39 ID:fJe/ERyw

……………………

…………



「え~、つまりそんな訳で……」

「二刀流の勇者と仲間達によって世界は魔王から守られたという……」

「めでたし、めでたし……」

パチパチパチ……
110: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/03/20(木) 23:08:58 ID:fJe/ERyw

娘「ねーねーお母さん、その後勇者様たちはどうなったの?」


母「……くくく!知りたいか?ならばその身に刻み込んでやろう!」

娘「あ……また演劇の影響を受けてる」

娘「もうっ……、お腹すいちゃった、早く帰ろう?」

母「いいだろう!そなたのはらわた、満たし尽くしてくれるわ……」


「あ、こちら観劇された方への粗品ですー」

母・娘「「わーい、ワッペンだー」」



ワッペンには二本の剣をあしらった刺繍が施されている

刺繍と同じ絵柄の看板を掲げた街外れの工房からは、
鋼を叩く音と時折夫婦の楽しそうな語らいが、聞こえてくるとか、こないとか



  刀剣匠「これが最後の一振りだ」女騎士「 それを頂こうか」 おしまい





元スレ

テーマ : 2ちゃんねる
ジャンル : サブカル

女騎士「勇者?何だそれは?」【オリジナルss】

1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 00:46:33 ID:CaRt8voQ

勇者「とどめだぁーー!」


ズバッ


魔王「ま…まさか我が人間なんかに殺されると…は……その剣さえ無ければ…その剣さえ無ければぁぁああ!!」


シュゥゥゥ…


僧侶「ま、魔王が消えていく…」

魔法使い「やりましたね勇者様!!」

勇者「ああ、ついに終わったよ……みんな、今まで本当にありがとう。僕一人じゃ無理だった、みんなが居なかったら魔王を倒すことなんて出来なかったよ」

戦士「そんなことは無いぞ。全て勇者のおかげだ」

魔法使い「そうそう。あとその『剣』もね」

勇者「うん…魔王に傷を負わせることが出来る唯一の剣、この『聖なる剣』がなかったら倒せなかったよ」



この物語はその剣に纏わる物語である
2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 00:48:21 ID:CaRt8voQ

遡ること数百年…


==============================


【とある古ぼけた村】


女騎士「勇者?何だそれは?」



この時代にはまだ、『勇者』という存在は居なかった

そんな『勇者』という言葉を私に教えてくれたのは、幼馴染のこいつだった



剣士「勇者ってのは読んで字の如く、『勇気を持つ者』だ。どんな困難もその勇気を持ってして立ち向かう、まさに英雄の中の英雄!…昔の古い文献にはそう書かれてたぞ」

女騎士「ふ~ん…で、その勇者にお前はなりたいと…」

剣士「ああ!勇者になって魔王を倒そうと思ってる!」

女騎士「…私にも勝てないのにか?」

剣士「うっ!」グサッ
3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 00:48:25 ID:1AduP0xo
魔王になんか萌えた
4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 00:49:09 ID:CaRt8voQ

女騎士「はぁ…久々に故郷に帰ってきてみれば何を腑抜けたことを…」



私は王国騎士団に入団していて、故郷であるこの村を数年ほど離れていた



剣士「う、うるさい!とにかく俺は今日この村を出て、魔王城を目指すつもりなんだ!」

女騎士「…お前は本物の馬鹿か?王国騎士団にすら入れないお前が魔王に敵うわけないだろ」

剣士「俺は騎士団に入れないんじゃなくて入らないんだ。騎士団は『王国』を魔物達から護る為の組織だからな。言うなれば盾だ」

女騎士「…それでお前が矛ってことか?」

剣士「ああ!」

女騎士「はぁ…馬鹿すぎて頭が痛くなってきた」
5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 00:50:12 ID:CaRt8voQ

私達が生まれる前はまだ、魔王を倒そうとする者も多数居たらしい

村の皆もその者達を英雄と称えていた

しかし…魔王を見ることすら出来ずに全員殺されてしまった

そればかりか魔王を倒しに向かう者が現れると、その者の生まれ故郷が魔物達に襲われるという噂まで流れた

それが本当か嘘かわからないがその噂が流れて以降、魔王を倒そうなんて考える者は現れなかった……このどうしようもない馬鹿は除いてだが…



女騎士「…いいのか?その行為がこの村の皆を悲しませることになるかもしれないんだぞ?」

剣士「…みんなにはもう伝えてある。みんなも『もし魔物が攻めて来たら、村を捨てて逃げるから安心しろ』ってさ…」

女騎士「そうか…村の皆も大馬鹿者だな」

剣士「絶対にこの村を壊させたりしない…むしろ俺が魔王を倒しさえすれば、もう森の中で怯えながら暮らすこともなくなるはずだ!」

女騎士「その自信はどこから出てくるんだよ…」
6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 00:50:51 ID:CaRt8voQ

剣士「そういうことだから……こうしてお前とまた会えるようになるのは魔王を倒した後になる」

女騎士「……例えお前が死んでも、私の心の中でずっと生きているからな。安心して死んでいいぞ」

剣士「死ぬ前提で話をするな」

女騎士「冗談だ」

剣士「冗談でも言っていいことと悪いことがあるだろ」

女騎士「…おい、さっきのは冗談だから……冗談を本当にするんじゃないぞ」

剣士「……ああ、わかってる」

女騎士「…じゃあそろそろ私は王国に戻るよ」

剣士「ま、待ってくれ!」

女騎士「ん?」
7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 00:51:46 ID:CaRt8voQ

剣士「旅に出る前に…お前に伝えておきたいことがあるんだ」

女騎士「………」

剣士「女騎士…俺はずっとお前のことが……」

女騎士「………待て」

剣士「えっ?」

女騎士「それは帰ってきてから教えてくれ」

剣士「だ、だけど……」

女騎士「頼む…」

剣士「……わかった」



剣士が何を言おうとしていたのか私にはわかっていた

私も…同じ気持ちだったから…
8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 00:53:00 ID:CaRt8voQ

______________________________


剣士「はぁ…」トボトボ

剣士(結局俺の想いを伝えることが出来なかったなぁ…)

女騎士「おいおい、ここはもう魔物が現れる危険区域なんだぞ。ボーッとしてないでもっとシャキッとしろ」

剣士「うるせぇ………へ?」クルッ

女騎士「ん?どうかしたか?」

剣士「な…なななな、何でお前がここに居るんだ!?」

女騎士「何でって…私も一緒に行くからに決まってるだろ」

剣士「はあ!?だ、だってさっき王国に帰ったんじゃ…」

女騎士「荷物をまとめてきたんだ。旅に出るには準備が必要だし、ましてや私は女なんだから必要な物も多い」

剣士「はて?どこに女が居るんだ?」キョロキョロ

女騎士「切り刻まれたいのか?」チャキッ

剣士「すいませんでした。謝りますから喉元にある刃を離してください」
9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 00:53:56 ID:CaRt8voQ

女騎士「まったく…」

剣士「…騎士団には何て言って来たんだ?」

女騎士「深爪したので王国騎士団を辞めて村に帰ります、と」

剣士「理由が酷すぎる」

女騎士「それと軍資金と馬を一頭拝借してきたぞ」

剣士「盗んできたのか!?」

女騎士「いや、拝借だ」

剣士「そ、そうか…(帰ってくる頃には指名手配されてそうだな…)」

女騎士「そもそもお前は魔王城まで徒歩で行くつもりだったのか?」

剣士「そうだけど…」

女騎士「この大馬鹿野郎が。徒歩で行ける距離じゃないだろ」

剣士「そこら辺はほら、野良馬を仲間にすればいいかなって…」

女騎士「はぁ…野良馬なんて居るわけないだろ、まったく…やっぱり私がついてないと駄目みたいだな」
10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 00:55:22 ID:CaRt8voQ

剣士「…本当にいいのか?」

女騎士「ああ…お前だけに任せたら確実に村が滅びるからな」

剣士「へっ、言ってろ…」

女騎士「ほら、馬に乗れ」

剣士「おう」ヨイショ

女騎士「…さっきの別れの時の話だが…あれはやっぱり帰ってから聞くことにする」

剣士「……じゃあ尚更死ねないな」

女騎士「ああ…必ず生きて帰って伝えてくれよ」



こうして私と剣士の旅が始まった
11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 00:56:34 ID:CaRt8voQ

====================


私達が旅を出てから数週間が経ったある日、魔王城に向かう途中である村に寄っていた



剣士「酷い廃れ様だな…」

女騎士「ここは危険区域なんだから当たり前だ」



我々人間は魔物が現れる地域を危険区域と定めた

その区域内にある全ての村はこの村のように捨て去られる



剣士「ここにも昔は人が住んでたんだよな……」

女騎士「ああ……」
12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 00:57:45 ID:CaRt8voQ

それは珍しいことではなかった

もし仮に私達の村の近くに魔物が現れたら、すぐに危険区域とみなされ村を捨てて新たな隠れ場所を探すしかないのだ

それが人間に残された、生き残る唯一のすべだったのだ…



女騎士「まぁ、昔と言ってもそこまで大昔じゃないがな。この村が危険区域に指定されたのは5年ほど前だ。私も村人達の移動の護衛に当たってたから覚えている」

剣士「へぇ~王国騎士団はそんな仕事もしてるのか」

女騎士「ああ。王様が住む大国『王国』を護るのが本来の仕事だが、最近は王国付近に魔物が現れない為、移動の護衛が増えてきている」

剣士「つまり……魔物達は人間が多く住んでる王国付近には現れず、こういう辺境の地に頻繁に現れるようになったってわけか」

女騎士「そうなるな…」

剣士「でも何で魔物達は王国付近に現れなくなったんだ?」

女騎士「私に聞くな。人間に脅威を抱き始めたんじゃないのか?」

剣士(いや、それはありえない…もしそうだとしたら一気に叩くはずだ。なら何故なんだ…?)

女騎士「とりあえず空き家を物色して使えそうな物を集めるぞ」

剣士「ああ…」
13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 00:59:22 ID:CaRt8voQ

______________________________


女騎士「う~ん…さすがに食料は残ってないか」ガサゴソ



剣士「おーい!ちょっとこっちに来て、これを見てくれー」



女騎士「ん?何かあったのか?」スタスタ



剣士「これだ、これを見てくれ…」

女騎士「こ、これは…」



剣士はクローゼットの中を見ていた

そして、そこにあったのは…女物のパンツだった



女騎士「…死ね変態」チャキッ
14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:01:12 ID:CaRt8voQ

剣士「ま、待て!何か勘違いしてないか!?」

女騎士「勘違いなどしていない…お前がパンツを盗むという最低の行為をしているだけだろ?」

剣士「だからそれが勘違いだって言ってんだよ!いいから落ち着いて見てみろよ!」

女騎士「見ろって言っても…女物のパンツが畳んで置いてあるだけじゃないか」

剣士「ああ…その通りだ」

女騎士「…やっぱり殺す」チャキッ

剣士「だからやめろー!お前はおかしいと思わないのか!?ここは5年も使ってないのにそのパンツ達は埃を被っていない!」

女騎士「何?」

剣士「この女物のパンツと…それから別の部屋では子供用の服にも埃が被ってなかった」

女騎士「魔物の仕業じゃないのか?」

剣士「たしかに部屋の至る所に魔物が荒らした形跡もあるが…魔物がわざわざ荒らした服を畳むか?」

女騎士「……ありえないな」

剣士「だろ?」
15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:02:20 ID:CaRt8voQ

女騎士「じゃあ…つい最近、誰かがこの家を私達と同じように物色していたってことか?」

剣士「おそらくな。そして子供用の服とパンツを盗ってったんだろう…」

女騎士「子供用の服と女物のパンツ…女の子がここ(危険区域)に居たとは考え辛いが…」

剣士「いや…盗まれた子供用の服は男物だ。だからそいつはきっと男の子だ」

女騎士「はあ?じゃあ何で女物のパンツも盗まれてんだよ」

剣士「そりゃ……夜のオカズに―「やっぱり死にたいのか?」

剣士「だ、だってそうとしか考えられないし……ッ!!」

女騎士「ん?どうかしたか?」


ガシッ


女騎士「ちょっ!?」


バタンッ



剣士はいきなり私の腕を引っ張り、そのまま一緒にクローゼットの中に入った
16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:03:27 ID:CaRt8voQ

女騎士「お、お前!何をして…むぐっ!」

剣士(シーッ!静かにしろ!聞こえないのか!?魔物が家に入ってきたんだ!)ヒソヒソ

女騎士(何!?)



ギシ…ギシ…



クローゼットの隙間から部屋を覗くとそこには2匹の魔物が居た



女騎士(ゴブリンか…こいつらは一匹一匹は大した実力じゃないが、行動する際には必ず10匹以上からなる小隊を組む。ここはあいつらが行くのを待つしかないか…)

女騎士(それにしても…よくこいつは気づいたな。村の見張りを一人でしていたらしいから聴覚が発達してるのか?…ん?)



私はここであることに気がついた

剣士の腕の中に包まれているということに…



女騎士(なっ!?だ、抱かれてる!?///)
17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:05:35 ID:CaRt8voQ

女騎士(緊急事態だったからしょうがないのはわかってるが…さすがにこれは近いすぎるだろ!///す、少しでいいから離れないと…)ゴソゴソ

剣士(バ、馬鹿!動くなよ!気づかれるだろ!)ヒソヒソ

女騎士(そ…そんなこと言われてもだな…///)

剣士(あいつら何か話をしてるぞ…)



剣士の言うとおり、クローゼットの外で2匹のゴブリンは何か話をしていた



「武器を調達して来いって言われても、ここら一帯はもう既に回収しちまってるから無いだろ」

「まあな。だが作らされてる奴らよりはマシだろ?」

「そりゃそうだが…」



剣士(武器の回収?まさかこいつら…王国へ攻め込むつもりか!?)

女騎士(外の会話がまったく入ってこない!そもそも私の心臓の音がうるさすぎて聞こえない!)ドキドキ
18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:06:56 ID:CaRt8voQ

「武器が欲しけりゃ人間がいっぱい居る王国に行けばいいんじゃねーのか?」

「たしかに王国を潰せば武器もたくさん手に入るだろうが…今はそれに割く兵力すら勿体無いって側近様が言ってたろ。話を聞いてろよバカヤロウ」

「そだっけ?」

「何の為に魔王様に逆らった人間の生まれ故郷を崩壊させるって噂を流したと思ってんだよ」

「…何の為なんだ?」

「人間に盾を突かせない為だろうが!!今の話の流れでわかるだろう!!」

「いや全然」

「はぁ…お前って本当にバカだな。いいか?人間共もお前と同じくらいバカだから、勝てないとわかっていても魔王様に盾突くんだよ。今はそれを追い払うのに力を使いたくないから嘘の噂を流してるってわけだ。わかったか?」

「……人間がバカってのはわかった」

「お前はもう考えるな。黙って側近様と隊長の指示に従え」



剣士(どういうことだ?あの噂は嘘で、あいつらは俺ら人間をまったく相手にしていないのか…?)
19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:08:14 ID:CaRt8voQ

剣士(…女騎士はどう思う?)ヒソヒソ

女騎士(剣士のニオイ…やっぱり落ち着くな///…私のニオイは臭くないかな?)ドキドキ

剣士(まったく聞いてないし…)

剣士(それに何かいつもと様子が違うな。なんというか…顔が赤くて色っぽい………って今思えば俺、こいつを抱き寄せてるじゃん!?///)

女騎士(それにしても…私はこんなに動揺してるのに、こいつはまったく動揺してないのが気に食わないな…)チラ

剣士(とっさの判断だったとはいえ…やり過ぎだろ、俺///…もしかして女騎士は俺と密着してるから緊張してたのか…?)チラ

剣士・女騎士(あっ…)



目と目が合う

私は剣士と目を合わせることがとても恥ずかしかった

だが目を逸らそうとはしない

剣士も逸らさなかった

瞬きする時間すらも惜しく感じた
20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:09:19 ID:CaRt8voQ

そんな時、家の外から「そろそろ帰還するぞー」という声が聞こえ、部屋に居た2匹のゴブリンは外に出た



女騎士「……行ったみたいだぞ」

剣士「……そうだな」



ゴブリン達が出てった後も私達はまだクローゼットの中で抱き合っていた



剣士「……出ないのか?」

女騎士「お前が私を離さないんだろ…」

剣士「…そうだったな」



喋る度にお互いの息が掛かる

そして自然と顔が近づいていった

10cm、5cm…まるで吸い込まれるようにお互いの唇は近づいていく

そして…あと1cmで唇が触れ合うとこまで近づいた
21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:10:05 ID:CaRt8voQ

しかし……それを邪魔する者が現れた



少年?「………」ジー


剣士・女騎士「……へ?」



私達のキスを邪魔をしたのは小さな少年だった



少年?「…あれ?キスしないの?」



少年のその一言が私達を現実に引きずり戻した



女騎士「す…するわけないだろ!」ドンッ!

剣士「痛っ!こんな狭いとこで押すなよ!頭打っちまっただろ!」ヒリヒリ

女騎士「フンッ!///」プイッ
22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:11:17 ID:CaRt8voQ

少年?「まだ大きな音は出さない方がいいよ。ゴブリン達に聞かれたらマズイし」

剣士「そうだな、ありがとう……で、君はどうしてここに居るんだ?」

少年?「僕?ちょっとだけ寄り道してただけだよー」

女騎士「寄り道って…この辺は全て危険区域に指定されている…一体どこに向かっていたんだ?そもそもどうやってこの危険区域に足を踏み入れたんだ?」

少年?「さっきから質問が多いなぁ…じゃあ逆に聞くけどお兄ちゃん達はどうしてここに居るの?」

剣士「俺達も寄り道してるのさ」

少年?「……もしかして魔王城に行くの?」

剣士「ああそうだ。俺達はこれから魔王を倒しに行くんだ」

少年?「…ぷっ……アハハハハハハハハ!!」



少年はいきなり大声で笑い始めた



女騎士「…何だこいつは?」

剣士「さあ…?」
23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:11:54 ID:CaRt8voQ

少年?「あははは……ふぅ」

剣士「おっ、終わったk―「ギャハハハハハハハハ!!」

女騎士「いい加減にしろ!!」

少年?「ごめんごめん。あまりにも可笑しなこと言うからさ」ハハハ

剣士「…魔王を倒しに行くことがそんなに可笑しいことなのか?俺はそうは思わない…むしろ逃げ隠れ、怯えながらしか生きること出来ない今の俺達(人間)の現状の方が可笑しいと思うぞ」

少年?「……ふ~ん、まだこんな人間も残ってたんだね」

剣士「どういう意味だ?」

少年?「ううん、気にしないで。それよりさっきは笑ってごめんね。でも別にお兄ちゃん達を馬鹿にして笑ったわけじゃないんだよ。実は…」

剣士「実は…?」



少年?「……………」

剣士「……………」



女騎士「………何か言えよ!剣士もどうして黙っているんだ!?」
24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:13:33 ID:CaRt8voQ

剣士「いや…窓の外を見てみろよ…」

女騎士「ん?」クルッ



窓の外に目をやるとそこには……深緑色の気持ち悪い顔がこちらを覗いていた



ゴブリン達「………」ジーー

女騎士「……逃げるぞ!」ダッ

剣士「おう!」ヒョイ

少年「あっ、ちょっと!!」

ゴブリン達「逃がすかー!!」ダッ



私と剣士は少年を連れて急いで二階へと移動した
25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:14:40 ID:CaRt8voQ

少年?「ど、どうして二階に上がるの!?逃げるならまずは外に出ないと駄目じゃん!」

剣士「いいんだこのままで!」タタタタタタッ

女騎士「剣士…わかってるな?」タタタタタタッ

剣士「ああ!この子は任せろ!」

女騎士「頼んだぞ…!」クルッ

少年?「えっ?」



私は二人と別れてその場に残った



少年?「あ、あの人を置いてっちゃっていいの!?」

剣士「ああ…廊下なら囲まれる心配も無いし、1対1なら女騎士に勝てるわけないからな」

少年?「まさか…1対1に持ち込む為にワザと二階に?」

剣士「そうだ。あいつらは下から上がってくるしか無くなるし、上から来ようとしても俺がそれを防ぐってわけさ。さすがに十数匹のゴブリンに囲まれたら俺達二人でも君を守りながら戦うのは難しいからな」

少年?「ふ~ん…」
26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:15:37 ID:CaRt8voQ

剣士「それより気になることがあるんだけど…この家の服を漁っていたのは君だよな?」

少年?「うん」

剣士「漁った物の中に女物のパンツがあったけど…それも君が盗んだのか?」

少年?「うん。子供用に可愛いのがあったら一番だったんだけどね」

剣士「えっと…何に使うつもりなんだ?」

少年?「えっ?後で採寸合わせて穿くに決まってるじゃん。パンツって穿く以外に使い道あるの?」

剣士「な、無いことも無いけど……てか穿くのか!?」

少年?「駄目なの?」

剣士「駄目とかそういうことじゃなくて、どうして女物のパンツなんて穿くんだ?」

少年?「だって僕、女の子だもん」

剣士「えっ?………ええェェ!?」
27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:17:06 ID:CaRt8voQ

______________________________


女騎士「フンッ!」


ズバッ


ゴブリン「ぐああああああ!!」



そんな暢気な二人と打って変わって、私は必死にゴブリン達を蹴散らしていた



女騎士(さっき上から剣士の叫び声が聞こえたんだが…大丈夫なのか?)


ゴブリン「くっ…人間のくせに強い!た…隊長、どうします?」

隊長「これ以上無駄に兵を失うわけにはいかない…『オーガ』を連れてこい」

ゴブリン「し、しかしあいつは!?」

隊長「いいから連れてこい!」

ゴブリン「わ、わかりました…」タタタタタタッ
28: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:19:33 ID:CaRt8voQ

______________________________


少年?「ほらお兄ちゃん、二階の窓から入ってこようとしてるよ!」

剣士「させるかー!」


グサッ


ゴブリン「ぐあああー!」ヒュゥゥゥ…


少年?「アハハハ!顔だけじゃなくて落ちる姿も面白かったね!」

剣士「お願いだからもう少し緊張感持ってくれ…」


ズシィン ズシィン


剣士「な、なんだ!?」

少年?「お兄ちゃん!窓の外を見てよ!」



地鳴りのような大きな足音が聞こえてきた
29: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:20:14 ID:CaRt8voQ

廊下に居た私はその音が何なのか確認することが出来なかったが、剣士は二階の窓からその音の主とご対面をしていた



剣士「な…何なんだあの怪物は!?」



体長は推定5m弱、屈強な肉体、ツギハギだらけの顔、手には大きな棍棒

そこには想像を絶する怪物がいた



少年?「…あれは魔王が創り出したオーガって魔物だよ。力はかなり強いけど知能が低いから敵味方の区別も出来ずに襲っちゃうんだ。気をつけた方がいいよ」

剣士「…何でそんなことを君は知っているんだ?」
30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:20:59 ID:CaRt8voQ

少年?「そんなことより来るよ!」

剣士「えっ?」



オーガ「ウガアアア!!」ブンッ


ドオオォォン!



醜きオーガは力一杯棍棒を振り落とした

私達が居た家は激しい音と共に崩れ去った



ドサッ


剣士「イテテテ…吹き飛ばされちまった…一体何が起きたんだ?」

少年?「お兄ちゃん、家が壊れちゃったよ」

剣士「何!?な、中にまだ女騎士が居るんだぞ!お、女騎士!!」ダッ

少年?「あっ、待ってよー!」タタタタタッ
31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:22:09 ID:CaRt8voQ

剣士「女騎士ィー!どこだぁー!?」ガラガラ



剣士は瓦礫を掻き分けながら必死に私を探していた



女騎士「剣士…」



辛うじて逃げる事ができ、影でそれを見ていた私はたまらなく嬉しかった



剣士「…ん?この下から女騎士の声が聞こえる!待ってろ女騎士!今助けてやるからな!」


女騎士「…はあ?」


剣士「おっ!手が見えてきたぞ!深緑色したゴツゴツした手…間違いなく女騎士の手だ!」


女騎士「」イラッ
32: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:22:47 ID:CaRt8voQ

その手はもちろん私のモノじゃない、ゴブリンの手だ



女騎士「…いい加減にしろ」ドカッ

剣士「ぎゃふん!」

女騎士「恥ずかしいところを見られたからってボケで誤魔化すな」

剣士「べ、別にそうわけじゃないし…///」

女騎士「まったく…そういうとこは昔から変わらないな」ハァ

少年?「お兄ちゃん達、夫婦漫才してる場合じゃないよ」

女騎士「夫婦じゃない!」

剣士「おい…あいつ、周りの家を破壊しながらゴブリン達を殺してるぞ」

女騎士「それは嬉しい事だが…手放しでは喜べんな」
33: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:23:52 ID:CaRt8voQ

少年?「…これからどうするの?ゴブリンが死んじゃったからあいつを止める者が居なくなっちゃったし…」

女騎士「私達が居るだろ?」

少年?「えっ?」

剣士「まぁ、魔王を倒そうとしてる奴があんな魔物も倒せないなんて笑い種だしな」

女騎士「私達があいつを森の中に連れ込むから、お前はその隙に逃げろ」

剣士「本当は安全区域まで送ってやりたかったけど…ごめんな」

少年?「………」

剣士「女騎士、あいつの大きさから見て剣のみで戦うのは不利だ。弓を取ってきてくれ」

女騎士「わかった…それまで時間稼ぎ頼んだぞ」

剣士「おう!俺だけじゃ絶対に勝てないから早くしろよ!」ダッ

女騎士「まったく…頼りになるのか情けないのか、どっちなんだよ」ダッ


タタタタタタ…


少年?「……ここまで馬鹿な人間は初めてだよ」クスッ
34: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:24:53 ID:CaRt8voQ

______________________________


剣士「やーい!やーい!こっちに来やがれデカブツ!お前の攻撃なんてヘナチョコなんだよ!」

オーガ「ガアアア!!」ズンッ ズンッ

剣士「やべっ!」ダッ

オーガ「ウガア!」ブンッ

剣士「うひょっ!?」ササッ


ズドォォォン



剣士は死に物狂いで攻撃を避け、すぐに森の木々の影に隠れた



剣士(一発の威力がデカ過ぎだろ!女騎士はまだなのか?)
35: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:26:06 ID:CaRt8voQ

ザッ


女騎士「まったく、見っとも無いな…」

剣士「やっと来たか!」

女騎士「さて、上手く森の中に誘導することは出来たみたいだが…ここからどうやってあいつを倒すか…」

剣士「…俺がメインで行く。フォロー頼むぞ!」ダッ

女騎士「ばっ!?作戦も決めずに行くんじゃない!………はぁ、あいつは本当に馬鹿だな」


剣士「うおおおお!!」タタタタタタッ



剣士はオーガに向かって一直線に走った



オーガ「ウガア!」ブンッ



当然の如く、オーガは棍棒を振りかざす
36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:26:44 ID:CaRt8voQ

ヒュン…
     グサッ グサッ


オーガ「ギャアアア!!」


女騎士「…よし」



私はオーガの両目を射抜いた

視界を失った為、剣士への攻撃は外れ…



剣士「もらったぁー!」ダンッ


ズバッ



その隙に木々を蹴って高く跳んだ剣士がオーガの喉元を切り裂いた
37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:28:21 ID:CaRt8voQ

ズシィィン



首を半分ほど切られたオーガはその場に倒れこんだ

剣士はああ見えても馬鹿じゃない

戦闘で如何にすれば勝てるのか瞬時に判断することが出来る頭脳を持っている

これほど心強い仲間は他には居ないのだが…



スタッ


剣士「ナイスアシスト!」グッ



残念ながら戦闘以外では大馬鹿者なのだ
38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:29:07 ID:CaRt8voQ

着地した剣士は私の方に振り返り、満面の笑みでサムズアップをしてきた

私は剣士の馬鹿さ加減と能天気さにイラつき…


ヒュン…
スパッ


剣士「…へ?」



矢を放ってやった



剣士「ほ、頬が切れたぞ!?」



女騎士「チッ…外したか」



剣士「おい!!」
39: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:29:44 ID:CaRt8voQ

女騎士「ッ!?」グググググ…



私は再び弓を引いた



剣士「ちょっ!?そこまでするか!?」



女騎士「違う!後ろだ!まだ死んでないぞ!」



剣士「何!?」クルッ

オーガ「ガ…ウ…」



目を潰され、喉を切り裂かれて頭が取れかかっている

しかし、オーガはまだ生きていた
40: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:31:04 ID:CaRt8voQ

女騎士「くっ…!」パシュン!


グサッ



心臓を狙って放った私の矢は偶然か狙ったのか、オーガの振りかざした腕に刺さってしまった

頭が取れかかっても動けるオーガにとって私の攻撃は、蚊に刺されたぐらいの感覚だったろう



オーガ「ウガ……ア!」ブンッ

剣士(駄目だ!この攻撃は避けられない!なら…剣でうまく受け流してやる!)バッ



あの馬鹿はなんと、自分より大きな棍棒を剣で受け止めようとしだした



女騎士「け、剣士ィーー!!」


ズドオオォォン!
41: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:31:45 ID:CaRt8voQ

まるで大砲を放ったような爆音が鳴り響く

それだけ力を込めた一撃だったのだ

その攻撃を受けたら剣士の体は木っ端微塵に吹き飛ぶはずだ

しかし……剣士はピンピンしていた

何故ならその攻撃は光の壁によって防がれていたからだ



剣士「な…何だこれは…?」

女騎士「け、剣士!大丈夫なのか!?」タタタタタッ


スタッ


少年?「まったく…あれぐらいでオーガが死ぬはずないでしょ。しかも剣で受け止めようとするし…ホントお兄ちゃんって馬鹿だね」クスッ

女騎士「お、お前!どうしてここに居るんだ!?」

少年?「どうしてって言われても……気まぐれかな?本当は助けるつもりはなかったんだけどね…自然と体が動いちゃったんだ」
42: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:32:51 ID:CaRt8voQ

剣士「助けたって…この壁は君が作り出したのか!?」

少年?「うん」


オーガ「ガ……」


少年?「あっ、忘れてた。君には何の恨みも無いけど…ごめんね」ス…


カッ!


剣士「うっ、眩しい…」



少年が手をかざすと溢れんばかりの光がオーガを包み込んだ



オーガ「ウガ……ァ…」シュウゥゥゥ…



そしてオーガは完全に消滅した
43: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:33:54 ID:CaRt8voQ

少年?「…終わったよ」

剣士「す、凄い…」

女騎士「お前…魔法使いだったのか」

少年?(…そういうことにしておこうかな)

少年?(以下魔女)「…うん!実は僕は魔女なんだ!」

女騎士「………ん?魔女?」

剣士「そうだったのか…助けてくれてありがとな、魔女」

魔女「お安い御用だよー」

女騎士「おい待て。お前今…魔女って言ったのか?」

魔女「そうだけど…何か駄目だった?」

女騎士「………女!?」
44: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:34:28 ID:CaRt8voQ

剣士「あっ、そういや言ってなかったな。この子は女の子だぞ」

女騎士「し…信じられん…」

魔女「なら確かめてみる?」ヌギヌギ

女騎士「待て!信じるから服を脱ごうとするな!」

剣士「チッ」

女騎士「おい、今の舌打ちは何だ?この変態ロリコンが」ギロッ

魔女「お兄ちゃんはロリコンじゃないよ。ただ年上好きなだけだよー」

剣士「いや、別にロリコンでも年上好きでも無いけど………って年上!?君何歳なの!?」

魔女「歳は100歳を超えたあたりから数えてないから忘れちゃった!」テヘ



次から次へと衝撃的な事実が判明していった



女騎士「…なんか頭が痛くなってきた」

剣士「…俺もだ」
45: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:35:35 ID:CaRt8voQ

魔女「それよりお兄ちゃん達はホントに魔王を倒しにいくの?」

剣士「ああそうだ」

魔女「オーガにすら勝てなかったのに?ハッキリ言って自殺しに行くようなものだよ」

女騎士「あー…いくら言っても無駄だぞ。この馬鹿は一度決めたら曲げないんだ…馬鹿だからな」

剣士「前から言おうと思ってたが、さすがに馬鹿を連呼しすぎだろ」

女騎士「あんな怪物に後方支援を信じきって突っ込む奴は馬鹿以外何者でも無いだろ」

剣士「あ、あれはお前だから俺も安心してだな…」

女騎士「そう言えば許してもらえると思うな、馬鹿。今度同じようなマネしたら支援してやらないからな、馬鹿」

剣士「ぐぬっ」
46: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:36:25 ID:CaRt8voQ

魔女「ふふ……アハハハハ!ホントお兄ちゃん達は面白いね!」

女騎士「それよりお前は寄り道をしてたと言っていたが、村に帰るとこだったのか?」

魔女「…ううん。僕はまだ故郷に帰るつもりないんだ…」

剣士「じゃあどうしてこんなとこに居るんだ?」

魔女「実は……自由気ままに旅をしながらある情報を集めてたんだ」

剣士「ある情報?」

魔女「うん…魔王の情報をね」

剣士「えっ!?」

女騎士「なるほど…お前も魔王を倒そうとしているのか」



危険区域に居ること、オーガを倒した強力な魔法…その全てに合点がいった

だが同時に、「実はその逆なのでは?」という考えにも至った
47: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:38:40 ID:CaRt8voQ

剣士「だからオーガのことも知ってたのか…」

魔女「ねえ、行き先が同じことだしさ…僕もお兄ちゃん達と一緒に行っていい?」

女騎士「…馬鹿を言うな。お前みたいな子供を連れていけるわけn………子供じゃなかったな」

剣士「…ああ、いいぞ」

魔女「やったぁー!」

女騎士「…ちょっと待て、一旦それは保留だ。剣士、少しこっち来い」グイッ

剣士「お、おい何だよ…?」スタスタ

魔女「…早くしてねー」フリフリ




女騎士「そんなに簡単にあいつを信じていいのか?」

剣士「ああ、俺を助けてくれたし大丈夫だろ」

女騎士「だがさっきの魔法といい、危険区域を自由に行き来してることといい、あいつには不審な点が多い」

剣士「性別と年齢が一番不審だけどな」

女騎士「そ、そうだが…」
48: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:39:37 ID:CaRt8voQ

剣士「大丈夫だって。それともお前にはあいつが魔王の手先に見えるのか?」

女騎士「…見えない」

剣士「ならそれでいいだろ。ほら、もう行くぞ」スタスタ



たしかにその仮定を決定付ける証拠は無い

だが…その仮定を否定する根拠も無かった



魔女「あっ、話し合い終わったの?」

剣士「ああ。満場一致で君を仲間にすることに決まったよ」

魔女「ホント?お姉ちゃんはそんな風には見えないけど…」

女騎士「……そんなことは無い。私も頼もしい仲間が増えて嬉しいさ」
49: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:40:43 ID:CaRt8voQ

魔女「……あっ、そっか!僕が仲間に入って二人きりじゃなくなっちゃうのが嫌なのか!ごめんね邪魔しちゃって」

女騎士「いや、むしろ邪魔してくれて感謝してる。二人きりだと何をされるかわかったもんじゃないからな」

剣士「お前は俺を何だと思ってんだよ…」

女騎士「獣」

剣士「ひでぇな!」

魔女「アハハハ!たしかにさっきもキスしようとしてたしね!」

剣士・女騎士「あっ」

魔女「…?どうかしたの?」

女騎士「い、いや何でもない…は、早く先を進もう!」アセアセ

剣士「そ、そうだな!」アセアセ
50: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 01:42:05 ID:CaRt8voQ

魔女「……もしかして忘れてたの?」

剣士・女騎士「」ギクッ



まさに図星だった



女騎士「な…何のことだ?わ、私達は別に何もしてなかったよな?」

剣士「そ、そうだとも!」

魔女「そもそも付き合ってると思ってたんだけど……ま、二人がそう思いたいのならそれでいいけどさ。ほら、お姉ちゃんの言うとおり早く行こうよ」スタスタ

女騎士「………この件はお互いに忘れよう。いいな?」

剣士「お、おう…」



しかしすぐに忘れられるわけもなく、数日間はお互い変に意識して過ごすこととなった
55: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:30:35 ID:CaRt8voQ

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少年改め魔女が仲間になってから数週間が経った

魔女の情報網は予想以上のもので、私達は魔物達にほとんど見つからずに進むことが出来た

そしてついに魔王城が見える山まで到達した



剣士「あそこに魔王が…」ブルッ

女騎士「…どうした?怖気づいたのか?」

剣士「いや…武者震いってヤツさ。よぉーし…魔王!絶対にお前を倒してこの世を平和にしてやるからな!そこで待ってろよぉ!!」

女騎士「ば、馬鹿!!そんな大声出したら見張りに気づかれるだろ!!」
56: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:31:55 ID:CaRt8voQ

魔女「大丈夫だよ。この山には誰も居ないはずだから」

女騎士「どうしてだ?ここは魔王城の鼻の先だ。いくらなんでも見張り無しなんてありえないだろ」

魔女「…見てごらん。この山の木々はほとんど伐採されちゃってるでしょ?これは魔物達の仕業なんだよ」

女騎士「何故魔物達はそんなことをするんだ?」

剣士「……あいつらは武器を製造しているんだろ?」

魔女「その通りだよ。木々だけじゃなくこの山のあらゆる資源はもう取り尽されちゃってるんだ。だから今は見張りも置かずに、別の山の採掘に行ってるんだよ」

女騎士「なるほど……たしか魔王は人間なんかを相手にしてないで、今は黙々と兵力の強化をしているって話だったな」

剣士「ああ、ゴブリン達の話だとそういうことらしい。ここで問題なのは…その戦争の相手だ」

女騎士「魔王は私達人間ではなく、一体誰と戦争をするつもりなんだ?」

剣士「わからない…魔女は何か知らないか?」
57: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:34:12 ID:CaRt8voQ

魔女「……今からちょっとだけ作り話をするね」

女騎士「突然どうした?」

魔女「いいから聞いててよ……『地上』と言われる人間達が住むこの世界の上にはもう一つ、別の世界があると言われているんだ。その世界の名は『天界』。そこには神々が住んでいるんだよ」

魔女「地上を創ったとされる神々はとても優しい方達ばかりだった。その為天界は争い事とは無縁の素晴らしい場所だったんだ…」

魔女「…でも、全ての事象には『光』と『影』のように相反するものがあるんだ。光しか無いとされていた天界にも一つだけ…いや、一人だけ『影』なる存在が居た…」

剣士「………」

魔女「その『影』は自分達で創った地上が人間に支配されてしまっていることがどうしても許すことが出来なかった。そしてその『影』は他の神々の説得に耳を傾けようとせず、ついには地上へと降り立ち人間を滅ぼそうとした」

女騎士「それって…まさか…」

魔女「神である『影』の力は強大で、人間達を恐怖のどん底へと陥れた。そして『影』は『人間を滅ぼし世界をもう一度一から創り直す』という当初の目的を忘れ、この地上を人間に代わって支配しようとし始めたんだ……」

剣士「その『影』が…魔王ってわけか」
58: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:35:01 ID:CaRt8voQ

魔女「…何を言ってるの?これは作り話だよ。だから…信じないでね」ニコ

女騎士「………」

剣士「……わかった」

魔女「…じゃあさっそく、すぐそこにある魔王城に突入だぁー!…の前に、実はもう一つとっておきの情報があるんだよ!特にお姉ちゃんは喜ぶかもよ~」

女騎士「私が喜ぶ?…この山に牛が居るとかか?」

剣士「お前牛肉好きだもんな」

魔女「残念ながらお肉じゃないよ。今から教えるから僕について来て!」タタタタタタッ
59: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:36:17 ID:CaRt8voQ

女騎士「なあ、さっきの話…お前はどう思う?」

剣士「…おそらく真実だ。そして…あいつはそれを俺達に伝えてはいけない立場にある。だから信じないでくれって言ったんだろう…」

女騎士「…なら信じないようにしなくちゃな」

剣士「ああ…俺達の勝手な妄想で終わらせないと…」



魔王の戦争相手は天界に居る神々、そして魔女の正体……

私達はそれらを妄想として心の奥へと仕舞いこんだ



女騎士「…魔女を見失う前に俺達も行こう」

剣士「…そうだな」
60: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:38:33 ID:CaRt8voQ
前レス訂正

剣士「…魔女を見失う前に俺達も行こう」

女騎士「…そうだな」


剣士と女騎士が逆になってました、すいません
61: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:39:34 ID:CaRt8voQ


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魔女「あっ、二人とも遅いよ~!」

剣士「ごめんごめん」

女騎士「それにしても…これは驚いたな。まさかこの山に温泉が湧いてるとは…」

魔女「でしょー?この辺りの山々は全て活火山で、温泉がたくさん湧き出てるんだ。他の山の温泉は熱過ぎて入れないけど、ここだけはまさにベストのお湯加減なんだよ!」

剣士「魔物達は温泉の良さがわからなかったみたいだな」

魔女「じゃあさっそく入っちゃおー!」スポーン!

剣士「脱ぐのはやっ!」


ザバァン!


魔女「あ~極楽極楽ぅ~♪」プカプカ
62: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:41:46 ID:CaRt8voQ

剣士「よし、俺も入るかな!」ヌギヌギ

女騎士「待て。魔女が入ったってことは今この温泉は女湯ってことだ…意味はわかるよな?」

剣士「で…でも魔女は男の娘だし、体は子供だからギリギリセーフじゃ…」

女騎士「アウトだ」

剣士「…荷物番してます」シュン




チャプ


女騎士「ふぅ……これは最高だな」

魔女「でしょ?」プカプカ
63: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:43:14 ID:CaRt8voQ

女騎士「……なぁ、魔女」

魔女「なぁに?」バシャバシャ

女騎士「泳ぐのやめて私の話を聞いてくれ」

魔女「うん」

女騎士「お前に言いたいことがある…すまなかった」

魔女「えっ?ここはありがとうじゃないの?」

女騎士「温泉を教えてくれたことにじゃない。私は出会った当初、お前のことを…魔王の手先だと疑っていた」

魔女「………」

女騎士「もちろん今はそんなこと思ってないが…疑っていたことをずっと謝りたいと思ってたんだ。本当にすまなかった…」

魔女「…自分で言うのもあれだけど、あの状況で僕みたいな不審な奴が現れたら疑うのが普通だよ。疑ってなかったお兄ちゃんの方がおかしいって」

女騎士「それは私も同感だ」
64: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:44:24 ID:CaRt8voQ

魔女「それにわざわざ謝ることじゃないのに……やっぱお姉ちゃんもお兄ちゃんに劣らず馬鹿だね」クスッ

女騎士「あの馬鹿と一緒にするな」

魔女「……二人とも薄々わかってるんでしょ?僕が普通じゃないってことを…」

女騎士「…ああ。でも私達はお前の仲間だ。例えお前が人間じゃなくてもそれは変わらない」

魔女「……僕、お姉ちゃん達に会えて本当に良かった。ありがとね」ニコ

女騎士「私もお前に会えて良かったよ」

魔女「ふふふ……あー僕何だかのぼせちゃったみたい。そろそろ出るね」ザバァ

女騎士「もうか?じゃあちょっと早い気もするが私も出るとするか」

魔女「お姉ちゃんはもう少し入ってなよ。この温泉はお肌に良いんだから」

女騎士「ほ、本当か!?」
65: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:45:29 ID:CaRt8voQ

魔女「お姉ちゃんの肌って結構ガサガサだもんね」

女騎士「鍛錬してるとどうしてもこうなってしまうんだ…」ズーン

魔女「フッフッフ…僕は頻繁にこの温泉に入りに来てたからお肌がツルツルなんだよ!」ドヤッ

女騎士「なっ!?う、羨ましい…!」

魔女「だからもう少し入ってなよ」

女騎士「…そうするかな」

魔女「…これでお兄ちゃんのハートも鷲掴みだね!」ニヤニヤ

女騎士「う、うるさい!///」

魔女(ま、とっくに鷲掴みされてるけど…お互いにね)フフフ
66: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:46:44 ID:CaRt8voQ

女騎士「ふぅ…そろそろ私も出るかな……いや、もう少しだけ浸かってるか」チャプ

女騎士(…私も一応女だ。少しでも綺麗でいたいと思うことはおかしいことではない)

女騎士「………私が綺麗になれば、剣士も少しは喜んでくれるだろうか?」


タタタタタタッ


女騎士「ん?」


「いやっほぉーー!」



私がそんなことを思いながら浸かっていると、後方から聞きなれた奇声が聞こえてきた



女騎士「…嫌な予感」


ピョン
      ザバァン!


その予感は的中した
67: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:47:44 ID:CaRt8voQ

剣士「はぁあ~!マジで最高だなぁ~!…ん?」チラッ

女騎士「………」

剣士「…あ、あれ?な、何で女騎士がここに!?もう出たんじゃないのか!?」

女騎士「はぁ…魔女の仕業か」

剣士「こ、これは決して覗きじゃないぞ!」アタフタ

女騎士「わかってるからまずは下を隠せ」

剣士「わ、悪い!///」バッ

剣士「そ、その…本当にごめん」

女騎士「だから謝るな。お前に非が無いのはわかってる」

剣士「じゃ、じゃあ…!」

女騎士「だが…私の裸を見たのは事実だ。安心しろ…記憶は消してやるから」ポキポキ

剣士「そ、そんなぁ!?」
68: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:48:37 ID:CaRt8voQ

______________________________


魔女「…あれ?もう出てきたの?気を利かせて二人きりにしたあげたのに…」

女騎士「余計なことをするな!」ポカッ

魔女「イテっ!」

女騎士「まったく…もうこんなことするんじゃないぞ」

剣士「…俺の身が持たないからな」ボロボロ

女騎士(それにしても…剣士は私の体を見てどう思ったんだ?///)チラッ

剣士(それにしても…女騎士の体は綺麗だったなぁ///)チラッ

女騎士・剣士「!?///」ドキッ

女騎士「い、いやらしい目で見やがって…どうやら記憶は消えてなかったみたいだな…(ちょっとだけ嬉しいけど///)」ポキポキ

剣士「いや待て!今のはその…そう!意外と着痩せするタイプなんだなぁ~って思ってただけで、いやらしい目では決して見てないぞ!」アセアセ

女騎士「」プツンッ

魔女「お兄ちゃん…それ、地雷だよ」
69: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:49:44 ID:CaRt8voQ

剣士「えっ?」

女騎士「死ね!」

剣士「ぎゃあああああ!!」


バキッ ボゴッ 



いつも通りの微笑ましいやり取り

…このやり取りもこれが最後だった



剣士「じゃ、じゃあ疲れが取れたみたいだし(俺だけ取れてないけど)…そろそろ出発するぞ」ボロボロ

剣士「……魔王城にな」
70: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:50:48 ID:CaRt8voQ

====================


【魔王城】


魔女「二人とも、こっちだよ」



私達は魔女がいざという時に用意していたという隠し通路を使って、魔王城に難なく潜入した



女騎士「こうもすんなり入れるとは…」

魔女「油断しちゃ駄目だよ。僕が知ってるのは魔王城に侵入する為のルートだけ。ここから先は僕も知らないんだ…魔王が居る部屋もね」

剣士「おい!誰かこっちに来るぞ!隠れろ!」



私達はすぐに物陰に隠れた
71: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:51:51 ID:CaRt8voQ

スタスタスタ


「………」



1体の魔物が私達の横を通り過ぎていく

その魔物を一目見ただけで、あきらかにゴブリン達と比べて階級が上だとわかった

それほどの威圧を感じた



女騎士(あいつは危険すぎる…出来るなら魔王と戦うまで体力を温存しておきたいから、あいつとは戦わない方がいいな)


タタタタタッ


「そ、側近様!」

側近「…なんだ?」



剣士(あいつが魔王の側近か…)
72: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:53:11 ID:CaRt8voQ

「製鉄所で働く者達が不満を言い始めているんですが…」

側近「…そんなことを私に一々報告しに来るな。魔王様に盾突く者が居るのなら速やかに消せばいいだけだろ」

「は、はい!失礼しました!」タタタタタッ

側近「まったく…無能な部下の管理は疲れる。魔王様に頼んで今度はもっと優秀な部下を創ってくださるようお願いするか…」スタスタ




魔女「………」

剣士「どうかしたか?」

魔女「う、ううん。何でもない…それよりこれからどうする?あの側近の後をつける?」

剣士「…あいつの後をつけるのは得策じゃないな。きっとバレるはずだ」

女騎士「じゃあ別の奴を探すのか?」

剣士「ああ」

女騎士「だが普通の魔物達はおそらくあの側近から全て指示を得ているはずだ。別の奴の後をつけても魔王の居場所がわかるとは思えないが…」

剣士「…俺にいい考えがある」
73: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:54:01 ID:CaRt8voQ

______________________________


給仕係「おい!魔王様にお出しする料理なんだぞ!ドラゴンのエサじゃねぇんだからもっと丁寧に盛り付けろ!」

「は、はい!」




女騎士「…なるほど、給仕係の魔物についていけば魔王に辿り着けるな。もしかしたら隙もつけるかもしれないし」

魔女「お兄ちゃんやるじゃん」

剣士「ま、たまたますぐに給仕係の魔物と遭遇できたのはラッキーだけどな」




給仕係「…よし、それなら出せるな。じゃあ持ってくぞ」



女騎士(…出てくるみたいだな。こっからはバレないように極力会話は控えるぞ)ヒソヒソ

剣士(おう!)
74: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:55:00 ID:CaRt8voQ

ガラガラ



私達は気づかれないように料理を運ぶ魔物の後をつけた

階段をのぼり、しばらく移動すると給仕係はある部屋で足を止めた


コンコン


給仕係「魔王様、お食事をお持ちしました」


「……入れ」



低く重い声

その声を聞いただけで私達の緊張は一気に高まった
75: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:56:09 ID:CaRt8voQ

給仕係「失礼します」



給仕係が部屋の中へと入っていく

私達が隠れてる場所からは部屋の中の様子は見えなかった

しばらく待っていると給仕係が料理を並べ終え、部屋から出ていった



剣士「…いよいよだな」

女騎士「ああ…」

魔女「………」

剣士「じゃあ…入るぞ」



私達の作戦は至ってシンプルだった

部屋の中の様子を伺い、食事中であろう魔王の隙をついて首を切り落とす
76: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:58:08 ID:CaRt8voQ

しかし、その作戦は部屋に入る前に失敗に終わった



「…貴様らも入れ」



剣士・女騎士・魔女「!?」



ヤツは既に私達の存在に気づいていたのだ



女騎士「ど、どうする…?」

剣士「…入るしかないだろ」



剣士は静かにその扉を開いた



「ようこそ我が魔王城へ。この部屋まで辿り着いた者は貴様らが初めてだ。歓迎するぞ」
77: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 10:58:55 ID:CaRt8voQ

大きなテーブルの奥に座っている、威厳のある顔立ちの老人

片手にワインらしき物を持ちながら不敵な笑みを浮かべている

その者こそが魔物達を統べる絶対悪、魔王であった



魔王「どうだ?一緒に食事でもせんか?この肉は絶品だぞ」


魔女「………」

剣士「…断る」チャキッ

女騎士「右同じだ…」チャキッ



私達は覚悟を決め、剣を握った
78: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:00:34 ID:CaRt8voQ

魔王「フッ、無礼な者達だ…側近よ」


スタッ


側近「お呼びでしょうか、魔王様」

魔王「我は食事にする。少し遊んでやれ」

側近「はっ!」



女騎士「くっ…あいつも居たのか」

剣士「……二人とも、俺があいつの隙を作る」

女騎士「…出来るのか?」

剣士「ああ……行くぞ!」ダッ



側近「…人間ごときがよくも魔王様の食事を邪魔したな。万死に値する」
79: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:01:08 ID:CaRt8voQ

剣士「ていっ!」ブンッ


側近「そんな物投げても目隠しにもならんぞ」パシッ


ジュゥゥゥ…



剣士が投げた剣の鞘を側近が掴んだ瞬間、鞘が一瞬で溶けてしまった



剣士(あれがあいつの能力か…掴まれたら一貫の終わりだな)


側近「…それで距離をとってるつもりか?」シュン


剣士「なっ!?」


女騎士「剣士!後ろだぁー!」



側近は一瞬で剣士の後ろに周り、剣士を溶かそうとした
80: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:02:22 ID:CaRt8voQ

側近「終わりだ」スッ

剣士「くっ!」シュル


ジュゥゥゥ…


側近「さて…あと二人か」

剣士「ハアァ!」ブンッ

側近「何!?」


グサッ



剣士は剣を振りぬいたが、剣は側近の腕に刺さって止まった



側近「くっ…咄嗟に鎧の一部を脱いでいたか」ポタポタ…

剣士「腕を切り落とすつもりだったんだが……思った以上に硬いな」
81: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:03:17 ID:CaRt8voQ

側近「まさか私が人間程度に血を流すとは……許さん!」


ガシャンッ!


側近「ん?」


女騎士「………」タタタタタタッ


側近「しまった!?」



私は二人が戦ってる隙に魔王に切り掛かった



女騎士「くらえ!」チャキッ

魔王「テーブルの上を走るとは…マナーがなっておらんぞ」モグモグ
82: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:04:06 ID:CaRt8voQ

シュン


側近「させるかァ!」バキッ


女騎士「ぐっ!」ズザァァァ



私はすぐに蹴り飛ばされてしまった


魔王「…随分と手古摺っているようだな」ゴクゴク

側近「も、申し訳ありません魔王様!!すぐに消し去って…―」


ザッ


魔女「………消えるのは君だよ」スッ



しかし、私も側近の隙を作るおとりだったのだ
83: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:05:08 ID:CaRt8voQ

カッ!


魔王「!?」


側近「な…何なんだこの光は!?何故私の体が消えていくんだ!?」シュウゥゥゥ



魔女の光が側近を消し去っていく



側近「ま……魔王様ぁぁあああ!!」


シュウゥゥゥ…


魔女「………」


剣士「…いつ見ても魔女の魔法は凄いな」

女騎士「手傷を負わすぐらいのつもりだったのだが……まさかあれほどの魔物でさえ一瞬で消し去ってしまうとは…恐ろしい魔法だな」
84: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:06:09 ID:CaRt8voQ

魔王「…これは魔法などでは無い。聖なる力だ」


剣士「…何?」


魔王「まさか貴様も地上に降り立っておったとは…人間に化けて我の偵察でもしてたのか?なぁ…天使よ」


女騎士「魔女が天使…」

剣士「やっぱり天界の住人だったのか…」


魔女「………」

魔王「争いを知らない神々が偵察部隊を出すとは…ま、信じがたいことだが大した問題ではない。それで…貴様は何をしにここに来たのだ?」

魔女「…お前を倒しに来たんだ!」スッ


カッ!



魔女の放った聖なる光が魔王を包み込む

しかし…
85: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:07:39 ID:CaRt8voQ

魔王「この程度の攻撃で我を消せると思っていたとは…滑稽だな」プスプス…



残念ながら魔王には効かなかった



魔女「なっ!?」

魔王「さっきの攻撃を見ればわかる。貴様はもう100年以上はこっちに潜んでいたのだろ?地上に降り立ったばかりの貴様なら未だしも、今の貴様では話にならん」スッ


ズボッ!


魔女「がッ!?」



魔王の腕が天使の腹を貫いた
86: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:09:10 ID:CaRt8voQ

女騎士「ま、魔女ォー!!」ダッ

剣士「くそっ!!」ダッ


魔王「ガハッハッハ!無駄だ」


女騎士「魔女を離せ!!」チャキッ

剣士「うおおおお!!」チャキッ


ズバッ! ズバッ!



私達の刃は確かに魔王を捉えていた

しかし、魔王の体には傷一つついていなかった



女騎士「なっ!?」

魔王「人間が我の体に傷をつけることなど不可能なのだ。これは鍛錬でどうこう出来る問題ではない。我の体はそういう風に出来ているのだ」

剣士「な、何だと!?」
87: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:11:07 ID:CaRt8voQ

魔王「唯一効くのが天界の聖なる力…だからこいつと行動を共にしていたと思ったのだが…貴様らはこいつから何も聞かされてなかったみたいだな」ポイッ


魔女「くっ…」


女騎士「魔女!!」ガシッ

魔女「ご…ごめん…魔王を倒せなくて…」ガハッ!

女騎士「喋るな!腹を貫かれたんだぞ!」


魔王「おかしなことだ…何故貴様は自分の魂を減らしてまで人間なんかに手を貸しているんだ?」

剣士「…どういうことだ?」

魔王「いいだろう…余興がてらに全てを教えてやる。この世界を創る際に神々はあるルールを決めたんだ。『創造主である神々はこの地上に干渉してはならない』というルールをな」

魔王「そして、もし神々がこの地上に降り立った場合、神々の体を構成してる魂そのものを維持できないようにしたんだ」
88: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:13:02 ID:CaRt8voQ

女騎士「な、ならどうして魔女は地上に降り立つことが出来たんだ?」


魔王「そいつは正確に言うと神では無い、神に創られし者だが条件は同じだ。おそらく魂の消滅を防ぐ為に神が創った人間の体を着ているのだろう。それでもさっきみたいに力を使ったり、長年地上に居れば魂がどんどん磨り減っていくがな」


女騎士「…お前は今まで自分の命をすり減らしてまで私達を助けてくれていたのか?」

魔女「…うん。でも僕は…まったく後悔してないよ。お姉ちゃん達のことが大好きだから…」ニコ

女騎士「魔女…」


剣士「…魔王、お前も魂が磨り減っているんじゃないのか?」

魔王「ほう…我が元神であることは知ってるらしいな。もちろん我の体も例外ではなかった。地上に降り立った当初は消滅の危機に瀕していた。さらに我の力が強すぎてこいつみたい我を受け入れられる器を創ることも出来なかった」


魔女「だ…だけどお前は人間の攻撃が効かないばかりか、魔物すらも創造しているじゃないか!つまりお前は地上に居ながら魂の力を頻繁に使っている…そんなこと出来るわけない!」


魔王「普通ならな…だが我は、魂の消滅を完全に食い止める方法を見つけ出したのだ!」
89: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:14:18 ID:CaRt8voQ

魔女「そ、そんな方法が…!?」


魔王「フッフッフ…貴様らでは気づいたとしても実行できない方法だ。それは……」


パクッ
    モグモグ


魔王はいきなりテーブルにあった肉を食い始めた



魔王「こうやって頻繁に肉を喰らうことだ…人間の肉を、な」ゴクン

剣士「な、何!?」

魔王「ガハッハッハ!貴様ら人間は我にとって生きていくのに欠かせないエサなのだ!だから安心しろ!絶滅などさせないで、この城の地下に居る人間共のように家畜として生かし続けてやるぞ!喜べ!」

女騎士「悪魔め…!」ギリッ

魔王「さて、お喋りもここまでだ。そろそろ捻り潰してやるぞ」
90: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:15:23 ID:CaRt8voQ

剣士「くっ…!」

魔女「……このままじゃ二人とも殺されちゃう。ここは僕に任せて二人は逃げて」

剣士「!?」

女騎士「な、何を馬鹿なこと言っているんだ!?」

魔女「お姉ちゃん、これを持ってって。必ずあの方がお姉ちゃん達の力になってくれるはずだから!」



魔女は私にコンパスを手渡した



魔王「ハッハッハー!まだ人間を庇うのか!?天使ともあろう者が何故こんなクズ共を助けようとするんだ?」


魔女「それは……二人が僕にとって大切な…仲間、だからだよ」


魔王「…フン、くだらん」
91: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:16:46 ID:CaRt8voQ

魔女「二人とも!早く逃げて!」

女騎士「お前を置いて逃げられるわけないだろ!!私達にとってもお前は大切な仲間なんだぞ!!」

魔女「…わかってるよ、お姉ちゃん。でも…」

剣士「…魔女の言うとおり、逃げるべきだ…女騎士、お前一人でな」

女騎士「な、何を言っているんだ!?」

剣士「深手を負った魔女一人であいつを食い止めることは不可能に近い。だから…俺も残る」

女騎士「な、なら私も!」

剣士「じゃあ誰がこの真実をみんなに伝えるんだ!?俺達のように魔王を倒そうとする者が現れても無駄死にさせてしまうだろ!!」

魔女「お姉ちゃん…お願い」



私にもわかっていた

このまま3人残って戦っても魔王には勝てないと…
92: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:17:51 ID:CaRt8voQ

それでも私は、魔女や剣士と一緒に死ねるのならそれでいいと思っていた…つまり諦めていたのだ

しかし…魔女と剣士は諦めていなかった

まだ魔王を倒そうとしていたのだ

それが例え……自分達でないとしても…

そして…私は決心した



女騎士「……わかった。お前達の思いは私が必ず…未来(つぎ)へと繋ぐ」

剣士「ありがとな、女騎士。それと…ごめん。約束……守れなくて」

女騎士「………馬鹿、お前の想いなんてとっくの昔から気づいてたよ」

剣士「マジか!?」

魔女「お互いにバレバレだったよ」クスッ

剣士「えっ?てことはお前も…?」

女騎士「…気づくのが遅いんだよ、馬鹿」
93: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:18:58 ID:CaRt8voQ

剣士「そうだったのか……よかった。それなら悔いなく逝ける…」

女騎士「…そこは嘘でも先に帰って待ってろって言えよ」

剣士「そうだな……じゃあ待っててくれ。すぐに帰るからよ…」

女騎士「ああ…ずっと待ってるぞ」


ダッ



私は大切な仲間と愛する男を残して、その場から駆け出した



剣士「…女騎士、頼んだぞ」
94: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:20:18 ID:CaRt8voQ

魔王「フッフッフ…人間というモノは実に無駄なことをする生き物だな」

剣士「…無駄なんかじゃない。無駄になんかさせるものか!!」

魔女「…お兄ちゃん、僕は戦えるとしても一瞬だけ。だから…僕の力をお兄ちゃんに渡すね。そうすればもう少しだけ時間を稼げるはず…僕の手を握って」

剣士「…わかった」


ギュッ


魔女「一応お姉ちゃんにもコンパスを渡すときに力を渡しておいたよ。だからきっと無事に脱出できるはずだよ…」キラキラ…

剣士「お前…体が光に…」


魔王「そいつにとって聖なる力とは命そのもの。力を渡せば光となって消えるのは当然だ…そこまでする意味がわからんがな」


魔女「お前にはわからないさ…一生ね」

剣士「……本当にありがとな、魔女。お前と旅が出来て楽しかったよ」

魔女「へへへ…僕も……だよ」ニコ
95: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:21:07 ID:CaRt8voQ

キラキラ…キラ……


剣士「…魔女」グッ…

魔王「消えたか……それで、その力で我に勝てると本気で思っとるのか?」

剣士「勝てるさ…でもお前に勝つのは俺じゃない」

魔王「はあ?」

剣士「俺が…俺達がここで戦うことで希望が繋がり、きっといつか必ずお前を倒す者が現れるはずだ!」

魔王「ほぅ…ではあの女を殺してその希望すらも消してやるとするか」シュン

剣士「させるか!」バッ


カッ!
96: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:21:55 ID:CaRt8voQ

魔王「ぐっ!これは聖なる光…!」


剣士「絶対に女騎士のところへは行かせない!!うおおおおおおお!!」


魔王「くっ…調子に乗るなァ!」










グチャ
97: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:25:21 ID:CaRt8voQ

______________________________


タタタタタタタッ


「ま、魔王様!」

魔王「何だ?」モグモグ

「お、お食事中に失礼しました!」

魔王「いや構わん。それにしても生肉はやはり美味くない。人肉は炭火焼きに限るな」ペッ

「お、お怪我なされてるみたいですが…大丈夫ですか?」

魔王「少しだけ手古摺ったが大丈夫だ。心配いらん」

魔王(だがやはり我を殺せる聖なる力は危険だ。神でも無い天使から魂を受け取った人間が、あれほどの力を引き出せるとは……あと少し兵力を増強させたら一気に天界を潰すか)
98: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:26:48 ID:CaRt8voQ

魔王「…それで何か報告しに来たんではないのか?」

「は、はい!実は先ほど侵入者を見つけたのですが…に、逃がしてしまいました!申し訳ありません!すぐに追跡部隊を送ります!」

魔王「…まぁよい、放っておけ。どうせ国に戻ったとしても何も出来ん。あとはアイツに任せておけ」

「ア…アイツ?」

魔王「そうか…このことは側近しか知らんかったな。クックック…あいつらは疑問に思わなかったのか?『我の命を狙った者の故郷を潰す』という噂をどうやって人間共に流したのかを…」
99: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:28:14 ID:CaRt8voQ

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私は無事に魔王城を抜け出すことが出来た

途中で捕まりそうになったがいきなり私の体から光が放たれ、近くに居た魔物達が消滅していった

おそらく魔女が力を貸してくれたのだろう…

そんな最後まで守ってくれた仲間と…ずっと好きだった男を……私は見捨てたのだ



ポタッ…


女騎士「…くっ……涙を流してる場合では無い。一刻も早くこのことを皆に伝えなければ…」ゴシゴシ



私は道中に隠していた馬に乗り、全速力で王国へと向かった
100: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:29:42 ID:CaRt8voQ

______________________________


【王国 王城】


女騎士「――以上のことが魔王の知られざる真実です」

大臣「そうか…報告ご苦労だった」



私は王様の右腕である大臣に故郷が破壊されるという噂が嘘であること、魔王には人間の武器が一切効かないこと、魔王が神々との戦いに備えてる為今現在護りが手薄になっていることを伝えた



女騎士「では私はもう行きます」

大臣「どこへ行くんだ?」

女騎士「私の大切な仲間が託してくれた希望(モノ)に導かれてみようと思います。もしかしたら魔王を倒す方法がわかるかもしれません…いえ、必ずわかるはずです」

大臣「そうか……なら、邪魔しないとな」ニヤリ

女騎士「えっ?」
101: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:30:21 ID:CaRt8voQ

スパッ


女騎士「がッ!?」ポタポタ…



私の喉元を刃が切り裂いた



大臣「チッ、今のを瞬時に避けるとは…さすが魔王様に盾を突いただけはあるな」

女騎士『なっ!?き、貴様ァ!!魔王の手先だったのか!?』

大臣「ん?喉を切り裂いてやったから何を言ってるのかわからないぞ」

女騎士『くっ…!』

大臣「さて…今から貴様を『魔王に王国の情報を渡していた裏切り者』として処刑する。心配するな…魔王様に殺されたあいつも同じように裏切り者として後世に伝えてやるからよ」

女騎士『き、貴様ァァ!!』チャキッ

大臣「馬鹿め…」ニヤリ
102: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:32:36 ID:CaRt8voQ

ガチャ


「大臣!大丈夫ですか!?」



大勢の王国騎士団の兵士達が部屋に入ってきた

そして私を見るや否や、一斉に槍を突きつけてきた



大臣「ああ、大丈夫だ。それより私が睨んだ通りだった…こいつは我々を魔王城まで誘き出し、一気に王国を潰そうとしていたんだ!」

「な、何だって!?」

「この裏切り者め…!」



兵士達は大臣の嘘を当たり前のように信じた

大臣は実質この国を動かしている男だから信じるのは当たり前だ…

王国は最初から…魔王の物だったのだ
103: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:33:29 ID:CaRt8voQ

大臣「捕らえて独房に入れておけ。後で民衆の前で晒し首にしろ」

「はっ!」

女騎士(剣士、魔女……私は絶対に諦めない。お前達のようにな)

女騎士『うおおおお!!』



私は元同僚達の攻撃を避けながら何とか王城を脱出した



大臣「逃げられた!?何をしてるんだお前達は!!」

「も、申し訳ありません…」

大臣「…まあいい。次の一手はもう打ってある。あいつを信じる者はもう誰も居ない…」ニヤリ
104: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:34:31 ID:CaRt8voQ

______________________________


女騎士『はぁ…はぁ…』



王国を抜け出した私は一旦故郷の村へと向かった

せめて村の皆には真実を……そう思っていたのだが…



ボオオォォォォ!


女騎士『な…何だこれは!?』



私の故郷は燃えていた

一体何があったのかまるでわからない私は、燃える村を近くで眺めていた村人に声を…声は出ないが何があったのか尋ねようとした
105: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:35:35 ID:CaRt8voQ

「…お前のせいだ」

女騎士『えっ?』

「お前達のせいだ!!」



尋ねる前に私に気づいた村人はそう私に叫んだ

私はすぐに「魔王が噂を信じ込ませる為に魔物達に襲わせたのか?」と考えた

しかし、現実はそれ以上に卑劣なものだった



「お前達が俺達人間を裏切ったせいで、王国騎士団が反乱分子をこれ以上出さない為にこの村を焼き払ったんだ!!」



あの大臣はすでに手を打っていたのだ
106: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:36:36 ID:CaRt8voQ

女騎士『ち、違うんだ!剣士も私も皆を裏切ってない!全て大臣…いや、魔王が仕組んだ罠なんだ!!』



私は叫んだ

心で叫んだ



「俺達は魔王を倒しに行くと言っていたお前達を誇りに思ってたのに…例え魔物に襲われてもお前達を決して恨んだりしなかったのに!!この裏切り者がぁぁ!!」

女騎士『…この際私のことは裏切り者だと思ってもいい。でも…お願いだから剣士のことはそう思わないでくれ。あいつは…皆の為に……世界の平和の為に死んだのに…!』ポロポロ

「泣いたって許すものか…俺達の村を返せぇぇええ!!」



しかし、私の叫びは……皆に届かなかった
107: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/22(日) 11:37:48 ID:CaRt8voQ
投下仕切れなかった…すいません

用事があるので続きは夜に投下します

ではまた
110: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/23(月) 00:14:00 ID:fLGDgd7k

______________________________


王国にも故郷にも追われ居場所を無くした私は唯一の希望、魔女が託してくれたコンパスが刺す場所へと足を進めた

砂漠を進み、山を超え、ひたすら歩んだ

そしてコンパスに導かれ歩み始めてから約一年、私はようやくその場所へと辿り着いた

その場所は人間が決して立ち入ることの無い山の奥深く

幅が5mほどの小さな湖、その湖を花達が丸く囲み、木々の間を通り抜けてきた光がカーテンのようにその場所だけ照らしている

そこはまるで別世界のようだった



女騎士『……魔女、私はここに辿り着いたぞ』
111: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/23(月) 00:15:27 ID:fLGDgd7k

ピカッ!


女騎士『うっ!?な…何だ!?』



突然湖の中心が光り出し、私は目を瞑った

そして光がおさまり目を開くと、その湖の中心に綺麗な女性が立っていた

私はすぐに彼女が人間ではなく、魔女の仲間…天界の住人であるとわかった



女騎士『あ、あの…』



私は緊張のあまり、喉が潰れて喋れないことを忘れて声を出そうとしてしまった



「…大丈夫ですよ。ちゃんと私に聞こえてます」ニコ



彼女は優しい笑顔でそう言ってくれた
112: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/23(月) 00:16:55 ID:fLGDgd7k

「本来ここは人間が立ち入ることの出来ない聖域。私達神々が唯一地上に降りれる隠しスポットなのです」

女騎士『そ、そんなとこに人間である私が来てしまってすいません!』

「いいんです…貴女はあの子のお友達なのでしょ?」



彼女の言う「あの子」が誰を指しているのか、私にはすぐにわかった



女騎士『はい…一緒に居た時間はとても短いですが、魔女は私の大切な仲間でした…』

「そうですか……貴女みたいなお友達が出来てあの子も幸せだったはずです…」

女神「私はあの子の創造主、女神です。あの子に魔王の様子を探らさせていた張本人でもあります」

女騎士『魔王を探らさせていたってことは、神様達も魔王を倒そうとしているんですか?』

女神「いえ…私みたいに地上を毎日観察していた者以外は…誰も戦おうとはしていません。神々には『争う』という概念が無いのです」

女騎士『じゃ、じゃあ何故あなたは魔女をこの世界に送ったんですか!?』

女神「それは……あの子を守る為です」

女騎士『えっ?』
113: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/23(月) 00:18:22 ID:fLGDgd7k

女神「天界で魔王を戦おうと思ってる者は片手で数えられるぐらいしか居ません。おそらく近い将来、魔王は天界に攻めてくるでしょう。そして天界は…崩壊します。だからせめて…あの子だけは助けたかったのです」

女騎士『………そうですか』

女神「…私はあの子にどんなことがあっても魔王に手を出さないよう伝えていました。ですがあの子は貴女達と共に魔王に立ち向かった…自分自身の命を犠牲にしてまで貴女達を守ろうとした」

女騎士『………』

女神「だからこそ、私はあの子が守りぬいた貴女の力になってあげたいのです」

女騎士『ほ、本当ですか!?』

女神「はい。貴女に魔王を倒すことが出来るこの『聖なる剣』を託したいと思います」


ザアァァ



湖の水が割れ、中から光り輝く剣が現れた
114: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/23(月) 00:19:41 ID:fLGDgd7k

女神「この剣は私の魂の力…つまり聖なる力を注ぎ込んだ剣です。これならば人間でもあの魔王を倒すことが出来ます」

女騎士『あ…ありがとうございます!これで…これでやっと…剣士と魔女の思いを繋ぐことが出来る!』ポロポロ

女神「…ですが問題が二つあります」

女騎士『…問題、ですか?』

女神「はい。一つ目はこの剣を扱える人間がこの世界に居ないということです」

女騎士『なっ!?それでは意味が無いではないか!!』

女神「落ち着いてください。まだ話の途中ですよ」

女騎士『す、すいません…』

女神「この剣は謂わば魂の塊。普通の人間が魔王を傷つけることが出来ないように、この剣も普通の人間が持てないようになっています」

女騎士『な、ならどうすれば…』

女神「…貴女は魔王から『神々は地上に干渉してはならない』と聞かされましたよね?」

女騎士『はい』

女神「では何故このような神々が降り立てる隠しスポットがあるのだと思いますか?この場所は……過去に地上に降りた一人の神が作った聖域なのです」
115: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/23(月) 00:22:50 ID:fLGDgd7k

女騎士『えっ?…その神というのは魔王のことですか?』

女神「いえ、違います。魔王が地上に降りるよりももっと前に一人の神が地上に降り立ったのです。魔王とはまったく別の理由で…」

女神「その神は私と同じように長年地上を観察してました。そしていつしか人間を心の底から愛するようになってしまい、魂の消滅を覚悟して地上に降り立ったのです」

女神「その神は地上に降り立ってまもなく、一人の女性と恋に落ちました。そして魂が消滅する前に二人の間に子供が生まれました…」

女騎士『ま、まさか…』

女神「はい。その神の魂を受け継ぐ子孫のみがこの剣を扱うことが出来ます」

女騎士『い、今その子孫はどこに居るんですか!?』

女神「教えてもいいですが…無理なのです。今現在生きているその子孫はこの剣を扱えるほど魂の力が強くありません。ほとんど普通の人間と同じなのです」
116: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/23(月) 00:25:36 ID:fLGDgd7k

女騎士『じゃあ…結局この剣は無駄になってしまうんですか!?』

女神「いえ、今は扱えなくてもその彼の子供、そのまた子供…何世代目かは私でもわかりませんが、隔世遺伝によってこの剣を扱えるほどの魂を持った子がいつの日か現れるでしょう」

女騎士『そうですか…ならよかったです。では私はその子孫にこの剣を預け、先祖代々守っていくよう伝えます』

女神「…先ほども言いましたがそれは無理なのです。二つ目の問題…それはこの剣をここで守り続けなくてはならないのです」

女騎士『………』

女神「この剣がもし魔王の手に渡ったらもう魔王を倒す手段はありません。なのでこの剣を聖域であるここで守り続ける必要があります。本当なら私が守りたいのですが…私は天界の住人。天界と運命を共にします」

女騎士『その役目が……私ってことですか?』

女神「……はい。とても勝手なのですが…私の力で貴女を魂そのものにし、ここを守れる力を授けます」

女神「しかし…魂となった貴女は生きてるとも死んでるとも言えない状態になり、この剣を扱える者が現れるまでここを離れられなくなります。もちろん貴女がそれを望めばですが…」

女騎士『…わかりました。じゃあさっそくお願いします』
117: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/23(月) 00:26:41 ID:fLGDgd7k

女神「…本当にいいのですか?この剣を扱える者が現れるのは数百年先かもしれません。もしその子が生まれてきたとしてもここに導かれないかもしれません。もし現れたとしてもその子が貴女達みたいに勇敢な心を持ってないかもしれないのですよ?」

女騎士『…それでも私は待ち続けます。私は剣士と魔女の思いを未来(つぎ)へと繋ぐって約束しましたから…』

女神「…わかりました。私も貴女達の…あの子の思いが実ることを祈っています」


パアァァ…



彼女は私を魂そのものにした後、天界へと帰っていった

それから私は一人そこで、この聖なる剣を扱える者が現れるのを待ち続けた

数年が経った頃、風の便りで魔王が神々を殺したとか、大臣の裏切りが発覚し王国が滅んだとか、色々なことを耳にした

しかし私は変わることなくここで待ち続ける

木が枯れ、雪が降り、また花が咲く

その光景を何度も、何十回も、何百回も見てきた

そしてついに…その時が訪れた
118: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/23(月) 00:29:36 ID:fLGDgd7k

==============================


ザッ


「ここか…この場所が僕をずっと呼んでいたのか?」



容姿はまったくと言っていいほど似ていない…この小さな少年の方が全然イケメンだ

だけど少年は剣士と同じ目をしている

その目の奥にある『勇気』を私は感じた

この声はきっと届かないだろう…それに君にとってはまったく関係のないことだ

でも…言わせてくれ

どんな困難もその勇気を持ってして立ち向かう『勇気を持つ者』よ…来てくれて本当にありがとう

そして…




『…おかえりなさい』
119: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/23(月) 00:30:39 ID:fLGDgd7k

「ん?…誰?誰か居るの?」

魔法使い「勇者様!ちょっと待ってくださいよ!」タタタタタッ

勇者「ご、ごめん…でもここで誰かに呼ばれてた気がするんだ。今も『おかえりなさい』って声が聞こえたし…」

戦士「…勇者、あの湖の中で何か光ってるぞ」

勇者「あの剣……」

僧侶「剣?あれは剣なんですか?」

勇者「うん…僕にはわかるんだ…」


ザアァァ


戦士「湖が割れて剣が出てきたぞ!?」

勇者「………」パシッ

僧侶「す、凄い…光ってますよ」
120: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/23(月) 00:31:40 ID:fLGDgd7k

勇者「…重い」

戦士「大丈夫か?何なら俺が持ってやろうか?」

勇者「ううん。その重さじゃないよ…この剣には色んな思いが詰まってるんだ」

魔法使い「…きっと誰かが勇者様に思いを託したんじゃないかな?」

勇者「そうかも…ううん、きっとそうだ!この人達の分も僕が頑張らなくちゃ!」

戦士「よし、じゃあそろそろ出発するか」

勇者「うん、行こう!魔王を倒しに!」


====================


こうして彼女達の誰にも語られることの無い物語は終わりを告げた

彼女達が繋いだ思いがのちに勇者達の道標となって世界を救うこととなる

彼女達の名は残っていたとしても、おそらくそれは謂れ無き汚名のみ

しかしその平和が続く限り、彼女達の生きた証は永遠に残るだろう



Fin







女騎士「勇者?何だそれは?」
元スレ

テーマ : 2ちゃんねる
ジャンル : サブカル

剣士「呪いの剣争奪戦が始まる……!」【オリジナルss】

1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/12(日) 08:32:06 ID:udsy8s22
ある山の頂上に、一本の剣が刺さっていた。

この剣を手にした者は世界一の力を得ることができる。
しかし、資格なき者はその身を焼かれるのみ。

この伝説が幾多の剣士をこの山に招き、無数の争いを生んできた。



いつしかこの剣は「争いを呼ぶ剣」として恐れられるようになり、
山そのものも封鎖され、人々から忘れ去られていった。



ところが、今再びこの剣をめぐる争いが巻き起ころうとしていた──
2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/12(日) 08:35:02 ID:udsy8s22
─ 山のふもと ─

大商人「ようこそ、諸君! よくぞ集まってくれた!」

大商人「大金を払って、入山許可を得たかいがあったというものだ!」

大商人「今やあの剣の伝説を信じている者などだぁ~れもおらんが」

大商人「私の話に耳を傾けてくれた君たちだけはちがう!」

大商人「君たちはいずれも、あの呪いの剣を引き抜くに相応しい戦士である!」

大商人「あの剣を引き抜いた者には莫大な賞金を与えることを約束しよう!」

大商人「さぁ、あの呪いの剣の伝説に終止符を打とうではないか!」
3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/12(日) 08:38:09 ID:udsy8s22
大商人の演説を見つめる、一人の若い剣士。

剣士「…………」

剣士(たしかに……ここに集まってる剣士はどいつもこいつも一流っていっていい)

剣士(というか二流三流なら、こんなところには来ない……)

剣士(なにしろ、今は各国の小競り合いが絶えない戦乱の世だからな……)

剣士(こんな夢みたいな話を追うより、目の前にいくらでも仕事は転がってるんだ)

剣士(おそらく大商人の狙いも、あの剣の力を使って)

剣士(この戦乱に乗じてなにか金儲けを企んでるってとこだろうな)

剣士(さて、どんな剣士が来ているのか……)チラッ
4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/12(日) 08:43:04 ID:udsy8s22
一人目 暗黒剣士──



剣士(光沢すらない黒い鎧を身につけ、各国で暗躍を繰り返してると聞く)

剣士(なるほど、禍々しい気配を放っている……)





二人目 曲刀剣士──



剣士(普通、剣はまっすぐだが、えらくひん曲がった剣を持ってるな)

剣士(いったいどんな剣技の持ち主なんだか……)
5: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/12(日) 08:46:09 ID:udsy8s22
三人目 盲目剣士──



剣士(全盲なのに剣士をやるなんて……俺にはとても信じられない)

剣士(おそらく音を聞いて敵の位置を把握する、なんてことをしてるんだろうが……)





四人目 女剣士──



剣士(まさか、女がいるとは思わなかったな)

剣士(どことなく上品そうで可愛いな……っと、俺はなにを考えてるんだ)
6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/12(日) 08:49:22 ID:udsy8s22
五人目 大剣士──



剣士(でかい剣だな……。俺の身長ぐらいあるじゃないか)

剣士(あんなもんで斬られたら一発で終わりだな。スキもでかそうだが)





六人目 眼鏡剣士──

剣士(あの眼鏡は度が入ってるんだろうか、伊達なんだろうか)

剣士(ハッキリいって弱そうだが……頭脳で戦うタイプか?)
7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/12(日) 08:52:38 ID:udsy8s22
七人目 殺剣士──



剣士(コイツは……戦いと殺しが好きな生粋の殺人鬼と聞く)

剣士(今は大人しくしてるが……できれば戦いたくない相手といえる)





八人目 杖剣士──



剣士(あの杖……仕込み杖だな。杖と見せかけて、中にはしっかり刃が詰まってる)

剣士(温厚そうな顔をしているが、警戒はしておこう)
8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/12(日) 08:54:45 ID:udsy8s22
九人目 兄剣士──

十人目 弟剣士──



剣士(アイツらは双子か……そっくりだな)

剣士(この二人が波状攻撃なんか仕掛けてきた日には、頭が混乱しそうだ)
9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/12(日) 08:57:37 ID:udsy8s22
十一人目 鎖剣士──



剣士(奴が持つ剣には鎖が仕込まれてて)

剣士(柄と刃を分離して変幻自在の攻撃を行うとか……強豪だな)





十二人目 格闘剣士──



剣士(今日来てる剣士で、最大の体格を誇っている)

剣士(運動能力も体格に比例して高いんだろう……顔も自信に満ちている)
10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/12(日) 09:00:19 ID:udsy8s22
十三人目 仮面剣士──



剣士(この中で唯一、素顔を隠した剣士……)

剣士(単なるファッションなのか、なにか理由があるのか……)





十四人目 ヒゲ剣士──



剣士(たくましい黒ヒゲに、傷だらけの手足……)

剣士(いかにも歴戦の兵、って感じだな。俺もこんな風に年をとってみたいもんだ)
11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/12(日) 09:03:38 ID:udsy8s22
十五人目 短剣士──



剣士(アイツの剣、ダガーっていっていいサイズだ)

剣士(軽さと短さを生かして、素早く相手に斬り込むタイプってとこだな)





十六人目 鎧剣士──



剣士(白銀の鎧を身に付けた剣士、か……)

剣士(おそらく、どこかの国の騎士かなんかだったんだろうな)
12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/12(日) 09:08:29 ID:udsy8s22
十七人目 槍使い──



剣士(世界的な槍の名手が、なんでこんなところに……!?)

剣士(まぁ……槍の使い手が剣を欲しがったってかまわないけどさ)





十八人目 無剣士──



剣士(アイツのウワサは知っている)

剣士(刃がない、柄だけの剣を使うらしい……。妖術使いだったりして……まさかな)
13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/12(日) 09:12:38 ID:udsy8s22
十九人目 鏡剣士──



剣士(鏡のようによく磨かれた剣を使うっていうけど……なんかキザだ)

剣士(見た目もどことなくナルシストっぽいな、アイツ)





二十人目 剣士──



剣士(参加者は俺も含めて20人!)

剣士(なんとしても、この俺が呪いの剣“争いを呼ぶ剣”を引き抜いてみせる!)
14: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/12(日) 09:17:13 ID:udsy8s22
大商人「さて、準備はよろしいかな?」

大商人「君たち20人が仲良しグループでないことは、私にもよぉく分かっている」

大商人「よって、この地点から一斉にスタートしてもらうというのも妙な話だ」

大商人「ケンカになられても困るしねぇ」

大商人「幸い、この山には入り口になりそうな箇所がいくつもある」

大商人「まずは君たち20人──」

大商人「各自バラバラの地点からスタートするということでいかがかな?」

大商人「もちろん、強制はしないが……」

大商人の提案に異論は出なかった。
15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/12(日) 09:20:40 ID:udsy8s22
しかし、その場にいる剣士は全員分かっていた。



剣士(ケンカになられても困る?)

剣士(笑わせるな……分かってるくせに)

剣士(これからこの山で始まるのは……壮絶な争奪戦だ!)

剣士(この場で戦いが始まったら、大商人も巻き添えをくいかねない)

剣士(だから、あえてスタートだけルールを作り、皆を引き離したんだ)



これから、殺し合いが始まると──
16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/12(日) 09:25:06 ID:udsy8s22
集まった20人はみなバラバラになり、剣士もまた自分のスタート地点を決めた。

剣士(俺だって腕には自信があるが、殺し合いは好きじゃない)

剣士(なるべく、戦わずに頂上までたどり着きたいもんだが……)

剣士(弱気は禁物! 気持ちを切り替えろ!)

剣士(呪いの剣争奪戦が始まる……!)

ザッ……!



剣士、スタート!
21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 01:18:44 ID:QpgIa2BA
剣士が山に入ってから、およそ30分──

ガサッ……

剣士(今のところ、誰とも出会わない)

剣士(もう少しペースを上げたいが、危険すぎるか……?)

チャラッ……

剣士(鎖の音!?)

ヒュバァッ!

剣士の背後から、鎖に繋がった刃が飛んできた。

ドカァッ!
22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 01:21:08 ID:QpgIa2BA
刃はとっさにかがんだ剣士の真上を通り、木に激突していた。

剣士「!」バッ

鎖剣士「外しちゃったか……ま、しゃーない」ジャラッ…

鎖剣士「よっと」クンッ

鎖剣士の得物は──柄と刃が、長い鎖で繋がった剣。

剣をヌンチャクにしたような代物である。

鎖剣士「さて……と。ライバルは一人でも減らしたいからね」ジャラ…

鎖剣士「オイラと遊んでもらうよ~ん」ヒュンヒュン…

剣士「ぐっ……!」チャキッ



剣士VS鎖剣士、戦闘開始──
23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 01:24:05 ID:QpgIa2BA
ほぼ同時刻──

殺剣士「ふもとでオマエを見てから──」

殺剣士「オレはオマエをず~っと、ずっとずっとつけ狙ってたァ!」ハッハッ…

殺剣士「もういいだろォ?」ハッハッ…

殺剣士「こ、こ、こここ、こ、コロすゥゥゥゥゥッ!」

暗黒剣士「殺す、か」

殺剣士「?」

暗黒剣士「“殺害”などただの通過点に過ぎぬ……」

暗黒剣士「通過点如きに快楽を見出す獣に、私は倒せはしない」

殺剣士「? ──どォいう意味だァ!?」

暗黒剣士「すぐに分かる……。さぁ、来るがいい」

殺剣士「ひひっ、ひっ、ひゃあぁおおおぉぉぉぉっ!!!」ダッ

暗黒剣士(一撃だ……)
24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 01:28:10 ID:QpgIa2BA
ドバンッ!

暗黒剣士「ん……?」

暗黒剣士の脇腹が、黒い鎧ごと深々と切り裂かれていた。

暗黒剣士(あれ? い、いつ攻撃されたんだ!? なんて速さ……!)

暗黒剣士「いでえええっ! 腸が、腸が出てるゥゥゥ!」ニュルッ…

暗黒剣士「し、しまわなきゃ──」モゾモゾ…

殺剣士「なんだ……弱いな、オマエ」

暗黒剣士「ま、待ってく──」

ズシャッ……! ゴロン……

暗黒剣士の首が転がった。

殺剣士「雰囲気にダマされたなァ」ハァ…

殺剣士(オレは金も剣もどうでもいい、強いのを殺せればいい)

殺剣士(強いの……いるといいなァ)ザッザッ…

暗黒剣士、死亡──
25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 01:31:55 ID:QpgIa2BA
場面は剣士と鎖剣士の戦いに戻り──

シュバァッ!

剣士「くっ……!」

鎖剣士「うまくかわすじゃんか!」

鎖剣士「だぁ~けど、オイラの剣は変幻自在!」ヒュンヒュン…

鎖剣士「蛇のように動く鎖を介し、アンタを四方八方から切り刻む!」

ヒュバッ! ヒュババッ!

鎖剣士に操られた刃が、剣士に幾度も襲いかかる。

剣士「くっ!」ザザッ…

剣士(リーチも長いし、軌道も読みにくい! 本当に大蛇と戦ってるような感覚だ!)
26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 01:35:33 ID:QpgIa2BA
鎖剣士「ほら、どんどんいくよ~ん!」ヒュンヒュン…

ヒュバァッ!

剣士(なら、鎖を斬ってしまえば!)ダッ

剣士は柄と刃を繋ぐ鎖に、狙いを定める。

鎖剣士(当然、そうくるよな)ニヤ…

鎖剣士(だけどね、鎖ってのは揺れ動くもんなんだ)クイッ

剣士「だあっ!」シュバッ

ユラッ……

鎖はくねりと曲がり、剣士の刃から逃れた。

剣士「くっ! 外れた!」

鎖剣士(そう簡単に斬らせはしないよ~んだ)
27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 01:38:54 ID:QpgIa2BA
鎖剣士(だけど……オイラも決め手に欠けてるのは事実……)

鎖剣士(こいつ、一度見せた攻撃には即対応してくるし、長引くとめんどい!)

鎖剣士(まだオイラの剣に慣れてない今のうちに、一気にキメる!)

鎖剣士「んじゃ、そろそろマジでいっくよ~」ヒュンヒュン…

鎖剣士「そらっ!」

シュバッ! ヒュババッ!

速度を上げ、蛇のように襲いかかる刀身。

間合いを詰めようとしても、鎖剣士は巧みに剣を操作してそれをさせない。

剣士(攻撃はかわせるようになってきたが、こっちも全く近づけない!)

剣士(いっそ剣を投げつけるか……?)

剣士(いや、もし外したりハジかれたら丸腰になる……危険すぎる!)

剣士(だが、こんな蛇のように動く剣を仕留めるには──)

剣士(蛇……そうか!)
28: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 01:46:15 ID:QpgIa2BA
剣士「来い……!」スゥ…

剣士は剣を上段に構えた。

上段の構えは通常、振り下ろしの一撃で敵を斬るための構えであるが──

鎖剣士(なんだ? まだ距離はあるのに、どうする気だ?)

鎖剣士(そうか、こいつあの構えから勢いをつけて剣を投げる気だな~?)

鎖剣士(ならこっちも飛んでくるであろう剣に警戒しつつ……一気に仕留める!)ジャラッ…

ヒュオッ!

鎖剣士の刃が、剣士の胸めがけて蛇行しながら飛んできた。

剣士「そこだっ!」ビュオッ

ガキンッ!
29: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 01:52:57 ID:QpgIa2BA
グサァッ!

剣士の振り下ろした一撃で、鎖剣士の刃が地面に突き刺さった。

鎖剣士(しまっ──)

鎖剣士(こいつ、剣を投げてオイラ本体を狙うつもりだと思ってたけど)

鎖剣士(オイラの剣の“刀身そのもの”を狙ってやがった!)

剣士「だああああっ!」

鎖剣士(ぐっ、抜けない!)グッグッ…

ザシィッ!

鎖剣士「ぐあっ……!」ドサッ…

剣士「ふうっ……」

剣士「蛇を捕まえる時は、胴体や尻尾じゃなく頭を掴め、っていうからな」
30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 01:57:29 ID:QpgIa2BA
鎖剣士が浴びた一撃は、致命傷ではなかった。

鎖剣士「待てよ……!」グッ…

鎖剣士「なぜだ……なぜオイラを殺さない!?」

剣士「…………」

剣士「アンタは……どうしてこの呪いの剣争奪戦に参加したんだ?」

鎖剣士「妙なこと聞くんだな……。ま、いいや、答えてあげるよ」

鎖剣士「そりゃあもちろん、世界一の力を手に入れたいからだ!」

鎖剣士「なんたって“争いを呼ぶ”とまでいわれるほどの剣……」

鎖剣士「この戦乱の世、いい武器はいくらあったって困らない!」

鎖剣士「腕に自信があるのなら、挑戦してみたくなるのは当然だろう!」

剣士「やっぱり、そうか。そうだよな」

鎖剣士「そうか……って、アンタはちがうのかよ?」

剣士「俺は、逆なんだよ」

鎖剣士「逆……?」
31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 02:01:07 ID:QpgIa2BA
剣士「俺は呪いの剣を“争いを呼ぶ剣”だとは思っていない」

剣士「むしろ、その力があれば戦乱に傷ついた人々を救えるかもしれないと思ってる」

剣士「俺はあの剣を“争いを鎮める剣”として、活躍させたいんだ」

剣士「それが……俺が今回の戦いに参加した理由だ」

剣士「だから……出来る限り争いは殺さずに鎮めたい」

鎖剣士「甘い、甘いよ……」

鎖剣士「そんなんじゃ、とてもこの山を生き残れないよ……」

剣士「俺は生き残ってみせる」

剣士「その傷、しばらくは動けないだろうが」

剣士「きちんと止血しとけば死ぬこともないはずだ。じゃあな」ザッ…



鎖剣士(ハハッ……まさか死なずにリタイアすることになるとはね~)

鎖剣士(オイラの完敗だ……)

鎖剣士(アイツなら……もしかしたら、呪いの剣を引き抜けるかも、な)
32: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 02:04:34 ID:QpgIa2BA
「連鎖反応」という言葉がある。

剣士と鎖剣士の戦いに決着がついた瞬間──

全く異なる場所にいる剣士同士が、次々に出会い、戦いを開始する。

まるで、神かなにかがヨーイドンの合図でも鳴らしたかのように……。



大剣士「テメェ、今なんつった!?」

短剣士「そんなバカデカイ剣、デカイだけで何の役にも立たないっていったのさ」

大剣士「なるほど、死にてえようだな!」ズウン…

大剣士「テメェの小さい剣と体、まとめてぶった切ってやるよ!」

短剣士「やれやれ声もデカイのかい。なら、そのノドかっ切ってあげるよ!」チャッ
33: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 02:07:13 ID:QpgIa2BA
格闘剣士「ウオオオオオッ! かかってきやがれッ!」

仮面剣士「では遠慮なくいかせてもらおうカ」



眼鏡剣士「フフフ、ボクにはあなたの弱点が分かっていますよ」

盲目剣士「お、期待してるよ!」



曲刀剣士「女よ、命をもらおうか」

女剣士「あたしはなんとしても剣を手に入れるの! だれが命を渡すもんですか!」
34: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 02:09:21 ID:QpgIa2BA
参加者の一人、杖剣士──

杖剣士「さてと、ぼくはどっちに進むべきかな?」

杖剣士「…………」スッ…

パタッ

杖剣士「こっちか。いつもありがとう」スタスタ…

彼は定期的に、仕込み杖である剣を地面に倒す。

そして、剣が倒れた方角に進むのである。
35: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 02:13:54 ID:QpgIa2BA
敵の気配に気づき、槍を構える槍使い。

槍使い「……出てこい」ヒュバッ

兄剣士「さすがだな、この距離から気配に気づくとは」チャキッ

兄剣士「しかし、なぜこの戦いに槍の名手であるアンタが参加している?」

槍使い「……呪いの剣の争奪戦ならば、当然優れた剣士が集まる」

槍使い「剣に対する槍の強さを明確に示すには、絶好の機会だと思ったのでな」

兄剣士「酔狂なことだ」

兄剣士「まぁいい、出会ったからには始めよう。一対一だ!」チャキッ

槍使い「…………」スッ
36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 02:17:40 ID:QpgIa2BA
キィンッ! ギンッ! ガキンッ!

槍使いと兄剣士が互いの得物で打ち合う。

すると──

バッ!

木の上から降ってきた弟剣士が、槍使いに斬りかかった。

キィンッ!

弟剣士「ちぇっ、防がれちゃった」スタッ

兄剣士「やるな……」

槍使い「やはりな……。一対一であるはずがないと思っていた」

兄剣士「ん? なにいっている? これはれっきとした一対一だ」

兄剣士「だって我ら兄弟は一心同体なんだも~~~~~ん! なぁ~?」

弟剣士「はいっ、お兄様!」

槍使い「…………」
37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 02:22:14 ID:QpgIa2BA
そして、また一組──

ヒゲ剣士「うぬが無剣士か」

ヒゲ剣士「どれ、剣を抜いてみよ」

無剣士「はいはい」サッ

ヒゲ剣士(本当に刀身がない、柄だけの剣……!)

ヒゲ剣士(いや、あんなものが剣と呼べるのか!?)

無剣士「…………」シュッ

ヒゲ剣士「!」ピクッ

ヒゲ剣士(今、なにかをした!? なんだ!?)
38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 02:25:08 ID:QpgIa2BA
ヒゲ剣士「いざ、尋常に勝負!」チャキッ

無剣士「もう終わってんよ、オッサン」

ヒゲ剣士「なんだと!?」

無剣士「俺、アンタみたいなオッサン嫌いなんだよね~」

無剣士「力と技を地道に磨く? みたいな? アホくさ……化石かよ」

ヒゲ剣士「ワシを侮辱する気かァ!」

無剣士「あ~……うっさいから、死んでね」ヒュッ

ブシュゥゥゥ……!

次の瞬間、ヒゲ剣士の首から、血が噴き出した。

ヒゲ剣士「がっ……!?」ブシュゥ…

無剣士「オッサン、アンタもう時代遅れ。ってわけで、とっとと死んじゃってね~」

ヒゲ剣士(な、なにが起き……)グラッ…

ドシャッ……!
41: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 11:37:38 ID:HVFR0CVA
暗黒剣士ただの厨二病かよww
42: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/13(月) 20:24:48 ID:zKLmjnxE
暗黒剣士ェ・・・
43: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 00:34:26 ID:H9xmQ5kc
盲目剣士VS眼鏡剣士──

眼鏡剣士「でやぁっ!」シュッ

盲目剣士「そっち!」

ザシッ……!

眼鏡剣士「ぐ……!」

盲目剣士「ん~……どした? 私はまだ本気を出してないよ?」

盲目剣士「弱点が分かってるんだろう?」

眼鏡剣士「いわれなくても……突かせてもらいますよ」
44: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 00:36:58 ID:H9xmQ5kc
眼鏡剣士(あなたと斬り合いながら、ボクはいくつかの細い木に切れ目を入れ)

眼鏡剣士(倒れやすくしておいた!)

眼鏡剣士(今、それを一気に倒す!)シュバッ



ドザザザザッ……!



ドミノ倒しのように、何本もの木が激しい音を立てて倒れる。

盲目剣士「!」ピクッ

眼鏡剣士(ふふふ、あなたは耳を頼りに敵と斬り合うんでしょう?)

眼鏡剣士(しかし、この轟音ではボクの場所は分からない! ──終わりだ!)

足音を殺し、眼鏡剣士が盲目剣士に斬りかかる。

ドシュッ……!
45: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 00:40:50 ID:H9xmQ5kc
一撃を入れていたのは──

眼鏡剣士「かはっ……!」ガクッ

盲目剣士「残念!」チッチッ

盲目剣士「私はね、耳を頼りに戦っているわけじゃないよ」

眼鏡剣士「なんだって……!?」

眼鏡剣士「じゃあ、どうやって戦ってるんだ!?」

盲目剣士「強いていうなら……“勘”かな? カ、ン!」

眼鏡剣士「勘……!?」

盲目剣士「しかし、キミもいいセンいってたよ! まだまだ強くなれる!」

盲目剣士「キミはどうやら眼鏡をかけてるようだけど」

盲目剣士「レンズを黒く塗りつぶせば私みたいになれるかも、なぁ~んて」

盲目剣士「じゃ!」ビッ

ザッザッザッ……

盲目剣士、頭脳プレイをものともしない勝利。
46: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 00:44:16 ID:H9xmQ5kc
女剣士VS曲刀剣士──

女剣士「いくわよ!」ダッ

キィン! ギィン! カキィンッ!

女剣士(くっ、あの曲がった刃にさばかれて、斬り込めない!)

曲刀剣士(女にしてはできる……が、しょせんは女。吾輩の相手ではない)

曲刀剣士「首を……もらう!」

ビュオッ! ギィンッ!

首への鋭い一撃を、かろうじて防ぐ女剣士。

女剣士「きゃあっ!」ドサッ

曲刀剣士「剣ごと斬るつもりだったが、いい剣を持っているな」

曲刀剣士「女……なにゆえにキサマはこんな戦いに参加した?」
47: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 00:48:48 ID:H9xmQ5kc
女剣士「呪いの剣の力を手に入れて……世界を平和にするためよ!」

女剣士「それに、優れた剣士同士がこんな風に殺し合うなんて……間違ってる!」

女剣士「もっと……違う力の使い方があるというのに!」

曲刀剣士「愚かな……なんという甘い考えだ」

曲刀剣士「女……キサマはここで死ね!」チャキッ



「させんぞっ!」

ギィンッ!

割り込んできた第三者によって、曲刀は食い止められた。

曲刀剣士「何者……!?」
48: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 00:53:51 ID:H9xmQ5kc
鎧剣士「ここからは私が相手だ!」ザッ…

曲刀剣士「無粋な奴め……まぁよかろう」

曲刀剣士「こんな甘っちょろい小娘相手では、物足りなかったところだ」

ヒュアッ!

ギギギンッ! ガキンッ! キィンッ!

曲刀剣士(全身を鎧で固めているのに、なんというスピード!)

曲刀剣士(只者ではないな、コイツ!)チャッ

曲刀剣士「ならば、吾輩も本気を出そう」ギュルッ

曲刀剣士がまるで自身の刀のような、曲線を描くステップを繰り出す。

女剣士「な、なにあれ……まるで踊ってるみたい!」

鎧剣士「異国には、曲刀と曲線の動きを駆使する剣技があると聞いたことがあります」

鎧剣士「おそらく、彼はその剣技の使い手……」

曲刀剣士「そのとおり、吾輩はこの舞であらゆる敵を倒してきた」ギュルルッ
49: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 00:57:15 ID:H9xmQ5kc
曲刀剣士「呪いの剣とやらを手に入れれば、吾輩の舞はさらに完璧なものとなるであろう」

曲刀剣士「ジャマはさせん、ゆくぞ!」ギュルッ

ギィンッ! キンッ!

ギャンッ!

曲刀剣士の独特な剣技に、鎧剣士は追い詰められていく。

鎧剣士「くっ……!」

鎧剣士(初めて体験する剣だ……読みにくい!)

女剣士「……頑張って!」

鎧剣士「!」

鎧剣士(そうだ……私とて負けられない理由がある!)

鎧剣士(私には、守らなければならない人がいるッ!)

鎧剣士「だああああっ!」

キキキンッ! ギィンッ!
50: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 01:00:06 ID:H9xmQ5kc
曲刀剣士「ぬうっ!」ギュルッ

鎧剣士(ステップに惑わされず、攻撃に移る一瞬を見切れば──)ブンッ

ガギィンッ!

鎧剣士(私のパワーで、攻撃をハネ返せる!)

曲刀剣士「なんだと……!?」ヨロッ…

鎧剣士(そして──)

ザシュッ!

曲刀剣士「ぐがっ……!」ドサッ…

鎧剣士(体勢を崩した一瞬──攻撃チャンスが生まれる!)
51: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 01:04:12 ID:H9xmQ5kc
曲刀剣士「ぐっ……くそぉっ……」

鎧剣士「命までは奪わん」

鎧剣士「これは戦争ではないし、戦えなくなった者を討つつもりはない」

曲刀剣士「ぐうっ……」

鎧剣士「──さて、姫様!」クルッ

鎧剣士「やはりここからは私が同行します! 危険すぎる!」

女剣士「そうね、少しあなどってたみたい。護衛をお願いするわ」

女剣士「なんとしても、あたしたちであの剣を手に入れるのよ!」

鎧剣士「はいっ!」

ザッザッザッ……



曲刀剣士(姫、だと……?)

曲刀剣士(いや、今の世、身を落とした王侯貴族など珍しくも、ないか……)

曲刀剣士(どうりで甘いわけだ……二人揃って、な)
52: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 01:08:22 ID:H9xmQ5kc
格闘剣士VS仮面剣士──

格闘剣士「セイイィッ! ドリャアッ!」

ギィンッ! キィンッ! ガキィンッ!

仮面剣士「…………!」

格闘剣士による、拳につけた刃でのラッシュで、仮面剣士は防戦一方。

仮面剣士「強いナ……大したものダ」

格闘剣士「当然だ!」ムキッ

格闘剣士「格闘技の達人であるオレが、そのまま刃を得たのだからな!」ジャキンッ

格闘剣士「この世にオレより強い者など存在しないのだ!」

仮面剣士「フム……」

仮面剣士「ならバ……」スゥ…

仮面剣士が構えを変える。刃の切っ先がまっすぐ格闘剣士を向いている。

すると──
53: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 01:12:26 ID:H9xmQ5kc
格闘剣士「ぬっ!?」ビクッ

激しく動いていた格闘剣士の体が、突如止まってしまった。

仮面剣士「我が秘剣……。オマエはもう動けんヨ」

格闘剣士「体が動か……どうなって……ガハァッ!」ゲボッ

吐血する格闘剣士。

仮面剣士「もってあと30秒といったところダロウ」

格闘剣士「ち、ち、ちくしょう! な、なにを……しやがったァ!」ダッ…

このままでは終われない、と突撃を決行するが──

シュバッ!

格闘剣士は、あっさりと斬り捨てられた。

仮面剣士「我が秘剣の前にはどんな戦士も無力ダ……」

仮面剣士「ククク……ククククク……」
54: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 01:16:04 ID:H9xmQ5kc
大剣士VS短剣士──

大剣士「どおおりゃあああっ!」

ブオンッ! ブウンッ!

大剣士「このチビ助が! ちょこまかと逃げ回りやがって!」

短剣士「なにいってんのさ。当てられない方が悪いんだよ」

短剣士「今までの相手はよっぽどノロマだったんだろうねぇ~」

大剣士「んだとォ!」

大剣士の渾身の一撃。

ブワォンッ!

しかし、短剣士はあっさりかわすと──

シュパッ……

大剣士「あがぁ……」ブシュゥゥゥ…

短剣士「頸動脈ゲット~」

短剣士「じゃあね。生まれ変わったら、その大振り癖を直すんだね」クルッ
55: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 01:19:16 ID:H9xmQ5kc
短剣士(さて、先を急がないと……)

大剣士「直す……かよ……」ブシュゥゥゥ…

短剣士「え?」



ボッ!!!



大剣士が真横に振り抜いた最期の一撃が、短剣士の胴体を真っ二つにしていた。

短剣士「ぐげっ……!」

ボトッ…… ドチャッ……

大剣士「ガハハッ! ざ、ざまあみやがれ……」

大剣士「ざまあ……み、や……」ドサッ…

まもなく、大剣士も出血多量で息を引き取った。
56: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 01:22:54 ID:H9xmQ5kc
兄剣士・弟剣士VS槍使い──

兄剣士「ゆくぞ、槍使い! 弟よ、準備はオーケーかぁ~い?」

弟剣士「うん、お兄様!」

二手に分かれ、左右から槍使いを攻撃する兄弟剣士。

槍使い(一糸乱れぬ連携……。みごとなコンビネーションだ)

槍使いも槍を巧みに動かし、二人の攻撃を受け流す。

ギンッ! ギギンッ!

兄剣士「ふん、やるな……」

弟剣士「ごめんね、お兄様! ボクが足を引っぱってしまって……!」

兄剣士「バカをいうんじゃなぁ~い! お前のせいなんかではなぁ~い!」
57: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 01:26:30 ID:H9xmQ5kc
槍使い「私の“回し”と“払い”は槍の使い手の中でトップクラスだ」ブオンッ

槍使い「ゆえに私の防御は全方位に対応できる」ビュオオオン…

見せつけるように、槍を高速回転させる槍使い。

兄剣士「なるほどな……挟み打ちしても効果は薄いようだ」

兄剣士「よぉ~し……」チラッ

弟剣士(うん……)チラッ

兄弟剣士は横に並び、左右にフットワークを始めた。

バババッ! バババッ!

槍使い「!」

そっくりな剣士二人が左右に目まぐるしく動く。

大抵の対戦相手は、この異様な光景に惑わされ、スキを作ってしまう。
58: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 01:29:31 ID:H9xmQ5kc
だが、フットワークする兄弟剣士の体が重なった瞬間──槍使いが動く。

槍使いは惑わされなかったのだ。

槍使い「私の“突き”はまちがいなく──」

槍使い「槍の使い手としてはトップだッ!」



ズドォッ!!!



槍は前方にいた弟剣士の剣と心臓を貫き、真後ろにいた兄剣士に達する寸前であった。

弟剣士「ごふっ、お、お兄、さ、ま……」ドサッ…

兄剣士「弟っ!」

兄剣士「弟ォ~~~~~~!」

槍使い(もし弟が剣で防御していなければ、二人まとめて倒せていただろう……)

槍使い(兄を守るため、か……みごとな反応だった)
59: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 01:31:52 ID:H9xmQ5kc
槍使い「さぁ、残るはお前一人──」

兄剣士「弟ォ! 弟ォ~~~~~!」グシュッ…

兄剣士「目を開けてくれェ~~~~~!」

槍使い「…………」スッ…

槍使い(最愛の弟を失い、戦意をも失ったか……)

槍使い(これ以上、戦う意味はないな)

槍使いは泣きじゃくる兄剣士を殺すことはせず、頂上を目指すことにした。
60: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 01:35:48 ID:H9xmQ5kc
残された兄剣士は、10分ほどでようやく自分を取り戻した。

兄剣士「うっ、うっ、うっ……」グスッ…

兄剣士「そうだ、弟を埋めてやらなきゃ……」グシュッ…

すると──

ボワァ……

兄剣士の前に、自分そっくりの人間が現れた。

兄剣士「……なんだ? だれだあれは?」

兄剣士「そうか、弟だな! お前、生きてたのかぁ~!」グスッ…

兄剣士「よかったぁ~」スタスタ…

兄剣士「そりゃそうだよなぁ~! あんなヤツにつよ~いお前が殺されるわけが──」
61: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 01:40:02 ID:H9xmQ5kc
ザシュゥッ!

兄剣士「え……?」ブシュッ…

ドサッ……

弟が生き返ったと思っていた兄剣士は、一撃のもとに斬り捨てられた。



兄剣士を葬ったのは──

ガサ……

鏡剣士「ミラー剣術“ドッペルゲンガー”……愛する弟とともに安らかに眠りたまえ」

兄剣士が見ていたのは、鏡剣士の剣が映した自分自身の姿だったのだ。

鏡剣士(フッ……やはり私の剣技は美しい……)

鏡剣士(私の剣に映っている私もまた、美しい……)
62: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 01:44:32 ID:H9xmQ5kc
鏡剣士「!」ピクッ

鏡剣士(なんだこの殺気は?)

ガササッ!

殺剣士「おやァ?」

殺剣士「なにやら泣き叫ぶ声がしていたから、来てみたら──」

鏡剣士(殺剣士!)

鏡剣士(私としたことが、厄介な奴に見つかってしまったものだ……)チャキッ

殺剣士「お~……オマエも強そうだなァ! 殺していいか? いいよな?」ハッハッ…

殺剣士「あ~……」ビクビクッ

鏡剣士に一目惚れしたかのような目つきで、殺気を高める殺剣士。

殺剣士「コロしてやるゥ! コロしてやるぞォォォォォ!」

鏡剣士「フッ……いっておくが、死ぬのはキミだ!」
63: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 01:48:48 ID:H9xmQ5kc
鏡剣士「ミラー剣術“サンライト”」ピカッ

殺剣士「!」

鏡剣士は日の光を反射させ、殺剣士の目に直撃させた。

鏡剣士「今だ!」シュッ

ギィンッ!

鏡剣士の一閃を、なんなく防ぐ殺剣士。

いや、防ぐどころではなかった。

鏡剣士「ぐ!」ブシュッ…

殺剣士「チィィ……コロせなかったか! クゥ~~~~~ッ!」ギリッ…

鏡剣士(あの状況からみごと反撃しておいて、悔しがっている!)

鏡剣士(こいつ、常軌を逸しているのは性格や殺気だけでなく、剣術もか!)

鏡剣士(まともな術では倒せないようだね……なら!)

殺剣士「次だ、次がんばればイイ! コロすゥゥゥゥゥ!」
64: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 01:52:16 ID:H9xmQ5kc
鏡剣士「キミの殺気、そのままお返ししよう」スゥ…

殺剣士「?」

鏡剣士「ミラー剣術“リフレクション”」ギラッ…

殺剣士「!?」

鏡剣士の剣によって、殺剣士の殺気がそのまま自分自身に反射される。

殺剣士はこれまで他者に向けていた殺気や殺意を、自分で受けるはめになってしまった。

殺剣士「ウッ、オオッ!」

殺剣士「オオオオオオオオオオオオ~~~~~!?」

殺剣士「コロされる!? コロされてしまうゥゥゥゥゥ!」

鏡剣士「これほどの殺気……自分で受けるのは初めてだろ? つまり免疫がないはず」

鏡剣士「もはや、キミは廃人になるしかないのさ……グッバイ」
65: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 01:58:33 ID:H9xmQ5kc
だが、鏡剣士の思惑に反し、殺剣士は笑っていた。

殺剣士「サイッコーだァ! た、たまらん! こんなの初めてだァ!」ゾクゾクッ…

鏡剣士「な!?」

殺剣士「お返しに、コロすゥゥゥゥゥッ!」

鏡剣士「う、うわぁっ! ──ひいいっ! く、来るな──」

ドシュッ!

鏡剣士は剣ごと、急所を切り裂かれてしまった。

殺剣士「……あ」

殺剣士「あんな面白い体験は久々だったのに……」

殺剣士「もっとジックリと殺してやるべきだったか……」



鏡剣士の死によって、呪いの剣争奪戦に残っている者は、残り9名となった。
66: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 02:00:14 ID:H9xmQ5kc
さて、その頃──

杖剣士「次はどっちかな、と」

杖剣士「…………」スッ…

パタッ……

杖剣士「こっちか」

杖剣士「さっき珍しいキノコも手に入れたし、順調だな~」スタスタ…
67: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 02:06:12 ID:H9xmQ5kc
─ 山のふもと ─

隊長「大商人様、そろそろ頃合いかと」

大商人「うむ……そうだな」

ズラッ……

集まっているのは、大商人の私兵隊。

隊長と五名の隊員は、いずれも精鋭と呼ぶにふさわしい実力を持つ。

大商人「今頃、奴らは派手に殺し合っておるはずだ」

大商人「呪いの剣などという、わけの分からんもののためになぁ……」

大商人「奴らの中には多額の賞金がかかっている者も多い」

大商人「死んでいた者がいたら、残らず死体を回収するのだ!」

隊長「もし、生きている者がいれば、もちろん──」

大商人「ふむ、そういうことだ。残らず死体に変えてやれ」ニィ…
68: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 02:13:03 ID:H9xmQ5kc
大商人「この戦乱の世の中……。多くの粗悪品の傭兵が出回る世の中……」

大商人「最も金になるのは“強さ”よりも“実績”だ」

大商人「どのぐらいの強さがあるかより、何をやったか、が重視される」

大商人「名だたる20名もの剣士を、一網打尽にしたとなれば……」

大商人「お前たちの値はそれこそ計り知れないものになる!」

大商人「ひとりひとりチマチマ殺ったところで、インパクトは薄いしなぁ」

大商人「宣伝はより目立つように! ……商売の基本だな!」

隊長「賞金首を大量に手に入れ、しかも宣伝材料をも得る……一石二鳥ですな」

大商人「うむ、奴らの首の値だけでこの争奪戦にかかった費用は十分取り戻せるしな」

大商人「しかも、うまく武力を売り込めば、どこかの国に取り入ることもできる!」

大商人「そして──」
69: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 02:17:11 ID:H9xmQ5kc
大商人「いずれはその国をも財力によって裏から操り、乗っ取り」

大商人「この戦乱の世に商人の商人による商人のために国を作り上げる!」

大商人「いずれは、一商人に過ぎなかった私が世界の一端を握ることとなぁる!」

大商人「想像しただけで笑いが止まらんわ!」

隊長(さまざまな勢力が入り乱れ、次々と戦争の英雄といわれる人間が誕生し)

隊長(どの国のどんな権力者も、明日の戦況さえ読みかねているという時に……)

隊長(すでに戦乱が落ちついた後の自分の地位を見据えているとは……)

隊長(恐ろしい方だ……)
70: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 02:23:52 ID:H9xmQ5kc
隊長「では出発いたします」

大商人「うむ、頼むぞ」

大商人「くれぐれもいっておくが、無理に奴らの戦闘に介入するな」

大商人「“実績”にお前たちが手を下したという事実は必要ないのだ」

大商人「奴らの死体そのものの方が重要なのだからな」

隊長「はっ、心得ております!」



隊長「頼むぞ、お前の鼻で奴らの死体を全て見つけ出すのだ!」

猟犬「グルル……」クンクン…





大商人による私兵の投入で、呪いの剣争奪戦は新たな局面を迎えることとなる。
73: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/14(火) 12:10:30 ID:NTqsE2T.
大剣士よくやった
74: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 01:14:27 ID:cjEK9W4k
剣士に敗北した鎖剣士は、ようやく動けるぐらいにまで回復していた。

鎖剣士「この体じゃ登山はキツイ……。やっぱり剣は諦めて、下山するか……」

ところが──

鎖剣士「!」ピクッ



ズラッ……

隊長「鎖剣士、だな?」

鎖剣士「なんだアンタら? オイラになにか用かい?」

隊長「なぁに簡単な用件だ……すぐ済む」

隊長「死んでもらう」
75: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 01:17:20 ID:cjEK9W4k
鎖剣士「へっ、あの大商人め……そういうことか」

鎖剣士「何が狙いかは知らねえが、最初からオイラたちを殺すつもりだったってわけか」

鎖剣士「この傷じゃ勝ち目はねぇし、せめて痛くないように殺して──」

ヒュンッ!

不意を突き、隊長に刃を投げつける。

キィンッ!

鎖剣士「!」

隊長「かなりの重傷だというのに、なかなかいい不意打ちだったぞ」

隊長「さすがはこの争奪戦に参加しただけのことはある」

隊長「では……用件を済ますとしようか」

隊長「全員、かかれっ!」

鎖剣士「オイラを……なめるなよォ!」
76: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 01:20:15 ID:cjEK9W4k
鎖剣士といえど、傷ついた状態で一対六では勝負にならなかった。

ドザァ……

鎖剣士「ぐ、あぁ……」ググッ…

隊員A「しぶとい奴め」

ドシュッ!

トドメを刺され、鎖剣士は絶命した。

隊員A「こいつはどうします?」

隊長「死体を運ぶのは手間だ。防腐処理とマーキングだけしておけ。後で回収する」

隊員A「はっ!」

隊長「引き続き、残る剣士の捜索にかかる! 一人残らず回収するんだ!」

猟犬「グルゥ……」クンクン…
77: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 01:23:42 ID:cjEK9W4k
兄弟剣士に勝利し、頂上を目指す槍使い──

槍使い「…………」

槍使い(少し前から、山全体の空気が変わった……)

槍使い(もしや、新手が山に入ったか……?)

槍使い「!」ハッ

ヒュバァッ!

不可視の斬撃が、槍使いの首を狙う。

しかし、警戒を強めていた槍使いは本能的にかわすことができた。

槍使い(なんだ、今のは……)

無剣士「ンだよ、かわしてんじゃねえよ」

槍使い「お前は……(たしか、無剣士だったか)」ザッ…

無剣士「アンタもしょせんは時代遅れタイプっしょ?」

無剣士「二度目はないよ。とっとと死んでね~」
78: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 01:28:18 ID:cjEK9W4k
無剣士「ふんふ~ん」ヒュヒュッ

無剣士が刀身のない剣を振り回す。

槍使い「…………」グッ…



一般的な戦士であれば──

ここで無剣士がどんな攻撃をするか見極めようとするだろう。

相手が何をするかも分からない状況で、うかつな攻撃は死を招く。

そう、普通ならばそれが正解である。



槍使い(だが──)

槍使い(私の突きは世界最強! 何かをする前に、射抜くッ!)

ギュオッ!

無剣士「な!」
79: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 01:34:20 ID:cjEK9W4k
ズドォッ!!!



無剣士「げ、はっ……! こ、こんな……」グラッ…

槍使いの突きは、無剣士の心臓を貫いていた。

ドザァ……

槍使い「…………」

槍使い(剣の柄から、うっすらと細く透明なワイヤーが出ている)

槍使い(そうか、これが“刃のない剣”の正体というわけか)

槍使い(もし、山全体の空気が変わらず私が警戒を強めていなければ……)

槍使い(もし、私が突きを出さず、後手に回っていれば……)

槍使い(私の首はこのワイヤーの餌食になっていただろう)

槍使い(しかし、その“もし”は起こらなかった……私の勝利だ)

槍使い(さぁ、もうすぐ頂上だ)ザッ…
80: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 01:38:15 ID:cjEK9W4k
同じ頃──

盲目剣士「うへぇ~、すごい殺気!」

盲目剣士「まるで私の目が見えるようになったかのようだよ! こりゃたまげた!」

殺剣士「オマエは強い」

殺剣士「おそらく……オレが今まで出会った中で一番だ」

殺剣士「だから……こ、こここ、こ、こ、こ」ビクビクッ

殺剣士「コロすゥゥゥゥゥッ! オレ、オレがァァァ! ──ガァッ!」ダッ

盲目剣士「……こりゃ難敵だね」

ビュアッ! ガキンッ!

殺剣士の一閃をなんなく弾き返す盲目剣士。
81: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 01:41:58 ID:cjEK9W4k
キィン! ギィン!

ザシュッ!

先に一撃入れたのは、盲目剣士だった。

殺剣士「おうっ……!」ヨロッ…

殺剣士「痛い……。オマエ、本当に見えてないのかァ……?」

盲目剣士「ああ、見えてないよ」

盲目剣士「私は生まれた時から、ずっと暗闇しか知らないんだ」

シュババッ! キィン!

殺剣士「見えてないのに……つ、強いィ……!」



ならばなぜ、盲目剣士は戦えているのか。

それは、彼自身の鋭敏に発達した肉体や神経による恩恵、に他ならない。

常に全身の全感覚が、周囲の情報を取り入れ続けているのだ。
82: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 01:44:26 ID:cjEK9W4k
もちろん、こんな膨大な情報処理を、意識的にできるわけがない。

盲目剣士の体は、半ば本人の意志から離れて行動しているともいえる。



──本人が自分の動きを「勘によるもの」と感じてしまうほどに。



盲目剣士「そっち!」

ザシュゥ……!

激しい攻防の末、殺剣士の肩を盲目剣士の剣が切り裂いた。

殺剣士「ギィヤァァァァ……!」ザッ…

盲目剣士「お、当たった!」
83: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 01:47:18 ID:cjEK9W4k
殺剣士の肩から血が噴き出す。

盲目剣士(今のは手ごたえある感触だった……けど!)

殺剣士「グ……!」

殺剣士「こ、これだァ……!」

殺剣士「痛いし、熱いし、血ィ出てる……すっごくイイ!」

殺剣士「あ~……」ビクッビクッ

盲目剣士「!」

殺剣士「こ、こここ、こ、こっ、ここっ、コロすゥゥゥゥゥッ!」

盲目剣士(まだ……やれるのか! いや、むしろ殺気は高まって──)

殺剣士「コロすッ!!!」

盲目剣士「!?」ビクッ
84: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 01:50:42 ID:cjEK9W4k
殺剣士の尋常ではない殺気に、盲目剣士の鋭敏な五体が反応してしまう。

盲目剣士(なんだこれは!?)

盲目剣士(彼の……彼の殺気しか感じない! 彼はどこにいるんだ!?)

盲目剣士(いや……ハッキリと見える……!)

殺剣士「コォォォロすゥゥゥゥゥッ!!!」



ズバンッ!!!



殺剣士の剣が、盲目剣士の左肩から腰までをバッサリと叩き斬った。

盲目剣士(楽し、そうな……彼の顔、が……)

ドチャッ……
85: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 01:53:34 ID:cjEK9W4k
死闘の末、盲目剣士を斬り殺した殺剣士。

殺剣士「…………」

殺剣士「……んはぁっ」ブルッ…

殺剣士「よかった……」

殺剣士「やっぱり、今日はここに来てよかった……」

殺剣士「目ェ見えないのに、あんな強いとか……いいわァ……」ポッ…

殺剣士(さて、さらに上を目指せばもっと強いのに会えるかも……)チラッ

殺剣士(……いや)

殺剣士(ここはむしろ──)ギロッ

その目は、山の下を向いていた。
86: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 01:55:39 ID:cjEK9W4k
その頃、杖剣士は──

杖剣士「え~と、次はどっちだ?」スッ…

パタッ

杖剣士「こっちかぁ~」

杖剣士「もうそろそろ頂上だな」

杖剣士「おっとと、石につまずきそうになった」

順調に山を登っていた。
87: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 01:59:08 ID:cjEK9W4k
剣士もまた、頂上まであと少しというところまできていた。

剣士「ふぅ、ふぅ、ふぅ」

剣士(もう少し、だ……)



すると──

剣士「!」

槍使い「!」

剣士(槍使い……! こんなところで出会うなんて……!)
88: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 02:04:34 ID:cjEK9W4k
槍使い「ふむ、身のこなしで分かる」

槍使い「……お前がかなりの使い手だとな」ブオンッ

槍使い「いざ勝負」スッ…

剣士「受けて立つ!」チャキッ

剣士(もうすぐ頂上だってのに、こんな強敵と当たることになるとは!)

剣士(剣では槍に不利……というが、俺は何度も槍の使い手に勝ってきた!)

剣士(ただしそれはせいぜい、一流や二流って相手だった)

剣士(それに比べてこいつは──まちがいなく超一流!)

剣士(勝てるか……!?)ジリ…

槍使いのスキのない構えに、冷や汗をかく剣士。



勝利の女神はどちらに微笑むのか──
89: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 02:07:09 ID:cjEK9W4k
そして、女剣士と鎧剣士も頂上に近づいていた。

女剣士「ハァ、ハァ……」

鎧剣士「大丈夫ですか、姫様!」

女剣士「ええ、平気よ……」

女剣士「なんとしても、あの剣を手にしないと……!」

女剣士「そして、こんなバカげた殺し合いも終わらせるの……!」

鎧剣士(姫様は優しいお方だ……)

鎧剣士(絶大な力を持つ剣の力で、戦乱にあえぐ人々を救おうと考えておられる……)

鎧剣士(だから私は、なんとしても姫様を守り抜く!)
90: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 02:11:32 ID:cjEK9W4k
鎧剣士が気配に気づく。

鎧剣士「何者か!」

仮面剣士「……バレちまったカ」ガサッ…

仮面剣士「まぁイイ。頂上まであと一歩だが、ここでキミたちはリタイアダ」チャキッ

鎧剣士「そうはいかん!」チャキッ

鎧剣士「我々はなんとしても、頂上まで登るのだ!」

鎧剣士「姫様は下がっていてください」

女剣士「分かったわ……気をつけてね!」

鎧剣士と仮面剣士の戦いが始まる。
91: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 02:15:31 ID:cjEK9W4k
私兵隊も着々と仕事をこなしていた。

隊長「全員、止まれ」

隊長「状況を整理する」

隊員A「今のところ……確認、処置を施した遺体は全部で11体」

隊員A「鎖剣士、暗黒剣士、大剣士、短剣士、鏡剣士、兄剣士、弟剣士、格闘剣士」

隊員A「曲刀剣士、ヒゲ剣士、眼鏡剣士、です」

隊員B「うち、鎖剣士、曲刀剣士、眼鏡剣士は我々の手で殺害しましたがね」

隊長「残り9体か、順調だな。では引き続き──」

猟犬「…………」ブルブルッ…

猟犬「ワン、ワン、ワォォォォンッ!」

隊長「──む」



殺剣士「戻ってみてよかったァ……」ザッ…
92: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/15(水) 02:19:39 ID:cjEK9W4k
殺剣士は私兵隊の存在に感づき、山を下りてきていたのだ。

殺剣士「やっぱりこの山は、イイ……」

殺剣士「強そうなのが、ひいふうみい……6人もいる」

殺剣士「6人も殺せる……」

殺剣士「コ、コ、コロせるゥゥゥゥゥ!」



隊員A「なっ……!」

隊員B「殺剣士……! わざわざ山を下りてきたのか……!?」

隊長「うろたえるな!」

隊長「狂犬め……キサマの懸賞金はこの山にいる剣士の中でもずば抜けて高い」

隊長「ここで狩らせてもらう」
99: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/16(木) 00:34:19 ID:0VQBXfQ6
隊長「フォーメーションを組め! 一気に討ち取るぞ!」

バババッ!

隊長を含めた六人が、殺剣士を囲む。

次の瞬間──

バシュッ!

隊員A「──え?」

殺剣士「囲まれるまで待ちきれなくて、斬っちゃったァ……ゴメン」

隊員Aの両腕、肘から先がなくなっていた。

隊員A「う、うわぁぁぁぁぁっ!」

ズバンッ!

隊員Aの顔面が真っ二つになった。

殺剣士「一人目ェ~」

隊長(バカな……とんでもない速さだったぞ! コイツも傷を負っているのに!)
100: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/16(木) 00:37:26 ID:0VQBXfQ6
猟犬「キャンキャン、キャンッ!」スタタタッ

殺剣士に怯えて、逃げ出す猟犬。

隊員B「あっ、コラァ!」

隊員C「放っておけ! フォーメーションを崩すな!」

殺剣士「イヌは……どうでもいっか。それよりもやっぱりオマエたちだ」ハッハッ…

隊員B「おのれ、我々を見くびるなよ!」

隊員C「狂犬め!」

殺剣士「コロすゥゥゥゥゥゥッ!!!」

隊員B&C「!?」ビクッ

ドバッ! ザクッ!

隊員BとCも、あっという間に斬殺された。
101: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/16(木) 00:41:04 ID:0VQBXfQ6
隊員D「ウソだろ……!? 俺たちは大商人さんの私兵でも精鋭中の精鋭なんだ!」

隊員D「あんなイカれた奴に……!」

隊員E「隊長、指示をください! ──隊長ッ!」

隊員E「…………?」

隊員E「あ、あれ隊長がいないぞ!?」キョロキョロ

殺剣士「逃げたヤツより……今いる奴だなァ~」

隊員D「ちくしょう……! 隊長め、俺たちを見捨てて逃げやがったァ!」



ザシュッ……! ズシャアッ……! ギャアァァァ……!
102: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/16(木) 00:44:45 ID:0VQBXfQ6
全速力で山を駆け上る隊長。

隊長(すまんな、お前たち……)

隊長(隊員が一人やられた瞬間、俺には分かってしまったのだよ)

隊長(あの殺剣士は規格外だ! たとえ俺でも歯が立たん!)

隊長(まさか、あれほどの怪物だったとは……!)

隊長(だが、このままでは終わらんぞ!)

隊長(こうなれば……呪いの剣の伝説にすがるしかあるまい!)

隊長(俺があの呪いの剣を手に入れて、残る剣士を全滅させてくれる!)

隊長(これも任務を遂行するためだ、許せよ……)

タッタッタ……
103: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/16(木) 00:48:55 ID:0VQBXfQ6
剣士VS槍使い──

槍使い「はあっ!」

ボッ! ボボッ! ボッ!

槍使いの突きのラッシュに、剣士は全く懐に入れない。

剣士「ぐうっ……!」

剣士(やはり……今までに戦った槍の使い手とは比べ物にならない!)

剣士(だが、このぐらいの速さなら、斬り込むスキはある!)

剣士(呼吸を整えるために、ラッシュが途切れる一瞬──)

槍使い「…………」ススッ…

剣士(今だっ!)ダッ
104: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/16(木) 00:53:53 ID:0VQBXfQ6
剣士(い、いやっ……!?)ビクッ



ビュオッ!!!



槍使い全力の“世界一の突き”が、剣士の寸前で止まっていた。

剣士(なんてスピードと迫力だ……! もう一歩踏み込んだら死んでた……!)

剣士(これが……世界トップクラスの槍技!)

槍使い「見せかけのラッシュに引っかからなかったか、さすがだ」ブウンッ

槍使い(やはり、この争奪戦に参加したのは正解だった)

槍使い(よき剣士に会うことができる……)ニッ…

剣士(笑っていやがる……)ゴクッ…
105: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/16(木) 00:56:07 ID:0VQBXfQ6
ビュッ! ボババッ! ボボッ!

速さを増したラッシュに、剣士は近づくこともできない。

槍使い「どうした、逃げるだけか?」

剣士(挑発には乗らない! 逃げるのをやめたら、待つのは死だ!)

槍使い(乗ってこんか……ならば、私も)ピタッ…



両者、動かなくなった。
106: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/16(木) 01:00:04 ID:0VQBXfQ6
剣士(槍使いの真の恐ろしさは、おそらく本気であろうさっきの“一撃”だ)

剣士(あれをどうにかできるかで、全てが決まる!)

槍使い(いい面構えだ……)

槍使い(“一撃”で仕留める!)



シ~ン……



……

…………

………………



槍使い(踏み込むッ! ──今ッ!)
107: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/16(木) 01:03:40 ID:0VQBXfQ6
“世界一の突き”が放たれる。



ビュオッ!!!



キィィィンッ!

かろうじて剣士が刃で受けるが、体ごと弾かれてしまう。

剣士「ぐおっ……!」

槍使い(いや、ちがう! これは──)

剣士「うおおおおおっ!」ギャルッ

槍使いの突きを受けた勢いを利用して、斬りかかる。

剣士(直線の動きには、回転の動きで対抗するッ!)

槍使い(カウンターかッ!)
108: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/16(木) 01:08:39 ID:0VQBXfQ6
バキィッ!

槍使いは伸び切った槍を即座に横方向に払い、剣士の頭に一撃を浴びせた。

槍使い「残念だったな──」

しかし、剣士はひるんではいなかった。

剣士(まだッ!)ギロッ

槍使い「────!?」

槍使い(コイツ、最初からこの一撃は喰らうつもりでッ!)

剣士(飛ぶなよ、意識……今斬れなきゃ、負けるッ!)グンッ…

ズシャッ!

槍使い「ぐおぉっ……!」ガクッ

槍を落とし、膝をつく槍使い。




一撃で決めるという決意と、一撃はもらうという覚悟──

今回は後者に軍配が上がった。
109: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/16(木) 01:12:02 ID:0VQBXfQ6
剣士「アンタに“本気の突き”を、二度出させる展開になったのはラッキーだった……」

剣士「あんなの初見でどうにかできるもんじゃないからな……」

槍使い「勝負に“もし”は、ない。お前の……勝ちだ」

剣士「……んじゃ、俺は行くよ」

槍使い「…………」

槍使い「ひとつだけ……いわせてくれ」

剣士「?」

槍使い「何かを一度見る、ことが有利になるのは戦いだけに限らない……心して行け」

剣士「ありがとう!」



剣士(ぐっ……頭がまだグラグラするが──急がないと!)ヨロッ…
110: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/16(木) 01:15:07 ID:0VQBXfQ6
鎧剣士VS仮面剣士──

キィンッ!

鎧剣士の剣技は、仮面剣士を一歩も二歩もリードしていた。

仮面剣士「チィッ……」

鎧剣士「そろそろ決めさせてもらう!」ジャキッ

仮面剣士「それはどうかナ……?」

仮面剣士は刃を鎧剣士に向けた。

格闘剣士を倒した時と同じ、剣の先端を相手に向けた構え。

仮面剣士「我が秘剣……受けてみヨ」

鎧剣士「!」
111: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/16(木) 01:18:38 ID:0VQBXfQ6
チュインッ!

鎧剣士は飛んできた“何か”を弾いた。

仮面剣士「ナ……!?」

女剣士(なにが起きたというの!?)

鎧剣士「やはり……私が昔戦ったことのある部族と同じ構えだった」

鎧剣士「……吹き矢を得意とする部族と」

女剣士「吹き矢……!?」

鎧剣士「ええ、さっきの仮面剣士の構え……」

鎧剣士「あれは剣の構えではありません。吹き矢の構えです」

鎧剣士「つまり、仮面剣士の剣は、剣でもあり矢を放つ筒でもあるのです」
112: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/16(木) 01:23:05 ID:0VQBXfQ6
鎧剣士「そして……仮面をつけているのは剣をくわえるところを隠すため……」

鎧剣士「矢には、おそらく猛毒が塗られているのでしょう」

鎧剣士「これが奴の“秘剣”の正体です!」

仮面剣士「ククク、見事ダ……」

仮面剣士「だが、タネが分かったところでワタシには勝てないヨ!」

フヒュッ! フヒュッ!

再び小さな矢が鎧剣士を襲う。

だが──

キンッ! キンッ!

鎧剣士「無駄だ……。“秘剣”でなくなった今、私には通用しない」

仮面剣士「くうっ……!」
113: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/16(木) 01:26:34 ID:0VQBXfQ6
仮面剣士「だったら──」サッ

女剣士「!」ビクッ

仮面剣士「こっちの女を先に──」

鎧剣士「させぇんっ!!!」



ズシャアッ!



怒りの剣が、仮面剣士を仮面ごと叩き斬った。

仮面剣士「げ、ハッ……!」ドサッ…

鎧剣士「姫に手を出す者は、この私が絶対に許さん!」

鎧剣士「さぁ、姫様……参りましょう!」

女剣士「うん!」
114: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/16(木) 01:30:35 ID:0VQBXfQ6
─ 山頂 ─

争奪戦はいよいよ最終局面を迎えようとしていた。



杖剣士「やっとこさ着いた……あれが“争いを呼ぶ剣”か」

杖剣士「すごい力を発している……。ぼくの剣とは大違いだな」

杖剣士「おっと、その前に──」スッ…

パタッ

杖剣士の剣は、呪いの剣とは逆方向に倒れていた。

杖剣士「やっぱり……」
115: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/16(木) 01:33:20 ID:0VQBXfQ6
杖剣士「ぼくには剣を引き抜く資格がない、ということか……」

杖剣士「だけど、ぼくにそれをたしかめさせるつもりで、ここまで導いてくれたのかな」

杖剣士「どうも、ありがとう」クルッ

ザッザッザッ……




こうして、杖剣士は山頂から去っていった。
116: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/16(木) 01:36:52 ID:0VQBXfQ6
残るは五人──



剣士「あと少しだ……俺が剣を引き抜く!」ザッザッ…



殺剣士(上に行けば……まだ強い奴を殺せるチャンスがあるはず!)ダダダッ



鎧剣士「姫様、ようやく山頂が見えてきました!」

女剣士「ええ!」ハァハァ…



隊長(俺が剣を引き抜いて、剣士どもを皆殺しにしてくれる!)ザッザッ…
120: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 01:19:04 ID:oPPGtm3A
─ 山頂 ─

杖剣士が去ってから15分後──三人の剣士が同時にたどり着く。



剣士(よし、頂上だ!)ザッ



鎧剣士「姫様、あと少しです! さ、手を!」グイッ

女剣士「うん……!」ヨロヨロ…



剣士(あの二人は……!)

鎧剣士「む……」

女剣士「あなたは……!」
121: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 01:22:08 ID:oPPGtm3A
剣士(鎧剣士と女剣士! ……この二人、仲間同士だったのか!)

剣士(走って先に剣を引き抜くことはできるかもしれないが──)

剣士(ここは正々堂々と……!)

剣士「アンタら……鎧剣士と、女剣士だよな?」

剣士「どうやら俺たちが一番乗りらしい……勝負だ!」

鎧剣士「!」

鎧剣士(先に引き抜こうと思えば、できるかもしれんというのに……)

鎧剣士「望むところ!」ジャキッ

鎧剣士「姫様、下がっていてください。おそらくこれが最後の戦いとなるでしょう」

女剣士「ええ……!」スッ…
122: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 01:26:46 ID:oPPGtm3A
どちらが呪いの剣を引き抜くか決めるべく、両雄が向き合う。

鎧剣士「最初に聞いておきたい……あの剣を引き抜く目的は?」

剣士「なんで、そんなことを聞く?」

鎧剣士「キミがやろうと思えば、走ってあの剣を引き抜くこともできただろう」

鎧剣士「だが、やらなかった」

鎧剣士「そんな男の目的を、ぜひ聞いてみたくなったのだ」

剣士「…………」

剣士「俺は元々戦災孤児でね。剣だけで世の中を渡り歩いてきた……」

剣士「そんな中で、戦火に苦しむ大勢の人々を見てきた」

剣士「だが、あの剣があればその力でそういう人たちを救えるかも……と思ったのさ」

鎧剣士(姫様とまったく同じことを……)
123: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 01:31:15 ID:oPPGtm3A
鎧剣士(できれば戦いたくはない……が、姫様のため!)

鎧剣士「私は、とある王国の騎士だ」

鎧剣士「察しはつくだろうが、後ろにいるあの方に、私はお仕えしている」

剣士(現役の騎士……! つまり、後ろの女剣士は……貴族、あるいは王族……!)

鎧剣士「我々はこの戦乱の世を救う手段を求めて、国から旅立った」

鎧剣士「そしてあの剣が手に入れば……本当に力があるのならば──」

鎧剣士「その力で人々を戦や略奪から守れると考えたのだ!」

鎧剣士「我々とて目的のためには引けぬ! ──いざ!」ジャキッ

剣士「望むところだ!」



ギィンッ……!
124: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 01:34:04 ID:oPPGtm3A
剣士「でやぁっ!」

鎧剣士「はああっ!」

キィンッ!

ガキンッ! キィン!

激しい剣の打ち合い。形勢はやや剣士が不利。

剣士(くっそ、槍使いの一撃で動きがにぶくなってる!)

鎧剣士(本調子ではないようだが……手加減はせん!)

鎧剣士(姫はあの剣で、一人でも多くの民を救おうとしているのだから!)

ガキィンッ!

鎧剣士のパワフルな一撃で、剣士が大きく吹き飛ばされた。

剣士「ぐあっ……!」
125: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 01:38:21 ID:oPPGtm3A
剣士(まだ手がシビれてる……)ビリビリ…

剣士(騎士の剣ってのは、様式美に染まっているところがあるが、派手で力強い!)

剣士(しかもコイツ、鎧で全身を固めてるくせに速い!)

剣士(さすが……王国の要人を一人で護衛してるだけのことはある!)

鎧剣士「ぬああっ!」

ガゴォンッ!

剣士「くうっ!」ビリビリ…

鎧剣士(この男の剣技、オーソドックスではあるが、したたかさも兼ね備えている)

鎧剣士(おそらく、かなりの数の実戦をこなしてきたのだろう)

鎧剣士(スキを見せれば、たちまち逆襲を許す恐れがある!)

鎧剣士(押してはいるが、油断大敵!)
126: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 01:42:52 ID:oPPGtm3A
白熱する剣士と鎧剣士の戦い。

ギィンッ! キィンッ! キンッ!

剣士「ハァ、ハァ、ハァ……」

鎧剣士(疲れてきてはいるが、この男は長引くほど力を発揮するタイプ!)

鎧剣士(ここで決めねば、危険だ!)ザリッ…

鎧剣士が斜め上に剣を振りかぶる。彼が所属した騎士団に伝わる、攻撃に特化した構えだ。

剣士(決めるつもりか……!)



いよいよ二人の勝負が決しようという──その時であった。



山頂に“四人目”が現れた。

ザッ……!
127: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 01:47:59 ID:oPPGtm3A
現れたのは、殺剣士から逃れてきた私兵隊の隊長であった。

隊長「ほう……どうやら間に合ったようだな」ニィ…



剣士(なんだアイツは!? あんな奴いたか!?)

鎧剣士(参加者の中にはいなかった顔だが……)



困惑する二人を尻目に、隊長が目ざとく状況を確認する。

隊長(おそらくは──)

隊長(あの女剣士は、剣士か鎧剣士、どちらかのパートナーで)

隊長(今まさに、あの二人が呪いの剣をめぐって決闘しているということか!)

隊長(チャンスだ!)
128: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 01:51:52 ID:oPPGtm3A
隊長(今なら──俺があの呪いの剣を引き抜ける!)

隊長(そうすれば、この場にいる奴らはもちろん、殺剣士をも倒せるはずだ!)

隊長(なにしろ、世界一の力を得るというのだからな!)

隊長が呪いの剣を引き抜こうと走るが──

女剣士「させないわっ!」チャキッ

隊長「むっ!?」

キィンッ!

隊長の前に立ちはだかったのは女剣士。
129: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 01:54:10 ID:oPPGtm3A
女剣士も食い下がるが──

キィンッ! キンッ! ガキンッ!

隊長「ちいっ!」

隊長(いつ殺剣士が追ってくるかもしれんのだ! こんな小娘に手こずってられん!)

隊長「どけえっ!」ブンッ

ガキィンッ!

女剣士「あくっ……!」ドサァッ…

隊長「剣を引き抜いたら、すぐにトドメを刺してやる! そこで倒れていろ!」



鎧剣士「姫様ぁっ!」

剣士(くそぉ、あんな奴に横取りされるなんて!)
130: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 01:58:11 ID:oPPGtm3A
山頂の中心で、妖しく輝く呪いの剣──

隊長(大商人様はこの剣の力を信じていなかったし、俺もそうだったが──)

隊長(間近で見ると分かる! この剣は恐ろしい力を持っている!)

隊長(この剣を使えば、ここにいる奴らはおろか殺剣士にだって勝てる!)

隊長(そして……大商人様の下で俺も権力を握ってみせる!)

隊長「さぁ、今こそ俺の手で引き抜いてやろう! 呪いの剣よ!」

隊長「大商人様が、商人の国を築き上げるための力となるのだ!」



ガシィッ!

隊長の右手が、呪いの剣を掴み取る。



呪いの剣争奪戦の勝者は、私兵隊隊長であった。
131: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 02:01:08 ID:oPPGtm3A
ボワァッ……

隊長「え?」



ボワァァァァァッ!!!



剣から出た炎が、隊長の全身を包み込む。

隊長「!?」

隊長「な、なんだ!? 俺の体が──」

隊長「うあああああああっ!!! な、なんでええええええっ!!?」

隊長「うおああああああああああああっ!!!」



ボワァァァァァ……!
132: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 02:04:03 ID:oPPGtm3A
シュゥゥゥ……

隊長「あ……あ、あ……」プスプス…

隊長「あぁう……」グラッ…

ドサッ……

剣によって、隊長は焼き尽くされてしまった。



鎧剣士「も、燃えた……!」

剣士(どういうことだ……! アイツじゃ実力が足りなかったってことなのか!?)



しかし、彼らにそんなことを考えているヒマはなかった。

“最後の一人”が現れたのだ。



ゾクッ……
133: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 02:07:36 ID:oPPGtm3A
剣士&鎧剣士「殺剣士……!」



殺剣士「おやァ? 三人も残っててくれたなんて……」

殺剣士「三人も残ってるなんて……よ、よかった……」

殺剣士「まだ楽しめる……まだ殺せる……」ググッ…

殺剣士「こっ、ここっ、こここ、こっ、ここ、こっ、こっ……」ビクッビクッ

殺剣士「コロすゥゥゥゥゥッ!!!」



剣士(なんだ……!? ふもとで見た時は、こんなもんじゃなかった!)

鎧剣士(とてつもない殺気だ……! この男、人間なのか!?)



暗黒剣士、鏡剣士、盲目剣士、私兵隊と、数々の強敵を仕留めた殺剣士。

彼の殺気はさらに一段と凶悪さを増し、研ぎ澄まされていた。
134: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 02:10:36 ID:oPPGtm3A
殺剣士の凶相を目の当たりにした鎧剣士が、一つの決断をする。

鎧剣士「……剣士よ」ボソッ

剣士「!」

鎧剣士「キミにも分かるだろう? ヤツは危険だ……危険すぎる!」

鎧剣士「そして、ヤツの実力ならば……まちがいなく呪いの剣から認められる!」

鎧剣士「もしそうなってしまったら……どんな惨劇が起こるか想像もつかん」

鎧剣士「二人で……殺剣士を倒すぞ!」ジャキッ

剣士(たしかに……一対一でとても勝ちを見込める相手じゃない……!)

剣士「……分かった!」チャキッ

争奪戦で進化してしまった“怪物”を退治すべく、二人の剣士が手を組んだ。



殺剣士「二人がかりだとォ……!?」
135: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 02:13:22 ID:oPPGtm3A
殺剣士(どうやったら、あの二人を同時に相手できるかなぁ、なんて考えてたら──)

殺剣士(あっちから二人で来てくれるなんて……)

殺剣士(ツイてる……! 今日のオレはツキまくってるゥ!)

殺剣士「いいのだろうか! こんなにツイていて!? た、たまらん!」

殺剣士「ああ、あ、あ~~~~~……」ビクビクビクッ

殺剣士「こぉ~……こ、こここ、こ、こっ、ここ、こっ」ググッ…

殺剣士「コロすゥゥゥゥゥゥッ!!!」

ギュアッ!



鎧剣士「来たぞっ!」

剣士(速いッ!)
136: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 02:16:17 ID:oPPGtm3A
殺剣士「コロォォォすゥゥゥゥゥッ!!!」

ギィンッ! ガンッ! キィンッ! キンッ! ガギンッ!

凄まじい速さで、二人を同時攻撃する殺剣士。

鎧剣士「ぬうっ……!」

剣士「くあっ……!」

剣士と鎧剣士のコンビネーションは、息が合っていないというわけではない。

むしろ、即興にしては上出来といえる。

なのに──

殺剣士「もっと、もっと、もっとォ、攻めてこいィィィッ!」

ガギギィンッ!

剣士&鎧剣士(防戦一方!)
137: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 02:19:22 ID:oPPGtm3A
鎧剣士(これほどの男がいたとは……!)

鎧剣士(なぜ、これほどの強さを持ちながら、このような狂人に……!?)

鎧剣士(いや、狂人ゆえにこれほどの強さを持ちえたのか……!?)

剣士(くそっ……受けるだけで精一杯だ!)

剣士(殺剣士の体にも疲れやダメージはあるようだが、全然ものともしてない!)

剣士(頭が吹っ飛んじまって、そういう余計なもんを感じないんだろうな、きっと!)

キィンッ! ギィン! ガガガッ! ギャリッ! ギィンッ!

殺剣士(個々の強さは、あの目ェ見えてないヤツのが上だけど……)

殺剣士(コイツらも悪くない! むしろイイ! いいぞォ~~~~~!)

殺剣士(楽しいィ~~~~~~~~~~!)

ギャリィンッ!
138: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 02:22:24 ID:oPPGtm3A
ザシィッ! ビシュッ!

剣士「ぐあっ……!」

鎧剣士「ぐっ!」

殺剣士「コロす……コロす……」ハッハッ…

剣士「犬みたいな呼吸しやがって……」

剣士(信じられない……! どんどん動きのキレが増している!)

殺剣士「クォロォォォォすゥゥゥゥゥッ!!!」ギュオッ

ガィンッ!

剣士「ぐうっ!」ビリビリ…

バキャァンッ!

鎧剣士「ぐ、があっ……!」メキメキ…

白銀の鎧を砕く、強烈な一撃が炸裂した。
139: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 02:25:50 ID:oPPGtm3A
剣士「大丈夫か!?」

鎧剣士「ああ、致命傷ではない……」ヨロッ…

鎧剣士(……勝てぬ)

鎧剣士(もし、我々が敗れれば、姫様も亡き者にされるだろう……)

鎧剣士(──ならば!)

鎧剣士「剣士……!」

剣士「…………?」

鎧剣士「私がヤツを食い止める。キミが……あの呪いの剣を引き抜いてくれ!」

剣士「!」

鎧剣士「キミの方が私よりも速く動けるはずだ……頼む!」

鎧剣士「キミならば引き抜ける! 引き抜ければ……ヤツとて倒せるはずだ!」

剣士「アンタは死ぬぞ!」

鎧剣士「かまわん! 姫様をお守りすることが私の全てだ!」
140: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 02:28:54 ID:oPPGtm3A
鎧剣士(この男ならば、剣を悪用することはないだろう)

鎧剣士(いや、それどころか……姫と志を同じくしているのだから)

鎧剣士(きっと姫様とともに、この世界を光で照らしてくれるはずだ!)

鎧剣士(姫様のためならば──私は喜んで捨て石になろう!)

鎧剣士「さぁ、行け!」

剣士「……死ぬなよ!」ダッ



殺剣士「おやおやァ~? 逃がすかァ!」ダッ

キィンッ!

鎧剣士「ここは絶対に通さん!」ザッ…

殺剣士「いい目になったなァ、オマエ……」ニィィ…
141: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 02:31:54 ID:oPPGtm3A
自身の誇りと姫の命を剣士に託し──鎧剣士が決死の戦いに挑む。

鎧剣士「殺剣士よ……参るッ!」ジャキッ

鎧剣士「だああああっ!」

キィンッ! ビシュッ!

殺剣士「!」ブシュッ…

殺剣士「オレの血ィ~……ちぃ~、ちちちっ、ちち、ちぃ~、ちち、ちちち」

殺剣士「超ォ~……楽しいッ!」

ガギギンッ! ギンッ! ザシィッ!

鎧剣士「ぐ、あぁ……っ!」




剣士(やられてる……! だが、振り返るな!)タッタッタ…
142: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 02:34:58 ID:oPPGtm3A
ついに、剣士が呪いの剣と対峙する。

剣士(これが、呪いの剣……)

剣士(手にした者は世界一の力を手に入れられるという、争いを呼ぶ剣……!)

剣士(だが、俺はこの剣を“争いを呼ぶ剣”とは思わない!)

剣士(この剣を正しく使えば、争いを鎮め、人々を守ることだってできるはず!)

剣士「剣よ……! “争いを鎮める剣”よ! 俺はそれを成し遂げてみせるッ!」

剣士「頼む……力を貸してくれェッ!」



ガシィッ!



剣士の右手が、呪いの剣を力強く握り締めた。
143: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 02:39:20 ID:oPPGtm3A
剣士(これは──)ピクッ

ボワァッ……



ボワァァァァァッ!!!



剣士「うっ、うわぁぁぁぁぁっ!!!」



山頂の中心に、真っ赤な炎が燃え上がる。

先ほどの光景が、また繰り返されただけであった。



剣士「くあっ! うあぁっ! ぐわあぁぁぁぁぁ……!」
144: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 02:42:59 ID:oPPGtm3A
剣士「お、俺じゃ……」プスプス…

剣士「ダ、ダメだった、の……か……」プスプス…

剣士「おれ、じゃ……」グラッ…

ドザァッ……

呪いの剣の前に、剣士もあえなく倒れた。



鎧剣士(バカな! 彼の実力でも引き抜けないというのか!?)

鎧剣士(であれば、私でも無理……! つまり、引き抜けるのは──)

殺剣士「オオァッ!」シュバッ

ザンッ……!

鎧剣士「ぐごぁっ!」ドザッ…

殺剣士「アイツ、強かったのに……燃えちまった。もったいない」

殺剣士「だけど、燃える剣か……。オレも燃えんのかなァ?」
145: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 02:46:15 ID:oPPGtm3A
燃える剣士の姿に、好奇心を刺激された殺剣士が動く。

鎧剣士「い、いかん……!(ヤツが引き抜いてしまったら……!)」

殺剣士「おお~、古くさいけどよさそうな剣だなァ~」ザッザッ…

殺剣士「オレも燃えちまうのかな? どうなんのかなァ?」ザッザッ…

鎧剣士「や、やめ、ろ……!」ググッ…







「やめておきなさい、殺剣士!」
149: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 06:47:22 ID:8dnhLG5I
お姫様が何かに気づいたか
150: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/17(金) 16:07:23 ID:/w7FwiOM
まさか暗黒剣士!?
151: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 01:04:42 ID:Rha.0X9E
殺剣士を止めたのは、女剣士だった。

殺剣士「オマエは……?」

女剣士「いっとくけど、あなたじゃ焼け死ぬだけよ。前の二人みたいにね」

鎧剣士「姫様、お逃げ下さい! その男は危険です!」ググッ…

女剣士「今までは自信があったとはいえ100%とはいかなかったけど──」

女剣士「あの二人が焼け死ぬのを見て、やっと決心がついた、というか確信できたわ」

女剣士「この剣を引き抜く資格があるのは──あたしだけよ」

女剣士「こんなことなら、さっさと引き抜いておけばよかった」

殺剣士「ハァ~?」

殺剣士「オマエ、オレより弱いだろうがァ……」

女剣士「いいから、見ててちょうだい。どいて」ドンッ

殺剣士「…………!」

鎧剣士「ひ、姫様……!?」
152: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 01:07:10 ID:Rha.0X9E
女剣士「これね」

女剣士はすでに二人を燃やした剣を──

ガシッ!

あっさりと掴んだ。





殺剣士「おお……!?」

鎧剣士「ひ、姫様ァァァッ!!!」
153: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 01:10:05 ID:Rha.0X9E
女剣士(馴染む……よく馴染むわ……)





≪うむ……≫

≪おぬしこそ、我を持つに相応しい心を持っておる……≫

≪さぁ、引き抜くがよい……≫





女剣士「……やっぱりね」
154: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 01:13:07 ID:Rha.0X9E
ズルズルッ……

驚くほどあっさりと、呪いの剣は引き抜かれた。



女剣士「ふ~ん、なかなかいい剣ね」ギラッ…

殺剣士「オマエ、やるなァ……」ニィィ…



鎧剣士「…………!」

鎧剣士(姫様がご無事なのは、嬉しいが──)

鎧剣士(いったい、なぜ!? ……剣士でさえ引き抜けなかったのに!)

鎧剣士(いや……しかし!)

鎧剣士(たとえ、あの剣があっても……姫様では殺剣士に勝てん……!)

鎧剣士(殺剣士の強さは、剣や鎧がどうこうというものではないのだ!)

鎧剣士「姫……今、参り、ます……!」ググッ…
155: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 01:17:07 ID:Rha.0X9E
女剣士「さてと、さっそくだけど、殺剣士! あなた……あたしに力を貸しなさい!」

殺剣士「!?」

殺剣士「なにをほざいている? なんでオレがオマエなんかに……」

女剣士「あたし、あなたみたいな人に会えてホントに嬉しいのよ!」

女剣士「本当はあたし、こんな争奪戦はすぐに終わらせて」

女剣士「もっと大勢の剣士を味方に引き入れる予定だったの」

女剣士「集まった剣士のレベルが予想以上に高くて……そうはいかなかったけど」

女剣士「だけどあなたがいれば、百人力……いえ千人力、万人力だわ!」

女剣士「ここまでたどり着けないような人たちや」

女剣士「焼け死んだ二人なんかいらないくらいよ!」



鎧剣士「ひ、姫様……!?」

鎧剣士「なにをおっしゃっているんですか、姫様!」
156: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 01:21:29 ID:Rha.0X9E
女剣士「あなたがなぜ、そこまで戦いと殺しに快楽を見出してるのか……」

女剣士「病気か、信念か、生まれつきなのか……」

女剣士「ハッキリいって、そんなことはどうでもいいし、興味もないわ」

女剣士「だけど、このまま気ままに単独で戦いに明け暮れたところで──」

女剣士「いつかどこかで限界が来て、みじめにくたばるのがオチってところよ」

殺剣士「…………」

女剣士「だけど、あたしに従うのなら話は別よ!」

女剣士「強い者を……何百人でも、何千人でも、いいえ何万人でも!」

女剣士「好きなだけ殺させてあげるわ!」

殺剣士「!!!」



鎧剣士「姫……様……!?」
157: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 01:25:51 ID:Rha.0X9E
鎧剣士「姫様ァッ!」

女剣士「あら騎士。すっかり忘れてたわ、ごめんなさい」

鎧剣士「あなたは……あなたは! 世界の平和のために……人々を救うために……」

鎧剣士「力を欲していた、のではなかったのですか……!?」

女剣士「そうよ」

女剣士「あたしはこれから、世界をひっくり返す大戦争を巻き起こすの!」

女剣士「今、各地で起こってる小競り合いなんかとはわけがちがう……」

女剣士「何千、何万……いいえ、何十万、何百万と人が死ぬようなのをね!」

女剣士「そして、このあたしが──世界を統一するのよ!」チャキッ

剣を天に掲げる女剣士。

彼女の姿は、後光が差したかと錯覚するほどに輝いていた。



鎧剣士「ああ、ああああ……」

殺剣士「…………」
158: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 01:30:10 ID:Rha.0X9E
殺剣士は自然とひざまずいていた。

殺剣士(なんなんだ、この気持ち……)スッ…

殺剣士(この女の力か、あの剣の力か……。ええい、なんでもイイ! どうでもイイ!)

殺剣士(女剣士につけば、オレはもっともっと殺せるのだからなァ……)

殺剣士「オレの剣とオレの力……アナタに捧げる……」ザッ…

女剣士「ありがとう、頼りにしてるわ」

女剣士「これからあなたは、あたしの命令で人を殺すのよ!」

殺剣士「ハイ……!」

殺剣士の目は、まるで憑き物が落ちたかのように晴れやかであった。



鎧剣士(あああ……)

鎧剣士(姫様の持つ高貴なカリスマ性と、あの剣の妖力が合わさった“風格”が……)

鎧剣士(あの怪物すら、あっさりと従えてしまった……)
159: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 01:33:29 ID:Rha.0X9E
鎧剣士(そうか……やっと分かった)

鎧剣士(呪いの剣の正体は、紛れもなく“争いを呼ぶ剣”だった!)

鎧剣士(あの剣は……争いを起こし、世界を平和にするための剣!)

鎧剣士(そして、それを引き抜けるのは……)

鎧剣士(世界統一を、本気で成し遂げようとしている人間のみ……!)

鎧剣士(私も、殺剣士も、引き抜こうとすれば、体を焼かれていただろう……!)

鎧剣士(今日集まった人間の中で、いや全世界中で“資格”を持つのは──)

鎧剣士(おそらくは姫様しかいない!)

鎧剣士(今の慢性化し、弛緩した戦乱の世で、本気で世界統一など考えている人間など)

鎧剣士(いるわけがないのだから……!)
160: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 01:40:18 ID:Rha.0X9E
女剣士「それじゃ、さっさと山を下りるわよ」

女剣士「生き残っている剣士がいたら、仲間になるよう説得したいしね」

女剣士「ならないのなら、殺しなさい」

殺剣士「ハイ!」

女剣士「山を下りたら、あの大商人を味方につける!」

女剣士「最初に焼け死んだ人は、おそらく大商人の兵でしょうね」

女剣士「きっとこの争奪戦をおとりにして、なにかを企んでたにちがいないわ」

女剣士「ふふっ、なかなかのキレ者だわ!」

女剣士「大商人の知恵と財力があれば、かなりの兵をかき集められるはずよ」

殺剣士「従わなかったら?」

女剣士「斬ってちょうだい」

殺剣士「ハイ!」
161: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 01:43:02 ID:Rha.0X9E
女剣士「兵を集めたら、国に戻ってクーデターを起こす!」

女剣士「お父様なんかにかじ取りを任せておけないしね」

女剣士「幽閉するか……あるいは殺剣士に始末させた方が手っ取り早いかも」

女剣士「国の全権を掌握したら、いよいよ本格的な統一戦争の始まりよ!」

女剣士「周囲の国々も、あたしが本気で攻め込んだらきっと驚くでしょうね」

女剣士「そしたら、あなたも思う存分、殺しを楽しめるわよ!」

女剣士「強い者だけといわず、逆らうのなら弱い者もガンガン殺しなさい!」

女剣士「いいわね!」

殺剣士「あ、ああ、ああ、あァ~……」ビクビクッ

殺剣士「アリガトウございますゥゥゥゥゥッ!」
162: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 01:45:31 ID:Rha.0X9E
思い出したように、女剣士が鎧剣士に振り向く。

女剣士「ところで、騎士」

女剣士「あなたはどうする?」

鎧剣士「!」

鎧剣士(あの眼差し……私に対して、もはやなんの感慨も浮かべてはいない……)

鎧剣士(当然だ……。兵としてならば、私より殺剣士の方が遥かに役に立つ……!)

鎧剣士(もしここで拒否すれば……姫様はなんの迷いもなく──)

鎧剣士(殺剣士に、私を斬らせるだろう……!)

鎧剣士(姫様──)
163: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 01:48:51 ID:Rha.0X9E
姫『あたし、しょうらいは騎士とけっこんするの!』

姫『はやく平和な世の中になればいいのにね……』

姫『あたし、この国がだぁ~い好き! もっと豊かな国にしたいわ!』

姫『騎士……あたしと一緒に世界を平和にする力を探しに行きましょう!』



鎧剣士「ああ、あ……あ……」

十数年、姫のそばに居続けた鎧剣士──騎士の目からは涙があふれていた。

姫の成長を喜ぶ涙か、それとも──

鎧剣士「わ、わわ、私も……」ポロッ…

鎧剣士「私も……お供、しゃせて……下さい……!」ポロポロッ…

女剣士「よかった! 伴侶はあなたみたいに優秀で扱いやすい人にしたかったのよ!」

女剣士「新しいのを探すのは、手間がかかるしね」

鎧剣士「ひ、姫さまにそういってもらえるなら……う、嬉しいで、す……」
164: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 01:51:24 ID:Rha.0X9E
女剣士「さて……残るはあなたね」チャキッ

女剣士が、刃先を向けた先には──



槍使い「…………」

女剣士「あなたはどうする? この呪いの剣を奪い取ってみる?」

槍使い「いや……私はこの争奪戦の最後を見届けにきただけだ」

槍使い「お前たちと敵対する資格もないし、力も残っては、いない……」ザッ…

槍使い「それに……ここでお前に従わねば、その二人を私に差し向けるという顔だな」

女剣士「ふふっ、かもしれないわね」

槍使い「……従おう。これも、運命なのかもしれん」ザッ…

槍使いも、女剣士に屈服するしかなかった。
165: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 01:54:25 ID:Rha.0X9E
女剣士「さぁ、山を下りるわよ! 最初のターゲットは大商人!」

殺剣士「ハイ!」

鎧剣士「姫様の行くところ……どこまでも……」ヨロッ…

槍使い「…………」チラッ

山頂から出る寸前、槍使いは焼かれて倒れている二人を見つめた。

槍使い(剣士よ……残念だったな)

槍使い(だが、もし……あの二人のうち、最初に燃えたのが剣士でなければ……)

槍使い「…………」

槍使い(どちらにせよ、もう会うことはなかろうが、な)

ザッザッザッ……



この後、女剣士は覇道を突き進むこととなる。
166: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 01:58:16 ID:Rha.0X9E
……

…………

………………

杖の先が、倒れている剣士の胸を突く。

ドンッ……!

剣士「ごぶっ……!」

剣士「ハァ、ハァ……」ガバッ

杖剣士「おお、やはり鍛え方がちがうね」

杖剣士「ぼくは山を下りてたんだけど、この剣がやっぱり戻れと倒れるから」

杖剣士「戻ってみたら……きみが焼けてたもんでね」

杖剣士「おせっかいを焼かせてもらったよ」

剣士「そうだ……! 俺は死んだはず……!?」

杖剣士「うん、死にかけてたよ。もう少しおそかったら、死んでたかもねぇ」
167: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 02:01:21 ID:Rha.0X9E
杖剣士「もう一人の方は、残念ながら死んでいたけど……」

杖剣士「きみはかろうじて生きていた」

杖剣士「おそらく剣を握って燃える瞬間、身を引いたんだろう」

杖剣士「その一瞬が、きみの命を救った」

杖剣士「ただし、右腕のただれはひどくて、切断せざるをえなかった」

剣士の右腕は、杖剣士によって切断、処置されていた。

剣士「…………」

剣士「人が燃えるところを……一度見たのが、きいたんだろうな……」



槍使い『何かを一度見る、ことが有利になるのは戦いだけに限らない……心して行け』



剣士(あの言葉をもらってなきゃ……死んでただろう)
168: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 02:04:14 ID:Rha.0X9E
剣士「助けてくれてありがとう……。おかげで命を拾えたよ……」

剣士「だが……俺はもう……」

杖剣士「もう?」

剣士「俺は呪いの剣を“争いを鎮める剣”として活用しようとしたが──」

剣士「剣には認められなかったし……」

剣士「この体じゃ、争いを鎮めるとか、弱い人々を救うだとか、できるわけない……」

杖剣士「そうかな?」

杖剣士「たしかに、きみがこの戦いで得たものは、なあんにもない」

杖剣士「戦い、傷つき、疲れ、焼かれ、腕を失っただけ……」

剣士「…………」
169: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 02:07:20 ID:Rha.0X9E
杖剣士「だけど、あの剣を引き抜けなかったということは」

杖剣士「きみにはあの剣などなくても、目的を達する力があるということじゃないかな?」

杖剣士「あの剣は、たしかに恐ろしい力を秘めている」

杖剣士「あの剣を抜いたのが誰かは知らないが、おそらく目的を成就するだろう」

杖剣士「剣の力によってね」

杖剣士「だけど、きみなら……剣などなくても目的を達成できる」

杖剣士「きみが剣を引き抜けず、生き残ったのは、きっとそういうことなんだろう」

杖剣士「大火傷を負い、右腕を失うことにはなったが、ね」

剣士「ハハ……ポジティブシンキングの極みだな」

剣士「だけど……ちょっとだけマシになったよ」

杖剣士「そういってもらえると、ぼくも嬉しいよ」

杖剣士「へこまれたままじゃ、助けたかいがないからね」
170: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 02:09:57 ID:Rha.0X9E
しばらく、休息した後──

剣士「さて、と……それじゃもう行こうかな」スクッ

剣士「杖剣士、もしまた会えたら、アンタには必ず借りを返すよ」

杖剣士「なに、気にしなくていいよ」

剣士「命を助けられておいて、そうもいかないって」

会釈をして、剣士が山を下りようとする。

杖剣士「…………」

杖剣士「ちょっと待ってくれ」

剣士「ん?」
171: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 02:13:19 ID:Rha.0X9E
杖剣士「もし、ぼくの持っているこの剣(つえ)が──」スッ…

杖剣士「この山に刺さっていた剣と対を成す、“争いを鎮める剣”だとしたら」

杖剣士「きみは欲しいかい?」

杖剣士「もっとも対を成すといっても、この剣自体にさほど力はなく」

杖剣士「鎮めるべき争いに持ち主を導く、という程度のことしかできないけどね」

杖剣士「少なくとも、きみにはピッタリの剣のはずだ」

剣士「…………」

剣士「たしかに欲しいけど……俺は自分の力でやってみるよ」

剣士「さっき、そう決意したばかりだしさ」

杖剣士「どうやら無粋な質問だったようだね。さぁ、行くといい」

剣士「それじゃ、またどこかで……」

ザッザッザッ……



杖剣士「…………」
172: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 02:16:11 ID:Rha.0X9E
杖剣士(ぼくは昔、彼と同じように剣一本で人々を救いたいと考えていた)

杖剣士(そして……この剣を手に入れた)

杖剣士(この剣はぼくを争いのある場所に的確に導き──ぼくは戦い続けた)

杖剣士(しかし、今の戦乱の世……)

杖剣士(いくら人を救ってもキリがなく、ぼくはいつしか嫌気が差してしまった)

杖剣士(そして、ぼくの心を感じ取ったこの剣も変質し……)

杖剣士(この剣は“ぼく自身に降りかかる争いを鎮める”ようになった)

杖剣士(この剣がある限り、もうぼくが他人と争うことはない)
173: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 02:19:07 ID:Rha.0X9E
杖剣士(だけど、ぼくにも戦いというものに未練があったのだろう)

杖剣士(ぼくはあえて、この呪いの剣争奪戦という争いに身を投じた)

杖剣士(結局ぼくは誰とも戦うことはせず、争いも鎮められず──)

杖剣士(“争いを呼ぶ剣”も到底ぼくに扱える代物ではなかったけど……)

杖剣士(もうぼくが、剣士として表舞台に立つことはないだろう)

杖剣士(最後に、この剣がぼくを引き返させてあの剣士を助けさせたのは、もしかして)

杖剣士(彼なら……ぼくがやめてしまったことを、諦めたことをやってくれる、と)

杖剣士(この剣が導いてくれたのかもしれないな……)
174: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 02:22:11 ID:Rha.0X9E
おぼつかない足取りで、山を下りる剣士。

剣士「おっとと……」ヨタッ…

剣士(まだ右腕があるような感覚がある……早く慣れないとな)

剣士(それにしても、杖剣士のさっきの話はホントだったのかな?)

剣士(やっぱり、あの杖もらっておけばよかったかも……)

剣士(でもいいや。俺は自分の剣でやってやる!)

剣士(この争奪戦で犠牲になった剣士たちのためにも……!)




──────

────

──
176: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 02:26:48 ID:Rha.0X9E
“呪いの剣争奪戦”が終わった後の出来事──





女剣士こと姫は、大商人をパトロンとして迎え入れることに成功する。



大商人の財力で大勢の兵を雇い入れた彼女は、故郷に戻りクーデターを決行。
実父である国王を暗殺し、“女王”となり国の全権を握る。

驚異的な早さで軍備を整え、各国への侵攻を開始した彼女の軍勢に、
半ば堕落していた戦乱に慣れ切った者たちが面食らったことはいうまでもない。



これこそが後の世に「統一戦争」と呼ばれる、十年間の戦いの始まりである。
177: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 02:31:12 ID:Rha.0X9E
女王軍の進撃は苛烈を極めた。



中でも女王自ら編成したという精鋭軍の強力さと残虐さはすさまじく、
他国からは「悪魔よりも残酷で無慈悲な軍団」と恐れられた。

精鋭軍の中心的存在であった殺剣士は、
統一戦争中に単独で一万人以上殺害したともいわれている。

同時に、女王の側近であった騎士率いる騎士団の統治能力は優秀であり、
制圧・平定後に反乱が発生することはほとんどなかった。



この「アメとムチ」の使い分けこそが、
彼女の統一戦争がスムーズに運んだ主要因といわれている。
178: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 02:34:50 ID:Rha.0X9E
そして、戦争勃発から十年後──



女王は世界を統一し、全世界に“女帝”として君臨することとなった。
側近であった騎士を夫に迎え、親政を開始する。

剣を掲げた彼女の威光に逆らえる者は一人もいなかった。
彼女は文字通り、世界一の力を手に入れたのだ。



なお、世界統一とほぼ同時期に、武力面での功労者である殺剣士は謎の変死を遂げた。
公式発表では事故死とされているが、
女帝の命による暗殺とも、目的を失ったことによる自決とも噂されている。





そんな彼女たちの輝かしくも血にまみれた歴史の裏で──
179: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 02:39:11 ID:Rha.0X9E
─ 小屋 ─

右腕がなく、全身傷だらけの歴戦の勇士といった風貌の剣士。

隻腕剣士「行ってくるよ」

妻「あなた、今日はどちらへ?」

隻腕剣士「西の町を、兵士崩れの野盗集団がたびたび荒らしてるらしい」

隻腕剣士「女帝によって世界が統一されて久しいけど──」

隻腕剣士「真の平和はまだまだ遠いってことさ」

妻「気をつけてね……あなた」

隻腕剣士「すまないな……いつも心配ばかりかけて」

妻「いいのよ……。あなたのやりたいことを分かってて、一緒になったんだもの」

隻腕剣士「ありがとう」

隻腕剣士「だけど……同じ志を持つ仲間も増えてきた! 心配ないさ!」

娘「いってあっしゃーい」

隻腕剣士「ああ、行ってくる!」ザッ…
180: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/10/18(土) 02:46:02 ID:Rha.0X9E
隻腕剣士(俺にはあの呪いの剣を引き抜くことはできなかったけど──)

隻腕剣士(俺にだって自分の剣ぐらい、ある!)

隻腕剣士(左腕とこの剣がある限り──俺は戦い続ける!)





世界各地を渡り歩き、力なき人々を守る一人の剣士がいた。

歴史に名を残すことこそなかったが、

彼の活躍は「隻腕の英雄」の伝説として、末長く語り継がれることとなる。





                                   ─ 完 ─







剣士「呪いの剣争奪戦が始まる……!」
元スレ

テーマ : 2ちゃんねる
ジャンル : サブカル

マッチョ「オレって戦力外なのかな……」【オリジナルss】

1: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 21:16:35 ID:omCYAMfw
ああイヤだ。

もうイヤだ。

あいつらと一緒に戦うたび、オレはいつもこんな気持ちになる。



いったいいつからだろう……?

「オレって戦力外なのかな……」と思うようになったのは……。
2: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 21:19:18 ID:omCYAMfw
─ 秘密基地 ─

基地の通信装置に機密連絡が入る。

エスパー「……はい、分かりました! すぐ出動します!」ピッ

魔法少女「エスパーさん、どしたの?」

エスパー「みんな、政府から『メタル団』が町で暴れてるって連絡が入った!」

エスパー「出動するぞ!」

魔法少女「うん、分かった!」

メガネ「メタル団……彼らも懲りませんね」クイッ

マッチョ「…………」

エスパー「どうした、マッチョ?」

マッチョ「!」ハッ

マッチョ「い、いや、なんでもねえよ。今日こそ叩き潰してやろうや!」
3: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 21:22:16 ID:omCYAMfw
─ 町 ─

町中で暴れる、金属のような光沢を持つ怪人たち。

銀博士「ヒィ~ッヒャッヒャッヒャ! 暴れてやれい、鉄兵士ども!」

銀博士「メタル団の恐ろしさを、人間どもにたっぷり教えてやるのだ!」

銅巨人「壊せえ~! 壊しまくるんだぁ~!」



鉄兵士A「アイアーン!」ドガンッ

鉄兵士B「アイアイアイアイアーン!」バキッ

鉄兵士C「アイアン!」ガシャーンッ

鉄兵士D「アイアーンアーン!」ドガッ

ワァァ…… キャァァ…… ヒィィ…… ウワァァ……
4: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 21:25:16 ID:omCYAMfw
エスパー「やめろっ、メタル団!」ザッ

魔法少女「今日こそ決着をつけるよ!」フワッ…

メガネ「ボクの新兵器……試させてもらいますよ」クイッ

マッチョ「…………」ズンッ



銀博士「ヒィ~ッヒャッヒャ、来たか……エスパーども!」

銀博士「いつもいつもジャマをしてくれるが、今日はそうはいかんぞ!」

銀博士「鉄兵士も大幅にパワーアップしているからな、ゆけいっ!」バッ

鉄兵士A~D「アイアイアーンッ!」ズドドドッ



エスパー「来たぞ! みんな、絶対に奴らを食い止めるんだ!」サッ

エスパーたちとメタル団の戦いが始まった。
6: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 21:28:24 ID:omCYAMfw
エスパー「超能力でふっ飛ばしてやる! 必殺サイキックアタック!」ドウッ

ズドォンッ!

鉄兵士A「ア、イア……」ドサッ…



魔法少女「いっくよ~! マジカルサンダーッ!」バリバリッ

ズガァンッ!

鉄兵士B「ア、アイア……ン……!」バチバチ…



メガネ「先日開発した超小型兵器、ミクロボム!」ポイッ

鉄兵士C「アイアンッ!?」

ドゴォォォンッ!



三人はあっという間に鉄兵士を片付けてしまった。
7: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 21:31:34 ID:omCYAMfw
マッチョ「うおおおおっ! マッスルパンチ!」ブンッ

ガンッ!

マッチョ(ちっ、大して効いちゃいねえ……)

鉄兵士D「アイアーンッ!」ガシャンガシャン…

ドゴォッ! バキィッ! ガッ!

マッチョ「ぐっ……!」ヨロッ…

マッチョ(耐久力だけじゃなく、パワーも上がってやがる!)

マッチョ(ちょっと前まではオレの方が上だったってのによ!)
8: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 21:34:43 ID:omCYAMfw
マッチョが苦戦していると──

エスパー「マッチョ、下がっててくれ! 俺がやる!」

マッチョ「お、おう!」

エスパー(超能力で身体能力を強化!)シャキン!

エスパー「はああ……」

エスパー「必殺サイキックパンチッ!」シュッ

ズドォンッ!

鉄兵士D「アイアッ!?」ゲボッ…

鉄兵士D「ア、イア……ン……」ガクッ



銅巨人「うぅ~、やられちゃったよぉ~」

銀博士「信じられん……前回の戦闘データをもとに改良したのに!」

銀博士「エスパーどもの成長速度はワタシの計算を超えるというのか!」
9: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 21:38:15 ID:omCYAMfw
銀博士「だが、メタル団最強の幹部、銅巨人はこうはいかんぞ!」

銀博士「やれい、銅巨人!」

銅巨人「ウガァァッ! 叩き潰してやるぞぉ~!」ドドドッ

身長三メートル近い銅巨人による猛突進だが──



エスパー「連携サイキックコンビネーション!」

ドガッ! バキッ! ガッ! ガゴッ! ドズッ!

身体強化されたエスパーの連続攻撃に、銅巨人は手も足も出ない。

銅巨人「うぐぅ~……人間のくせにぃ~」



銀博士(くっ……銅巨人が押されている! ──やむをえん!)

銀博士「銅巨人、撤退だ!」

銅巨人「う、うん!」

ブオオォォォ……

二人は事前に用意していたマシンで、逃げてしまった。
10: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 21:42:30 ID:omCYAMfw
エスパー「またしても逃がしたか! あと一歩だったのに!」

魔法少女「ねえ、いっそのことこっちから攻め込む? これじゃキリないもん」

メガネ「それは無謀というものです」クイッ

メガネ「彼らのアジトは要塞ですから……攻め落とすのは困難です」

メガネ「今はこうやって少しずつ、彼らの戦力を削るしかないのです」

魔法少女「なるほど~、さすがメガネさん」

エスパー「俺たちの成長は、奴らの戦力増強を上回っているから心配ないさ!」



マッチョ「いてて……」

エスパー「あ、大丈夫か、マッチョ? 立てるか?」スッ

マッチョ「わ、わりぃな」ガシッ

エスパー「いや、かまわないさ。だって俺たちは仲間だろう?」

マッチョ「……そうだな。仲間だもんな、オレたちは──」

“仲間”という言葉を口にしたマッチョの顔にはかげりがあった。

マッチョ(オレたちは──……)
11: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 21:46:46 ID:omCYAMfw
オレたちは──

宇宙人や怪人といった、警察などの手に負えない未知の力を持つ悪人どもと戦う集団。

最初はボランティアだったが、今では功績を認められ政府公認の組織となっている。

メンバーは以下の四人だ。



リーダーである超能力者、エスパー

生まれながらに魔力を宿す女の子、魔法少女

天才メカニック、メガネ

筋肉自慢、マッチョ(オレ)



それぞれがちがった特技を持ち、それを生かして悪と戦っているんだ。
12: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 21:49:46 ID:omCYAMfw
初めのうちは──



エスパー「いくぞ、マッチョ!」ダッ

マッチョ「おう!」ダッ

メガネ「ボクは戦えませんから、後方から妨害音波を発します!」

魔法少女「アタシも、魔法でサポートするね!」

バキィッ! ドガァッ! ガスッ!

エスパー「ふぅ……マッチョのパワーは相変わらずスゴイな」

マッチョ「へへっ、なんたってそれだけが取り柄だからよ!」ムキッ…



頑強な肉体を持つオレと、強力な超能力を持つエスパーが攻撃役で、

メガネと魔法少女はサポートというフォーメーションだった。
13: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 21:53:08 ID:omCYAMfw
しかし、戦いを経験していくにつれて──



バリバリバリッ!

魔法少女「みてみて~! アタシの雷が、あんな大きな岩を砕いたよ!」

メガネ「ボクも研究と改良を重ね、かなり強力な兵器を開発しましたよ」クイッ

エスパー「おお! 二人とも、もう立派に戦えるな!」

マッチョ「や、やるじゃんか!」



魔法少女の魔力や、メガネのメカ開発力がメキメキ伸びていき、

二人ともオレと遜色ない戦闘力を発揮するようになっていった。
15: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 21:57:00 ID:omCYAMfw
いや、それどころかオレは──



異星人「きええええっ!」シュバッ

ザシュッ!

マッチョ「ぐわっ!」

エスパー「大丈夫か、マッチョ! 必殺サイキックパンチッ!」

ズガァッ!

異星人「ぐ、があっ……!」ドサッ

エスパー「平気か!?」

マッチョ「お、おう。オレとしたことが、ちょいと油断しちまったぜ」

エスパー「魔法少女とメガネも、どうにか敵を倒したようだ」

マッチョ「そ、そうか……そりゃよかった。へへへ……」



徐々に上がる戦いのレベルに、だんだんとついていけなくなっていった……。
16: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 22:04:34 ID:omCYAMfw
もちろん、再び三人に並ぶため、トレーニングを続けたが──



マッチョ「ふんっ!」ググッ…

マッチョ「ふぅ~……」ゴトン…

マッチョ(よっしゃ……10キロも記録を更新したぞ!)ハァハァ…

マッチョ「…………」

マッチョ(いや逆だ……。たったの10キロ、だ)

マッチョ「ここ数週間で、オレのベンチプレスはたったの10キロしか伸びなかった」

マッチョ「今やエスパーの奴は、大型トラックを超能力で転がせるってのに……」

マッチョ「他の三人の成長スピードに比べて……」

マッチョ「オレの……筋肉(オレ)の成長スピードはなんて遅いんだ!」



もはや追いかけることすら困難になっていた。
17: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 22:07:16 ID:omCYAMfw
「オレ、もう抜けていいかな?」何度いおうと思ったか分からない。



エスパー「みんな、メタル団っていうのが港を占拠してるらしい!」

魔法少女「メタル団? なにそれ?」

メガネ「すぐにデータを照合しましょう」カタカタ…

メガネ「ふむ……金首領、銀博士、銅巨人を中心とした悪の組織ですね」

メガネ「新興の組織ですが、手強いですよ」クイッ

魔法少女「へぇ~、さっすがメガネさん!」

エスパー「よし、みんな出動だ!」

マッチョ「……あの」

エスパー「どうした、マッチョ?」

マッチョ「い、いや何でもねえよ。メタル団とかいうのを、ブッ飛ばそうぜ!」



だけど、いえなかった。
18: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 22:10:22 ID:omCYAMfw
─ 秘密基地トレーニングルーム ─

マッチョ(……──いえなかった)グッ…

バーベルの上げ下げを繰り返すマッチョ。

マッチョ(結局そのままズルズルとここに居続け……)グッグッ…

マッチョ(今もこうしてトレーニングは重ねちゃいるが)グッグッ…

マッチョ(成長速度はますます落ちるばかり)グッグッ…

マッチョ(そりゃそうだ)グッグッ…

マッチョ(トレーニング時間に正比例して筋力がつくなら、苦労はねえ)グッグッ…

マッチョ(筋肉は、超能力や魔法、科学とはちがうんだ。限界ってもんがある)グッグッ…

マッチョ(あ~あ、もうやめたい……)グッグッ…

マッチョ(だけど、いえない)グッグッ…

マッチョ(あいつらから戦力外だからやめろっていわれるならともかく──)グッグッ…

マッチョ(自分からやめるなんざ情けなくってよぉ……)グッグッ…
19: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 22:12:45 ID:omCYAMfw
そんなある日、またも『メタル団』が現れたとの通信が入る。



─ 秘密基地 ─

エスパー「また町で暴れてるらしい! こないだやっつけたばかりなのに……」

魔法少女「なんだか、活動が活発になってきてるね」

メガネ「被害が広がらないうちに、食い止めなければなりませんね」クイッ

エスパー「もちろんだ。さあみんな、出動だ!」

マッチョ「…………」
20: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 22:16:29 ID:omCYAMfw
─ 町 ─

銀博士「ヒィ~ッヒャッヒャッ! 来たか! 今日という今日は負けんぞ!」

銅巨人「オイラたちの力を見せてやるぅ~!」



エスパー「それはこっちのセリフだ、メタル団! まず鉄兵士から片付ける!」

魔法少女「オッケ~!」

メガネ「任せて下さい」

マッチョ「……おう!」



銀博士(今日はまともにやり合うつもりはない)

銀博士(なんとしても、エスパーどもの“隙”を見つけねば……)

銀博士(あと一歩……あと一歩なのだ!)
21: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 22:20:21 ID:omCYAMfw
エスパー「必殺サイキックアタック!」ドンッ!

魔法少女「マジカルファイヤーッ!」ボワァッ!

メガネ「ミニバズーカ!」ズオッ!

ズガガガァンッ!

エスパーたちの猛攻で、鉄兵士軍団は全滅した。

銀博士「ぐ……鉄兵士たちがあっさりと……!」

銅巨人「ちくしょう、また負けかぁ~!」

銀博士「──ん?」



バキッ! ドゴッ! ガスッ!

鉄兵士E「アイアーンッ!」バキッ!

マッチョ「う、うげっ……!」ヨロッ…



銀博士「…………」
22: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 22:22:37 ID:omCYAMfw
エスパー「マッチョ、そいつは俺がやる! 下がっててくれ!」

マッチョ「お、おう!」

エスパー「必殺サイキッククラッシュ!」

ズオッ!

鉄兵士E「ア、イィィ……ア、ン……」ガクッ

エスパー「魔法少女、マッチョを手当てしてやってくれ!」

魔法少女「うん! マッチョさん、すぐ治すからね!」パァァ…

マッチョ「すまねえな……」

マッチョ(情けねえ……本当に情けねえ……!)



銅巨人「うぐぐ……最後の一人も粘ってたけどやられたかぁ~!」

銀博士「今日はもう勝てん。今のうちに退くぞ」スッ

銅巨人「分かったぁ~!」

銀博士(これは……思わぬ収穫かもしれんな)
23: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 22:26:04 ID:omCYAMfw
─ メタル団本拠地 ─

メタル団のボスである金首領が、幹部二人を叱責する。

金首領「バカどもめ!」

金首領「またおめおめと逃げ帰ってきたのか! これで何度目だと思っておる!?」

金首領「あのエスパーどもを倒さねば、日本征服など夢のまた夢ぞ!」

銀博士「申し訳ありません……金首領様」

銅巨人「ごめんなさぁ~い……」

銀博士「しかし、ご安心下さい」

銀博士「我々とて、ただ負けていたわけではありません」

銀博士「今までの戦いから、ようやくワタシにも勝利への道筋が見えました」

金首領「ほう……なにか考えがあるようだな、銀博士」

金首領「分かった、やってみせい。だが、今度失敗すれば次はもうないぞ!」

銀博士「ははっ!」
24: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 22:30:23 ID:omCYAMfw
─ 秘密基地 ─

エスパー「みんなもうすうす感づいていると思うが──」

エスパー「メタル団は度重なる敗北をへて、かなり焦っている」

エスパー「そろそろ、本格的な攻勢をかけてくるだろう」

エスパー「みんな、ここからはさらに気を引き締めよう!」

メガネ「了解です」クイッ

魔法少女「分かったわ!」

マッチョ「……おう」

マッチョ(鉄兵士一匹にすら歯が立たないオレが、気を引き締めたところで)

マッチョ(足手まといにもなりゃしねえ)

マッチョ(いったいなんでオレはここにいるんだろう)

マッチョ(パワー担当として輝いてた昔に、未練があるからなんだろうか)

マッチョ(再び輝けることなんて、あるわけないのによ……)
25: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 22:33:32 ID:omCYAMfw
─ 一般スポーツジム ─

マッチョ「ふんっ!」ググッ…

「うおっ!?」 「あんなデカイダンベルを軽々と……」 「腕ぶっといなぁ~」

ザワザワ…… ワイワイ……

マッチョ(ちっ、こんな一般のジムでパワーを見せつけて、憂さ晴らしとは……)

マッチョ(つくづくオレは情けねえ奴だ……)

トレーニングをするマッチョの前に、二人組の男が現れた。

白衣「あの、少しお話をよろしいでしょうか」

大男「どうもぉ~」

マッチョ「……ん? なんだよアンタら」

マッチョ(……えらくデコボコなコンビだな)

白衣「わたくし、こういう者です」スッ

マッチョに名刺が手渡される。
26: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 22:37:48 ID:omCYAMfw
マッチョ「えぇ~と、『身体能力向上研究会』……? ……なんだこりゃ」

白衣「我々は人間の肉体を高める手段を模索している団体なのです」

マッチョ「ふうん……で、オレになんの用だよ?」

白衣「あなたはすばらしい肉体を持ってらっしゃいます」

白衣「おそらく人間としては最高クラスの肉体美です」

マッチョ「へっ、褒めたってなにも出ないぜ」

白衣「にもかかわらず!」

白衣「あなたはまるで満足していない……それはなぜか?」

白衣「あなたはもっと強くなりたいのに──」

白衣「自分自身に限界を感じている……ちがいますか?」

マッチョ「!」ギクッ

マッチョ「ど、どうしてそれを……」

白衣「ここではなんですから、場所を変えましょうか」ニコッ
27: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 22:40:33 ID:omCYAMfw
白衣と大男に連れられ、マッチョはある建物にたどり着いた。

─ 身体能力向上研究所 ─

マッチョ「……ここは?」

白衣「ここは我々の研究所です」

白衣「世にはびこる悪党どもを日本から追い出すために作った、ね」

マッチョ(オレたちと同じような集団だってことか……!)

白衣「我々は苦心の末、ついに人間の能力を飛躍的に伸ばす術を見つけました」

白衣「実はこの大男も、元々は私と同じぐらいの体格だったのですが」

白衣「その術でこれほどの体格になったのですよ」

大男「…………」ニヤッ

マッチョ(マ、マジかよ……すげえ!)

白衣「もしそれをあなたに施せばどうなるか、想像がつくでしょう?」

マッチョ「…………」ゴクッ…

白衣「あなたは対悪党にうってつけの、最強の肉体を手に入れることができるのです!」
28: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 22:43:17 ID:omCYAMfw
マッチョ「いったいどんな方法なんだ?」

白衣「極秘事項ですが、あなたにだけは特別にお教えしましょう」

白衣「ずばり、サイキックパワーと魔力をあなたの体内に注入することです!」

マッチョ「!!!」

白衣「さらに上等な金属があればそれを装着すれば──」

白衣「あなたは完全無欠の戦士となれるのです!」

マッチョ(完全無欠……!)

マッチョ「や、やってくれ! 頼むっ! オレを強くしてくれ!」

白衣「落ち着いて下さい」

白衣「実は……今すぐには不可能なのです」

マッチョ「どういうことだよ!?」
29: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 22:48:45 ID:omCYAMfw
白衣「実は大男の実験で、サイキックパワーと魔力を使いはたしてしまったのです」

白衣「現状、再び入手するメドもたっていません」

マッチョ「それを入手するには、どうすればいいんだ!?」

白衣「簡単です」

白衣「ここに、私の発明品である容器があります」スッ…

白衣「この容器が超能力と魔力を浴びれば、それぞれのパワーがこの中に入ります」

白衣「そしてそのパワーをこの研究所にある装置であなたに注入すれば──」

白衣「あなたは大幅にパワーアップできる!」

マッチョ「…………!」ドキッ…

白衣「しかし、今の我々には不可能なことです」

白衣「ですから、今日はこの施設の紹介だけで──」

マッチョ「……いや、ある! オレには入手する方法がある!」

白衣「えっ……本当ですか!?」

マッチョ「ああ」
30: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 22:50:59 ID:omCYAMfw
マッチョ「詳しいことはいえないんだが」

マッチョ「オレの知り合いに超能力者と魔法使いがいるんだ」

マッチョ「そいつらに頼めば──」

白衣「なるほど」

白衣「しかし、我々もあなたを全面的に信用したわけではありません」

白衣「それにこの容器の存在が、色々な人間に知られるのは避けたい」

マッチョ「じゃあ、どうすりゃいいんだ?」

白衣「ですから、どうにかこの件は我々とあなただけの秘密のまま」

白衣「サイキックパワーと魔力を手に入れてもらえないでしょうか?」

マッチョ「…………」

マッチョ(……まぁ、それぐらいならできるだろう)

マッチョ(それに、みんなに内緒でパワーアップした方がかっこいいしな!)

マッチョ(お前いつの間にそんな強くなってたんだ!? ……みたいな)ニヤ…

マッチョ「分かった、その条件でいいぜ!」

白衣「ありがとうございます」
31: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 22:55:08 ID:omCYAMfw
そして──

白衣「では、一週間後にまたお会いしましょう」

白衣「くれぐれも内密にお願いしますよ」

マッチョ「ああ、分かってる!」

マッチョ(ようするに、この容器をうまく隠し持ったまま)

マッチョ(あいつらの魔法や超能力を受ければいいんだろ? 楽勝だ!)

マッチョ(上等な金属だって、メガネがいくらでも持ってるだろうしな!)

マッチョ(これがうまくいけば……オレはやっとあいつらに追いつける!)

マッチョ(いや……追い越せる! またオレの時代が始まる!)

マッチョ(やってやる、やってやるぞ!)

マッチョ「それじゃ、また!」ザッザッ…

白衣「ええ」ニコッ

白衣&大男「…………」
32: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 22:59:23 ID:omCYAMfw
数日後──

─ 秘密基地 ─

廊下でエスパーを待ち伏せするマッチョ。

マッチョ(お、エスパーだ。ようし……)ドキドキ…

マッチョ「よう、エスパー。どこ行くんだ?」

エスパー「サイキックルームで、超能力のトレーニングをしようと思ってね」

マッチョ「へぇ~、だったらお願いがあるんだが……」

エスパー「うん?」

マッチョ「お前の特訓に、オレも付き合わせてくれよ!」

エスパー「え、でも……」

マッチョ「頼むよ! な、このとおりだ! 新技が開発できそうなんだ!」

エスパー「……そこまでいわれたら、断れないな。分かった、いいよ!」

マッチョ「ありがとよ!」
33: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 23:02:20 ID:omCYAMfw
─ 秘密基地サイキックルーム ─

エスパー「サイキックアタック!」

ドンッ!

エスパー「サイキッククラッシュ!」

ズアッ!



マッチョ「ぐ……!」

マッチョ(手加減しててもすげえ威力だ……超能力ってのはとんでもねえな!)

エスパー「大丈夫か?」

マッチョ「おう、鍛えてあっからな! おかげで新技を思いつきそうだ!」

エスパー「そうか……ならよかった!」

マッチョ(新技なんてねえよ……けどよ)

マッチョ(エスパーの“サイキックパワー”を容器に入れることに成功したぜ!)コソッ…
34: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 23:06:23 ID:omCYAMfw
マッチョの計画は進む。

─ 秘密基地マジックルーム ─

魔法少女「え、魔法を浴びて、新技のヒントにしたい? いいの?」

マッチョ「おうよ!」

魔法少女「じゃあ……マジカルファイヤーッ!」

ボワァッ!

魔法少女「マジカルサンダーッ!」

ピシャァンッ!



マッチョ「ぐおっ……!」

マッチョ(もし、いつも鉄兵士に撃ってる威力だったら)

マッチョ(オレは最初の炎の時点で病院送りだろうな……これが魔法か!)

魔法少女「マッチョさん、平気!?」

マッチョ「あ、ありがとよ。新技開発のヒントになったよ」

マッチョ(よし……これで魔法少女の“魔力”も入手したぞ!)コソッ…
35: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 23:09:12 ID:omCYAMfw
─ 秘密基地ラボラトリー ─

マッチョ「なぁメガネ、ここら辺にあるガラクタもらっていいか?」ガシャ…

メガネ「かまいませんよ。しかし、なにに使うのですか、マッチョ君?」

マッチョ「あ、いや……パンチ力を試すのにちょうどいいからよ」

マッチョ「サンキューな!」

マッチョ(これで“上等な金属”も手に入れた!)

マッチョ(つまり、オレが強くなる材料を全て手に入れたんだ!)

マッチョ(これで……これでオレもこいつらに追いつけるんだ!)

マッチョ(やっと……!)
36: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 23:12:38 ID:omCYAMfw
マッチョが白衣たちと出会ってから、一週間後──

─ 秘密基地 ─

マッチョ「わりぃ、ちょっと出かけてくる」

エスパー「おい、これから政府の防衛関係者を交えたテレビ会議だぞ」

エスパー「そんな大きな荷物抱えて、どこ行くんだ?」

マッチョ「すまねえ、どうしても外せない急用なんだ!」

マッチョ「すぐ戻るからよ! 約束する!」

エスパー「……分かった。なるべく早く戻ってきてくれよ」

マッチョ(わりぃな……だが、この用事だけは外せねえんだ)

マッチョ(今日で……今日で足手まといじゃなくなる! いや、それどころか──)

マッチョ(オレがお前たちを追い抜くんだからな!)

意気揚々と、『身体能力向上研究所』へ急ぐマッチョ。
37: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 23:15:49 ID:omCYAMfw
─ 身体能力向上研究所 ─

マッチョ「よう」ズイッ

白衣「これはこれは……お待ちしていましたよ、マッチョさん」

白衣「どうですか? 無事集められましたか?」

大男「集めたかぁ~?」

マッチョ「おう、この通りだ!」サッ

白衣「ほう、これはすごい!」

白衣「ではさっそく、あちらにある私が作った巨大装置で」

白衣「サイキックパワーと魔力を、あなたに注入できるよう変換するとしましょう」
38: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 23:19:05 ID:omCYAMfw
マッチョから受け取った“材料”と巨大装置をいじりながら、興奮する白衣。

白衣「おお……! これはすごい!」カタカタ…

白衣「純度がちがいますよ、さすがマッチョさん!」カタカタ…

白衣「これを注入すれば、注入された戦士はまちがいなく最強になれます!」カタカタ…

マッチョ「本当か!? これじゃ使えないっていわれるかもとヒヤヒヤしたぜ!」

白衣「本当は戦闘の際、手に入れたかったんですが、それは非常に難しいですから」

白衣「あなたに頼んで正解でしたよ」

マッチョ「そ、そうか!」

マッチョ「…………」

マッチョ「──ん?」

マッチョ「なぁ、“本当は戦闘の際”っていったいどういう意味だ?」

白衣「!」
39: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/04(水) 23:24:43 ID:omCYAMfw
白衣「おっと、つい口が滑ってしまったか……」

マッチョ「口が滑った?」

白衣「ヒィ~ッヒャッヒャ、まだ分からんのか?」

マッチョ「!」

マッチョ(この甲高い変な笑い声……どこかで……)

白衣「我々の正体は──」グッ…

大男「オイラたちの正体は──」グッ…



──バサァッ!



一瞬で変身を遂げる二人。

銀博士「メタル団最高幹部、銀博士と!」

銅巨人「メタル団最高幹部、銅巨人だったんだぁ~!」

マッチョ「なっ……!?」
44: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/06(金) 01:37:23 ID:QT.Pv6wc
二人の正体に、驚きを隠せないマッチョ。

マッチョ「なんで……!? こりゃいったい、どういうことなんだ!?」

マッチョ「てめえら、オレをだましやがったのか!?」

銀博士「ヒャヒャ、だましたとは人聞きが悪いな」

銀博士「普通こんな怪しい話に乗るか? 脳みそまで筋肉なんじゃないか、オマエ」

マッチョ「なんだと!?」

銀博士「まぁ……せっかくだ」

銀博士「“銅巨人”をパワーアップさせる材料を持ってきてくれたお前にだけは」

銀博士「せめてもの情けとして真実を教えてやろう」

銅巨人「教えてやろぉ~う」
45: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/06(金) 01:40:32 ID:QT.Pv6wc
銀博士「オマエも知っているだろうが、我々はオマエたちに負け続けた」

銀博士「その結果、ワタシは一つの結論に達した」

銀博士「それは──」

銀博士「オマエたちが持つ超能力や魔力を身につけねば、オマエたちには勝てないと!」

銀博士「だからこそ、オマエに渡したあの容器を作り上げたんだが──」

銀博士「戦闘中にサイキックパワーや魔力を手に入れるのは至難の業だ」

銀博士「この容器自体を壊される可能性の方が高いからなァ……」

銀博士「いい方法はないものか、と模索していたその時──」

銀博士「銅巨人はおろか鉄兵士にすら苦戦するオマエの姿が映った」

銀博士「普段は眼中になかったが、よくよくオマエを観察してみると」

銀博士「他の三人に対して劣等感を抱いているのがすぐ分かった!」

銀博士「なんでオレだけこんなに弱いのか……となァ」

銀博士「そして、こいつを利用すればサイキックパワーと魔力を入手できる!」

銀博士「──と人間に変装してオマエに近づいたワケだ!」

マッチョ「ぐ……!」
46: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/06(金) 01:43:24 ID:QT.Pv6wc
銀博士「ヒィ~ッヒャッヒャッヒャ、礼をいわせてもらうよ、マッチョ君」

銀博士「まぁ……そこでじっくりと見ていろ」

銀博士「銅巨人が究極のパワーアップを遂げる瞬間をなァ……」

銀博士「銅巨人、こっちに来い」

銅巨人「おぉ~う」

マッチョ(ち、ちくしょう!)

マッチョ(オレは……みすみす敵を強くしちまう手伝いを……!?)

マッチョ(まだだ……パワーアップを止めれば間に合う!)

マッチョ「させっかよォッ!」ダッ

銅巨人に飛びかかるマッチョ。

銅巨人「ウガァッ!」ブンッ

ドゴォッ!

マッチョ「げぶっ!」ドザッ

だが、あっけなくダウンさせられる。

銀博士「バカが。鉄兵士にすらかなわぬオマエが、銅巨人に勝てるわけなかろう!」
47: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/06(金) 01:46:34 ID:QT.Pv6wc
銀博士「セット完了だ」ガチャッ

銀博士「さぁ~て、注入するぞ」

銅巨人「おおぉ~う」

コポコポコポ……

巨大装置から、銅巨人の中にエネルギーが注入されていく。

銅巨人「ウッ、ウオオッ!? 分かる……オイラ、強くなってるぅ~!」コポコポ…

銅巨人「ウオオオオオオオオオッ!」メキメキ…

銀博士「ヒィ~ッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」

銀博士「並の生物ならこんなことをすれば、自滅してしまうのがオチだが」

銀博士「メタル団最強のオマエならば、耐えられる! 計算通りだ!」

銅巨人「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」メキメキメキ…

銀博士「すばらしい! サイキックパワーと魔力が銅巨人をパワーアップさせているゥ!」

銀博士「加えて、マッチョが持ってきた金属を溶かし」

銀博士「アーマーとして装着させれば……」
48: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/06(金) 01:49:39 ID:QT.Pv6wc
ジャキィンッ!

銀博士「ヒィ~ッヒャッヒャッ! 完成だ!」

銀博士「銅巨人という最高の素材に最高のパワーが融合した、ニュー銅巨人だ!」

銅巨人「ウオオオッ! オイラ、もう誰にも負けない!」ムキッ…

銀博士「これぞワタシが提唱する究極の方程式──」



腕力+超能力+魔力+科学力=無敵!!!



銀博士「ヒィ~ッヒャッヒャッヒャ! もう一度礼をいっておこう、マッチョ君!」

マッチョ「ぐっ……」ググッ…

マッチョ(やべえ……あの銅巨人、とんでもねえ強さだ……!)

マッチョ(オレが……命を捨ててでも、あいつを倒さねえと……)

マッチョ(市民も、エスパーたちも、みんなあいつに殺されちまう!)

マッチョ「そうは……させるかァ!」ダッ
49: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/06(金) 01:52:44 ID:QT.Pv6wc
銀博士「バカめが……また来るか。軽くひねってやれい、銅巨人!」

銅巨人「ウガァッ!」ブオンッ

ドゴォッ!

銅巨人の拳が、マッチョをふっ飛ばした。

マッチョ「ぐへえっ!」ドザッ…

マッチョ(さっきとは比べ物にならねえ……! だが──)

マッチョ「ま、まだまだ……」ヨロッ…

銀博士「…………」イラッ

銀博士「……やれやれ、見苦しい」

銀博士「この期に及んで、まだ自分のパワーが通用すると思ってるのか?」

銀博士「洗脳でもしてこき使ってやろうと思ったが、こんな脳筋は部下にいらん」

銀博士「銅巨人、最初の獲物はコイツだ! 己の無力さをじっくり思い知らせてやれい!」

銅巨人「分かったぁ~!」

マッチョ「……負けるかよぉ!」
50: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/06(金) 01:55:30 ID:QT.Pv6wc
ドゴォッ! バキィッ! ガゴンッ!

マッチョ「が、はっ……!」ドザッ

マッチョ(速いし、重い……!)

マッチョ(あいつにとっちゃ小突いてるようなもんなんだろうが……強すぎる!)

マッチョ(でも、立たなきゃ……!)ググッ…

銀博士「哀れなもんだな、実力差が分からんってのは」

銀博士「だからワタシのように学習しようとすらしない」

マッチョ「う、うぐぐ……! オレにだって意地があんだよ……!」ゲホッ…

銀博士「…………」

銀博士「ったく、とことん脳筋だな」

銀博士「超能力や魔法といったこれまで未知の領域だった力が登場するようになり」

銀博士「ロケットはよその星にまで飛ばせる時代に──」

銀博士「本気で筋肉なんかが役に立つと思ってんのか!?」

ドゴォッ!

銅巨人の蹴りが、マッチョを打ち上げた。
51: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/06(金) 01:58:25 ID:QT.Pv6wc
銀博士の罵声と銅巨人の打撃が、容赦なくマッチョに浴びせられる。

銀博士「原始時代ならいざ知らず……」

バキィッ!

銀博士「過剰な筋肉なんざ今日びなんの役にも立たないんだよ! 無駄なんだよォ!」

ドゴォッ!

銀博士「筋肉で戦車に勝てるか!? 筋肉でフォークリフトより働けるか!?」

ドズッ……!

銀博士「筋肉鍛えるより、効率的に力を得る方法なんざいくらでもある!」

バシィッ!

銀博士「ただでさえ計画がうまくいってるのに、これ以上笑わせるな! バカめが!」

ドボッ!
52: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/06(金) 02:00:52 ID:QT.Pv6wc
銀博士「これからの時代、必要とされるのは──超能力、魔力、科学力だ!」

ガッ!

銀博士「これらの力があれば、筋肉の力なんていくらでも補えるしなァ!」

バキャッ!

銀博士「オリンピックでも狙ってりゃ、まだヒーローにもなれたかもしれんが」

ガンッ!

銀博士「我々の世界にオマエが立っていられる場所なんざないんだよォ!」

ドゴォッ!

銀博士「ヒィ~ッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!!!」

マッチョ「ぐ、ふっ……!」ドサッ…

マッチョ(そう、なのか……? 本当に、筋肉は無駄……なのか……?)
53: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/06(金) 02:03:58 ID:QT.Pv6wc
マッチョ(オレはなんのために、体を、鍛えた……?)

マッチョ(エスパーたちを……あいつらを……守りたかったからじゃないか!)

マッチョ(そうだ……。だからオレは一生懸命、体を鍛えた……!)

マッチョ(でも、結局、オレはそんな目的はとっくの昔に忘れて……)

マッチョ(とにかくあいつらを見返したくて……こんな奴らにだまされた)

マッチョ(オレじゃ、こいつらには勝てねえ……勝てねえ、けど……)

マッチョ(ならせめて、こいつらに少しでも傷を……)

マッチョ(エスパーたちを守るためにッ!)

マッチョ「無駄、じゃない」ググッ…

銀博士「あ!?」

マッチョ「オレの筋肉は……無駄、じゃない! 絶対に!」ヨロ…

銀博士「無駄だっていってるだろが! 銅巨人、頭を砕いてやれいっ!」

銅巨人「死ねえぇ~っ!」ブオンッ!

銅巨人の拳がマッチョの頭に迫る。
54: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/06(金) 02:07:21 ID:QT.Pv6wc
「必殺サイキッククラッシュッ!」

ズドォンッ!

銅巨人「うおぉ~!?」シュゥゥ…

銀博士「むむっ、この攻撃は……!?」

マッチョのピンチを救ったのは──

エスパー「大丈夫か、マッチョ!」

魔法少女「しっかりして! すぐ回復するから!」

メガネ「ここからはボクたちに任せて下さい!」

マッチョ「うぅ……。お前たち……どうして、ここに……?」

エスパー「どうも様子がおかしかったから、やっぱりお前を追うことにしたんだ」

エスパー「もしかしたら、敵に操られてるって可能性もあったしな」

エスパー「だから、超能力でお前を探して、ここを見つけたんだ」

マッチョ「そう、だったのか……」
55: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/06(金) 02:10:18 ID:QT.Pv6wc
マッチョ「あの銅巨人を見りゃ、だいたいの状況は分かるだろう……」

マッチョ「オレは……あいつらにお前たちのパワーをくれちまった……」

マッチョ「すまねえ……。オレはまんまとだまされて、敵を強くしちまった……」

マッチョ「オレが……お前らを見返したいなんて、思ったから……」

エスパー「いや、もういいんだ」

エスパー「マッチョ……ここまでお前を追い詰めたのは、俺たちの責任でもある」

マッチョ「え……?」

エスパー「俺たち……本当は気づいてたんだ」

エスパー「俺たちと差がついたことで、お前が悩んでるってことを……」

エスパー「だけど……必死にトレーニングしてるマッチョを見ていると」

エスパー「とても気づいているとはいえなかった……」

マッチョ「そう……か……」

エスパー「それに──」
56: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/06(金) 02:13:52 ID:QT.Pv6wc
エスパー「俺たちも、自分の力に酔っていた」

エスパー「なぁ?」

魔法少女「うん……どんどん強くなっていくのが楽しかったし」

メガネ「普通の状態で殴り合いをすれば絶対敵わないであろうマッチョ君に」

メガネ「他の力で追いつき、追い越せたことを、正直嬉しくすら思っていました」

マッチョ「…………」

エスパー「ハッキリいおう」

エスパー「俺たちだって、お前に差をつけることでいい気になっていたんだ」

エスパー「本当にすまない……!」グッ…

マッチョに心から謝罪をするエスパー。

エスパー「だからこそ、この銅巨人は──俺たちの手で倒す!」

銀博士「ヒィ~ッヒャッヒャ、無駄なことだ!」

銀博士「今さら加勢にきたところで、今の銅巨人には絶対勝てんぞ!」

銀博士「ちょうどいい。ここでオマエたちに引導を渡してやる!」
57: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/06(金) 02:20:48 ID:QT.Pv6wc
エスパー「みんな、全力でいくぞ!」

エスパー「必殺サイキックエクスプロージョン!」ズアッ!

ズドォォンッ!

魔法少女「分かった! マジカルフレアー!」ボウッ!

ボワァァンッ!

メガネ「とっておきのメカで勝負です! ミクロミサイル!」シュボッ!

ズガァァンッ!

これまでにない、本気の集中砲火。



マッチョ(す、すげえ……一瞬でケリをつけやがった!)

マッチョ(分かりきってたことだけど……やっぱこいつら、オレよりずっと強ええ!)

マッチョ(へっ、いい気になる資格くらい、余裕であるってもんだ──)

マッチョ「!」ピクッ
58: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/06(金) 02:24:10 ID:QT.Pv6wc
シュウゥゥゥ……

煙の中から現れたのは、まったくの無傷である銅巨人。

銅巨人「こんなもんかぁ~? ほとんど痛くなかったぞぉ~?」シュウウ…

エスパー「なんだって……!?」

魔法少女「ウソ……直撃したはずよ!」

メガネ「傷一つ負っていないなんて……信じられません!」

銀博士「ヒィ~ッヒャッヒャッヒャッ! かつての銅巨人ならばともかく」

銀博士「オマエたちの力を注入したこいつに通用するわけなかろう!」

銀博士「腕力+超能力+魔力+科学力=無敵、なのだ!」

銀博士「さぁ、たっぷりお返ししてやれいっ! 銅巨人ッ!」

銅巨人「ウガオオオオオオオッ!!!」
59: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/06(金) 02:28:32 ID:QT.Pv6wc
両手を横に伸ばし、銅巨人が回転を始める。

銅巨人「ブロンズトルネェェェドッ!」ギュルルルルッ

ブオンッ! ブオンッ! ブオンッ! ブオンッ!

エスパー(ただ回ってるだけなのに……なんて風圧だ! まるで竜巻か台風……!)

魔法少女「きゃああああっ!」

メガネ「なんてパワーだ、測定できないなんて……!」ピピピ…

マッチョ「ぐうっ……!」

銀博士「ヒィ~ッヒャッヒャ! すばらしいぞ、銅巨人!」

銀博士「どうせ、この研究所はマッチョをはめるためだけに突貫工事で作ったものだ!」

銀博士「こいつらもろとも壊してしまえいッ!」

銅巨人「ウガアアアアアッ!」ギュルルルルッ



ドゴォォォンッ……
60: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/06(金) 02:30:51 ID:QT.Pv6wc
銅巨人の“ブロンズトルネード”によって、研究所は壊滅した。



─ 研究所廃墟 ─

銀博士「派手にやりおって……パワーがあり余ってるようだな」ニヤッ

銅巨人「うへへ、いい気持ちだぁ~」



エスパー「くっ……」

魔法少女「うぅ……痛いよぉ……」

メガネ「恐ろしい……強さ、です……」

マッチョ「う、ぐぐ……」

エスパー「みんな、諦めるな! 絶対に銀博士と銅巨人を倒すんだ!」

魔法少女「うん! すぐ回復魔法をかけるよ!」

メガネ「まだまだ……これからです!」

マッチョ(みんな、頼む……。オレじゃとてもこの戦いにはついていけねえ……!)
62: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/06(金) 08:25:04 ID:2TH2AEU6
マッチョ頑張れ
64: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 01:12:40 ID:RCuWDGR6
エスパーたちと銅巨人の死闘が再開する。

エスパー「超能力で身体能力強化! ──必殺サイキックパンチッ!」

魔法少女「魔力で体力アップ! ──マジカルキィック!」

メガネ「ボクもマシーンで援護します!」ピピピ…

ドゴォッ! バキィッ! ズガァンッ!

先ほどより、さらに威力を増している集中砲火だが──

銅巨人「無駄だぁ~、かゆいかゆい」シュウウ…

銅巨人「今日ここでお前ら全員、グシャグシャに潰してやるぞぉ~」ズシン…

バキィッ! ドゴォッ!

エスパー「ぐはぁっ!」

魔法少女「きゃあっ!」



銀博士(ヒィ~ッヒャ、勝てる! 今の銅巨人は、まさしく無敵だ!)
65: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 01:16:10 ID:RCuWDGR6
その後もエスパーたちは押され続け──

エスパー「が、はっ……!」ドサァッ…

魔法少女「もうダメ……!」ドサッ…

メガネ「ううっ……!」ドザッ…

マッチョ「ぐおおっ……!(歯が立たねえ……)」ドザンッ…



銀博士「多少は苦戦するかと思いきや、これほど差があるとは──」

銀博士「実に気分がいい!」

銅巨人「気分いいなぁ~」

銀博士「もう回復する力も残ってないだろう……トドメを刺してやれいっ!」

銅巨人「オイラ、トドメ刺すぅ~」ズシンッ…
66: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 01:18:32 ID:RCuWDGR6
マッチョ(ち、ちくしょう……!)

マッチョ(オレのせいで、みんなが……みんな殺されちまう!)

マッチョ(つっても打つ手はねえ……)

マッチョ(なにしろ、敵はただでさえ強い銅巨人が)

マッチョ(エスパー、魔法少女、メガネの力で強化されたバケモノなんだ……!)

マッチョ(あの三人の力で……!)

マッチョ(あの三人の……)

マッチョ「!」ハッ
67: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 01:22:27 ID:RCuWDGR6
マッチョ「エ、エスパー……魔法少女……話がある」

エスパー「マッチョ……!?」

魔法少女「なに……?」

マッチョ「オレに、サイキックパワーと魔力を注入してくれないか……」

エスパー&魔法少女「!」

マッチョ「た、頼む……」

マッチョ「もしかしたら……銅巨人みたいに……パワーアップできるかもしれねえ」

エスパー「だけど、他人に力を与えるなんてやったことないし……」

魔法少女「うん……マッチョさんがどうなっちゃうか分からないよ!」

マッチョ「たしかにな……」

マッチョ「だけどよ……このままじゃオレは死んでも死にきれねえ!」

マッチョ「頼む……オレにチャンスをくれえっ!」

マッチョ「思いついちまったからには、やるだけやってみたいんだ……!」

マッチョ「それで死んだとしても、オレはかまわねえ……!」
68: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 01:25:12 ID:RCuWDGR6
銀博士「ぬぅ……そんな手があったとは!」ギリッ…

銀博士「銅巨人がすぐに飛び込める間合いでもない……くそったれめ!」

マッチョ(銀博士のヤロウ……焦ってやがる!)

マッチョ「さあ、早くやってくれっ! もうこれしか手はねえっ!」



銅巨人「そうはさせるかぁ~!」ザッ…

銀博士「待て」

銅巨人「え?」

銀博士「心配するな、さっきのは演技だ」ボソッ

銅巨人「……どういうことだぁ~?」

銀博士「バカな人間が無様な花火になる瞬間を、見てみたいとは思わんか?」ニタッ
69: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 01:28:18 ID:RCuWDGR6
エスパー「分かった……やろう!」

魔法少女「だけどエスパーさん……危険すぎるよ!」

メガネ「ええ、データがないので、マッチョ君がどうなるかボクにも分かりません!」

エスパー「マッチョ、いいんだな? 覚悟はできてるんだな?」

マッチョ「おう! やってくれ!」

エスパー「……分かった!」

エスパー「サイキックパワー注入!」フィンフィン…

魔法少女「アタシも、魔力を与えるよ!」パァァ…

サイキックパワーと魔力が、二人の手からマッチョに注がれる。
70: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 01:31:08 ID:RCuWDGR6
すると、すぐに異変が起こった。

マッチョ「ぐ!? ぐおおっ!?」ボコン…

エスパー「!」

マッチョ「おおおおおおおおおおおお!!?」ボコンボコン…

エスパー「マ、マッチョ!?」

魔法少女「マッチョさぁん!」

メガネ「肉体が……泡立っている!? どういうことなんだ!?」

マッチョ「ぐああああああああああッ!!!」ボコンボコン…

銀博士「ヒィ~ッヒャッヒャッヒャッ! バカどもめぇ!」
71: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 01:35:05 ID:RCuWDGR6
エスパー「銀博士!?」

銀博士「ワタシは長年オマエたちを研究していたから、結果を知っていたのだよ」

銀博士「超能力や魔力とは、素質があってこそ生かせるもの」

銀博士「素質のない者に力を与えたりすれば、肉体が暴走し、崩壊するだけだァ!」

銀博士「それこそ銅巨人のような人間を超えた強靭な体を持たねばな!」

銀博士「人間の中ではトップクラス程度の、その脳筋では絶対耐えられん!」

銀博士「さぁまもなく、人間が派手に爆発するシーンを見られるぞ! 傑作だァ!」

銀博士「ヒィ~ッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ!」

銅巨人「アッハッハァ~、ざまぁみろぉ~!」

エスパー「そ、そんな……!」

魔法少女「いやぁぁぁっ! どうにか、どうにかしなきゃ! マッチョさんが!」

メガネ「さっき焦っていたのは演技だったのですか! ……なんてことだ!」

マッチョ「ぐ、ぐ、ぐうううううう……!」ボコンボコン…
72: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 01:39:57 ID:RCuWDGR6
ボコンボコン…… ボコンボコン……

マッチョ(ち、ちがう……!)

マッチョ(この筋肉の脈動は……体が暴走してるわけじゃねえ!)

マッチョ(これは、筋肉の感情表現だ!)

マッチョ(そう、これは──喜びと怒り!)

マッチョ(人間の肉体ってのはいくら鍛えたって、どうしても限界がある)

マッチョ(現にオレの肉体はもう成長の余地がないとこまできてた……)

マッチョ(そして、限界に達した肉体が限界を超えるには、“何か”が必要になる!)

マッチョ(その“何か”ってのは、つまり……超能力や魔力だったんだ!)

マッチョ(だけどオレは──自分の筋肉を誇りたいがあまり)

マッチョ(あくまで筋肉だけで戦おうとし、筋肉以外の力を無視してた……)

マッチョ(だからオレの筋肉は喜んでいるし、同時に怒っているんだ!)

マッチョ(やっと筋トレだけじゃ決して行けない領域に行ける、と……)

マッチョ(なんでもっと早くこうしなかったのかバカヤロウ、と……!)

マッチョ(すまねえ……!)
73: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 01:44:32 ID:RCuWDGR6
まもなく、マッチョの筋肉の脈動が収まり──

マッチョ「うぅおおおおおおおおおおっ!!!」メリメリメキ…

ムキムキィッ!

エスパー「マッチョ!」

魔法少女「マッチョさん!」

メガネ「マッチョ君!」

銀博士「む!?」

銅巨人「なんだぁ~!?」

シュゥゥゥ……

外見こそほとんど変わらないが、“明らかに前とは違うマッチョ”が立っていた。

マッチョ「待たせたな……。ようやく筋肉がオレを許してくれたようだ」シュウウ…

マッチョ「下らないプライドで、筋肉以外の力を拒絶してたこのオレをな」

エスパー「マッチョ!」

マッチョ「エスパー、ありがとよ。あとは任せてくれ!」ムキッ

銀博士「バ、バカな……肉体が四散するはずなのに!? なぜ耐えきれたのだ!?」
74: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 01:47:54 ID:RCuWDGR6
マッチョ「広背筋、あまり興奮すんな。僧帽筋も少し落ちつけ」ムキッ

マッチョ「腹直筋はまだ怒ってるのか……。今はスネてねえで、力を貸してくれ」ムキキッ

マッチョ「大胸筋はジョークいってる場合じゃねえだろ!」ピクピクッ

マッチョ「下腿三頭筋と大腿四頭筋はケンカすんな! 仲良くやろうぜ!」ムキッ



エスパー「ど、どうしたんだ、マッチョ!?」

魔法少女「マッチョさんが筋肉と……しゃべってる……!?」

メガネ「ある高名なコメディアンにしかできぬ芸当と聞きますが」

メガネ「つ、ついにマッチョ君もその域に達したようですね……!」クイッ

メガネ「……あ、そうだ」カチャカチャ…
75: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 01:50:40 ID:RCuWDGR6
メガネ「マッチョ君、これを!」ポイッ

マッチョ「なんだこれ?」パシッ

メガネ「今、研究所のガレキを使って即席で作ったナックルです!」

メガネ「“マッスルナックル”とでも名づけましょうか!」

マッチョ「ありがとよ、メガネ! お前の力も使わせてもらうぜ!」カチャッ

マッチョ「さぁ、覚悟しやがれ! メタル団!」ザッ…

銀博士「……ふん、調子に乗りおって」

銀博士(ノーマルな状態では、銅巨人の方がコイツより遥かに強かった)

銀博士(同じ条件でパワーアップしたのだから、実力は銅巨人が上に決まっている!)

銀博士(腕力+超能力+魔力+科学力=無敵、なのだ!)

銀博士「銅巨人、この死にぞこないをとっととあの世に送ってやれいっ!」

銅巨人「粉々に砕いてやるぞぉ!」ブオンッ
76: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 01:54:45 ID:RCuWDGR6
──ガシィッ!

銅巨人「!?」

銀博士「な……銅巨人の全力パンチを!?(腕で受け止めただと!?)」

マッチョ「ありがとよ、上腕二頭筋と三頭筋!」ニヤッ

マッチョ「うおおおおおおおおおっ!!!」

ムキムキ…… メキメキ……

マッチョの右腕が異常な盛り上がりを見せる。

銀博士&銅巨人「~~~~~~~~~~!!!」

マッチョ「予告しとく。今から“マッスルパンチ”をブチ込むぜ」

マッチョ「マッスル……」メキメキ…

銅巨人「銀博士ぇ、オイラどうすればぁ~!?」

銀博士「お、お、落ちつけ! 腕力+超能力+魔力+科学力=無敵なのだ!」

マッチョ「パァンチッ!!!」

マッチョの豪腕から、凄まじい右ストレートが放たれた。
77: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 01:59:08 ID:RCuWDGR6
パンチが放たれてからの一瞬で──

銀博士と銅巨人は防衛本能からか、自分たちの“究極の方程式”を頭に思い描いていた。



銀博士(腕力+超能力+魔力+科学力=……)

銅巨人(腕力+超能力+魔力+科学力=……)



腕力+超能力+魔力+科学力=……

腕力+超能力+魔力+科学力=無……

無……

無……



無理!!!





ズドォォォォォンッ!!!
78: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 02:03:07 ID:RCuWDGR6
……

…………

………………

銅巨人「う、うぅ……」

銀博士「あ……ごふっ……」

銅巨人はマッスルパンチで倒され、銀博士は銅巨人の下敷きになっていた。



マッチョ「ざまあみやがれ!」ムキッ

エスパー「やったな、マッチョ! すごいパワーだったぞ!」

魔法少女「それに無事でよかったぁ……ホントに死んじゃうと思ったもん」

メガネ「なるほど……ただ力を継ぎ足しただけの銅巨人とはちがい」

メガネ「マッチョ君の場合は、限界まで鍛え抜かれたマッチョ君の筋肉そのものが」

メガネ「超能力と魔法と出会うことで、さらに上の領域に引き上げられ──」

メガネ「飛躍的なレベルアップを遂げたのですね」クイッ

マッチョ「あと……お前の科学力もな!」ニヤッ
79: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 02:06:38 ID:RCuWDGR6
エスパー「マッチョ……ありがとう!」

魔法少女「ホント、命の恩人だよ!」

メガネ「マッチョ君の提案がなければ、みんなやられていたでしょうね」

マッチョ「いや、礼をいうのはこっちの方だぜ」

マッチョ「みんなが来てくれなきゃ、オレは殺されてたし」

マッチョ「こうして奴らを倒せたのも……みんなのおかげなんだから!」

マッチョ「本当にありがとう……!」

エスパー「マッチョ……」

マッチョ「だけどよ、まだ戦いは終わってないぜ!」

マッチョ「オレももうしばらくこのパワーのままでいられそうだし……」

マッチョ「今日、一気にメタル団との決着をつけてやろう!」
80: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 02:12:59 ID:RCuWDGR6
─ メタル団本拠地 ─

最高幹部二人の敗北は、金首領に伝わっていた。

金首領「なんだとォ!?」

金首領「銀博士と銅巨人が、エスパーどもに敗北しただと!?」

金首領「しくじりおって、あの役立たずどもめが!」

鉄兵士F「アイ、アイアーン!」

金首領「ふん、そううろたえるな」

金首領「この要塞には鉄兵士軍団がごまんとおるし、内部には罠もたっぷりある」

金首領「奴らが乗り込んできたところでどうにもならん」

金首領「仮に戦ったとしても、ワシの強さは銅巨人の三倍だ! 負けはせぬ!」

グラッ……

金首領「ん!? なんだこの揺れは?」

鉄兵士F「アイン?」
81: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 02:15:48 ID:RCuWDGR6
グラグラ……

金首領「ずいぶん長いな……地震か?」

金首領「どれ……外の様子をモニターで見てみるか」ピポッ



~ 映像 ~

マッチョ『うぐおぉぉぉぉぉ……! 大腿筋、根性出せ!』メキメキ…

エスパー『いいぞ、その調子だ!』

魔法少女『ファイト! ファイトーッ!』

メガネ『少しずつ動いてますよ!』





金首領「エスパーども!? この要塞の外壁など掴んで、なにをやっておるのだ?」

金首領「────!」ハッ

金首領「ま、まさか!?」
82: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 02:17:58 ID:RCuWDGR6
マッチョ「ぬぐおおおおお……! もっとやれるだろ、三角筋!」メキメキ…



マッチョの作業を妨害しようと、要塞から鉄兵士軍団が飛び出してきた。

鉄兵士軍団「アイアイアーン!!!」ドドド…

メガネ「鉄兵士たちが出てきましたよ!」

エスパー「ようし、あいつらは俺たちが片付ける!」サッ

魔法少女「マッチョさんに手出しはさせないよ!」バッ

ズガァンッ! ドォンッ! ドバァンッ!



マッチョ「助かるぜ、みんな!」グググ…

マッチョ「これ以上兵隊が出てこないうちに、ケリをつけねえとな……」グググ…

マッチョ「うがぁぁぁぁぁ……!」グググ…

マッチョ「があっ!!!」グンッ

グワァッ……!

ついに、要塞が地面から浮いた。
83: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 02:21:03 ID:RCuWDGR6
マッチョ「今のオレなら、絶対やれると思ったぜ!」グオッ…

マッチョ「だが、こっからが本番だぞ!」

マッチョ「肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋、準備いいかァ!?」

マッチョ「持ち上げて──」グググ…



マッチョはメタル団本拠地を両腕で持ち上げ──



マッチョ「ブン投げるッ!!!」



ブオンッ!!!



ブン投げた。
84: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 02:24:17 ID:RCuWDGR6
─ メタル団本拠地 ─

要塞内部で金首領は──

グラグラ…… ガクガク……

金首領「ぬおおっ! ますます揺れがひどくなっていく!」

金首領「鉄兵士はなにをやっておる!? どいつもこいつも使えん!」

金首領「わわっ! 要塞が傾いた!? 要塞が持ち上げられた!?」

金首領「と思ったら、飛んだぁっ! ありえん、こんなこと絶対ありえん!」

金首領「じ、地面に要塞が落ち──」

金首領「うわああぁぁぁぁぁっ!!! バカなぁぁぁぁぁっ!!?」



ドズォォォ……ンン……



メタル団本拠地、壊滅──
85: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 02:29:23 ID:RCuWDGR6
マッチョ「よっしゃあっ!」ムキッ

エスパー「メタル団基地を丸ごと投げ飛ばすなんて……」

魔法少女「マッチョさん、すっごぉ~い!」

メガネ「内部に攻め込むより、たしかに効率的ですね」クイッ

マッチョ「みんなも敵の足止め、ありがとよ。だけど、そろそろ……」シュウゥゥ…

マッチョ「うぐぅっ!」ガクッ

エスパー「大丈夫か、マッチョ!」

マッチョ「どうやら、元に戻っちまったようだ……」シュゥゥ…

マッチョ「それに、かなりの筋肉痛だ……こんな筋肉痛は久しぶりだな」ズキズキ…

マッチョ「オレもまだまだ、トレーニングが足りねえな……」

エスパー「マッチョでトレーニングが足りないなら、みんなサボり魔になっちゃうよ」

ハッハッハッハッハ……





マッチョ(それからというもの──……)
86: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 02:32:03 ID:RCuWDGR6
それからというもの──

オレたちは変わらず、平和を守るために悪党どもと戦い続けている。



エスパー「必殺サイキッククラッシュ!」ズアッ

ズガァンッ!

魔法少女「マジカルウォーター!」ポウッ…

ザバァァッ!

メガネ「ミクロミサイル!」シュボッ…

バゴォォンッ!

「ぐわぁぁぁっ!」 「ぐぎゃっ!」 「うげぇっ!」

悪魔怪人「我ら魔界のデーモン教団の精鋭が、たかが人間如きに……!?」

マッチョ「みんな、いいぞ、いいぞぉ! 応援は任せろ!」



とはいえ普通の状態では、やっぱりオレは他の三人に敵わないのだが……。
87: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 02:38:26 ID:RCuWDGR6
悪魔怪人「おのれぇ~! ゆけっ、デビルティラノ!」

デビルティラノ「ギャォォォンッ……!」ズシンッ…



エスパー「うわっ、なんだアイツは!?」

メガネ「これは……生半可な攻撃では、通用しそうにありませんね」

マッチョ「ならオレの出番だ! みんな、オレにパワーを!」

エスパー「分かった!」フィンフィン…

魔法少女「ちゃんと量を調節して魔力を与えるね!」パァァ…

マッチョ「みなぎってきたぜぇ!」

マッチョ「うおおおおおおおおお……!」メキメキ…
88: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 02:42:53 ID:RCuWDGR6
メガネ「あちらに用意してある武器は──」

メガネ「パワーアップしたマッチョ君用に開発した“マッスルアックス”です!」

メガネ「50トンの重さですが、今のマッチョ君なら扱えるはず!」

マッチョ「ありがとよ!」ガシッ…

マッチョ「今日は筋肉絶好調だ! どおりゃああっ!」ブオンッ!



ズガァァァンッ!!!



デビルティラノ「ギャァァァァスッ!」ドズゥ…ン…



マッチョ「ふうっ……!」

エスパー「やった!」

魔法少女「これでデーモン教団もオシマイだねっ!」

メガネ「ボクの計算通りの結果ですね」クイッ
89: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 02:47:15 ID:RCuWDGR6
エスパー「マッチョ、体は平気か?」

マッチョ「ああ、二人がちゃんとパワーを調節してくれたおかげでな」

マッチョ「こないだ病院に健康診断に行ったが、特に異常はなかったしよ!」

マッチョ「だが、二人のパワーにもっと応えられるよう、オレも鍛錬を続けなきゃな!」

魔法少女「これからも頼りにしてるよ~、マッチョさん!」

メガネ「なにしろ、マッチョ君は我々の秘密兵器ですからね」

メガネ「特撮番組でいう、巨大ロボというやつです」

マッチョ「オレは巨大ロボか! アッハッハ、そりゃいいや!」
90: 以下、名無しが深夜にお送りします 2014/06/07(土) 02:51:42 ID:RCuWDGR6
エスパー「デーモン教団も片付けたし、今日はみんなでパーっとやろうか!」

魔法少女「わぁ~い!」

メガネ「フフフ……かまいませんよ」クイッ

マッチョ「よっしゃあ! オレの筋肉も喜んでるぜ!」



平和を脅かす悪党どもはまだまだたくさんいる!

だけどオレたち四人は、そんな奴らに絶対に負けはしない!

そのためにも、オレは今日も筋肉を鍛え続けるんだ!





                                   ─ 完 ─




マッチョ「オレって戦力外なのかな……」
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テーマ : 2ちゃんねる
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